日ノ本文化部最大の作戦
車が磯貝亭へと近づくと、琴美はまだ名残惜しそうに後ろを振り返っていた。
「別荘…楽しかったなぁ…」
「パォ~! でも、磯貝亭のごはんも楽しみです~!」
シャオはすでに気持ちを切り替え、食事モード全開。
「お疲れ会ってことで、最後に美味しいもの食べよう!」
勇馬の提案に、琴美も「うん! そうね!」と元気を取り戻した。
磯貝亭に到着すると、店の前には 「貸切」 の札がかかっていた。
「え? なんで貸切なの?」琴美が不思議そうに尋ねる。
「まあまあ、中に入ってみなって!」沙羅がニヤリとしながら促す。
「え、なになに!? もしかして、なんか企んでる!?」不安と期待が入り混じる琴美。
そして、店の戸を開けた瞬間――
「琴美、お誕生日おめでとう!!!」
「えぇぇぇぇ!?!?!?!?」
突然の大歓声に、琴美は 完全フリーズ 。
「実はね、前々から計画してたのよ」
沙羅が肩を叩く。
「みんなでこっそり準備してたんです~♪」
美優が優しく微笑む。
「パォ~! 日本の誕生日サプライズ、すごいです~!」
シャオは興奮しながら拍手。
「ちょ、え、いやいや…私の誕生日、もうちょっと先じゃなかったっけ!?」
「吉峰琴美をサプライズバースデイするんだぞ!これくらいじゃなきゃ!!」
真平が笑いながら言う。
「せっかくだから今やっちゃおうってことでして」勇馬が補足。
「おめでとう、姉ちゃん」
弟のアレンが、ちょっと照れくさそうに 小さなプレゼント を差し出した。
「えっ……アレンも!?」
「みんなで準備したんだよ、お姉ちゃんのために」
琴美の目が 潤んだ。
「ちょっと待って……私、こんな大掛かりなこと全然気づかなかったんだけど!? いや、もう、どうしたらいいのこれ…!」
「いいから、楽しめ!」
真平が肩をポンと叩くと、琴美は 大きく深呼吸 して、満面の笑顔を浮かべた。
「みんな……ありがとう!!!」
磯貝亭の料理が次々と並べられ、宴がスタート!
琴美の好物の お好み焼き はもちろん、みんなが持ち寄ったおかずも勢ぞろい。
「さあ、特製 お誕生日お好み焼き 、完成よ!」
沙羅の父・大悟が自慢げに出してきたのは、琴美の名前が マヨネーズで書かれた特大サイズのお好み焼き!
「えええ! すごい! これ、私が食べていいの!?」
「もちろんよ! ……まあ、さすがに一人じゃ無理だろうけど」
「じゃあ、みんなでシェアしよう!」
「パォ~! お好み焼き、めっちゃ大きいです~!」
「昭和の誕生日って、こんな感じなんですか?」と美優が笑うと、琴美は 「……うん、これは完璧な昭和スタイルの誕生日ね!」 と満面の笑み。
途中、勇馬と真平が サプライズで作った「琴美の昭和愛を振り返るスライドショー」 が上映され、琴美は 大爆笑&号泣。
「やだちょっと! これどこで見つけたのよ!」
「文化部の活動記録から引っ張り出しました」
「昭和のレトロ雑貨集めにハマってた時期とかもバッチリだぞ」
「やめろおおおお!!!」
みんなからのプレゼント!
沙羅 & 萌香 → 昭和レトロの ブリキ看板セット
勇馬 → スポーツバッグ(琴美の活動用)
真平 → レトロパソコン型の置時計
美優 → 昭和風手作りエプロン
シャオ → チャイナドレス(!?)
磯貝亭 → 一年間お好み焼き無料パス
そして、一番の 目玉プレゼント は 琴美の家族から だった。
父・ジョージ → 「琴美へ、学問も忘れずに。」(昭和文学の古書セット)
母・さくら → 「あなたの昭和愛、すごいわね!」(昭和レコードセット)
弟・アレン → 「姉ちゃん、誕生日おめでとう!」(手書きのメッセージカード)
「アレンの手紙……!」
琴美は 嬉しさで涙ぐみながら、ぎゅっとカードを抱きしめた。
店内が「スピーチ! スピーチ!」コールで包まれる。
琴美は 顔を真っ赤にしながら、手をバタバタ。
「ちょ、ちょっと待ってよ! こんな流れ聞いてないわよ!!」
「誕生日の主役なんだから当然でしょ?」慌てる琴美を沙羅が立たせる。
「パォ~! 感動のスピーチ、期待してます~!」
「いやいや、感動とかじゃなくて、私は勇馬みたいに頭も良くないしシャオみたいにハードでもない、ただの一般市民で――」
「昭和の魂を持つ女、吉峰琴美がそんなことでいいのか!?」真平がハッパをかける。
「むぅぅぅぅ!!」
琴美は プルプル震えながら、ついに決心。
琴美は ドンッ と胸を張り、磯貝亭の鉄板の前に堂々と立った。
一瞬、店内が静まり返る。
「よぉぉぉぉし!! やってやろうじゃないの!!!」
バァァァン!!
なぜか、琴美の背後で 鉄板の火力が強まり、炎が舞い上がる。
「うおおおっ!? なんかすごい演出ついた!?」勇馬がギョッとする。
「父ちゃん、火力上げすぎ!!!」萌香が突っ込む。
「いや、盛り上げてやろうと思ってな!」
店内が謎の 爆上げテンション になったところで、琴美が ぐっと拳を握る。
「みんな、今日はありがとう!!!」
「おぉぉぉ!!!」
「私は、昭和をこよなく愛する普通の高校生! だけど……」
琴美は 一度、グッと目を閉じて、深呼吸。
「こんなにも楽しくて、素敵な友達に囲まれて…… こんな素晴らしい誕生日を迎えられるなんて、もう、最高としか言いようがない!!!」
「おぉぉぉ!!!」(みんな大歓声)
「私はこれからも、 昭和の心を忘れずに 突っ走る!! 文化部として、昭和の魅力を広めるのが私の使命!!!」
ドォォォォン!!!
―― なぜか、鉄板で新たな炎が舞い上がる。
「だから、これからも、みんなと一緒に昭和の良さを伝えたい!!! いや、伝える!!!」
「琴美ーーー!!!」
店内が大歓声に包まれる。
琴美は 両手を広げてドヤ顔!
「今年も最高の一年にするわよ!! みんな、これからもよろしくね!!!」
「カンパーーーイ!!!」
全員がグラスを持ち上げ、ジュースやウーロン茶を片手に乾杯!
パーティー、クライマックスへ!
「さぁ!! ここからが本番よ!!!」
琴美の 誕生日パーティー後半戦がスタート!!
お好み焼き早食い対決!
→ 優勝:シャオ(圧倒的速さ)
→ 準優勝:琴美(途中でしゃべりすぎて失速)
→ 最下位:真平(途中で口の中をヤケド)
レトロカラオケ大会
→ 美優が「サンセット・メモリー」をしっとり熱唱
→ 琴美 & 萌香の「サウスポー」大騒ぎコンビ
→ シャオ & 沙羅「異邦人」異文化デュエット
→ 真平 & 勇馬が歌った「地球の仲間」で店内が異様な熱気に
最後の花火大会!
「磯貝亭の裏庭で花火ができるよ!」ということで、みんなで手持ち花火。
「線香花火、最後まで落とさずにできるの誰?」萌香が合図。
「パォ~! 私、集中します~!」
――結果、真平の線香花火が 即終了 して全員大爆笑。
「最高の誕生日だったーー!!!」




