昭和の海物語
夜が更け、砂浜は静けさを取り戻しつつあったが、日ノ本文化部の面々はまだまだ元気だった。花火の余韻を楽しみながら、海の家のデッキで風に吹かれていた。
「さっきの花火、めちゃくちゃ綺麗だったよね~!」
琴美が目を輝かせて言うと、シャオが「パォ~! 写真たくさん撮りました! 台湾のみんなにも見せたいです~!」と嬉しそうにスマホを見せる。
「えへへ~、この雰囲気、まるで昭和のドラマみたいですね~♪」
美優はジュースを飲みながらほんわかと微笑む。
「昭和のドラマって…なんかベタな展開ありそうだよな。」
真平が苦笑すると、琴美がすかさず反論する。
「ベタで何が悪いのよ! 青春はベタでいいの!」
「はいはい、琴美劇場はそのへんにして。」
沙羅がやれやれと言いながら、足元に転がっていたスイカの残りを片付け始める。
「そういえば、萌香はどこ?」
沙羅が辺りを見回すと、萌香は少し離れた砂浜で波打ち際を歩いていた。
「おーい、萌香ちゃーん! 何してんの?」
琴美が手を振ると、萌香は「星が綺麗だよー!」と振り返る。
彼女の指差す空には、無数の星が輝いていた。
「星空、すごい…!」
シャオが感動したように立ち上がり、他のメンバーもそれぞれ夜空を見上げる。
「やっぱり昭和だな、星空って。」
琴美が意味深に呟くと、真平が「それ、どういう意味だよ」とツッコむ。
「昭和って、都会の光が今ほど強くなくて、星がもっと綺麗に見えたんじゃないかなって思うのよ。」
琴美がそう言うと、沙羅も「確かに、こうやってみんなで星を見るのって、贅沢な時間よね。」と静かに同意した。
その後、一同は波打ち際に集まり、星座を探しながら語り合った。シャオが「パォ~! これが天の川ですか~?」と目を輝かせ、美優は「えへへ~、星空の下でデザート食べたくなります~♪」とおっとり呟く。
その夜、海の家で簡易の布団を敷き、みんなで寝袋に潜り込んだ。
琴美は相変わらずテンションが高く、「明日は何しようかな!」と声を上げる。
「明日は泳いで、もっと遊ぶんでしょ?」
沙羅が言うと、シャオが「パォ~! ビーチボール大会とかしたいです~!」と提案する。
「それから、もう少し写真撮りたいな。あとでアルバムにしよう!」
勇馬はスマホをチェックしながら言った。
「じゃあ、全員分の昭和風フォトアルバム作るってことで決まりね!」
琴美がニッコリ笑いながら手を叩くと、真平は「おい、俺の変な写真撮るなよ」と念を押す。
「それはどうかしらね~♪」
沙羅がニヤリと笑い、部屋にはまた笑い声が響いた。
「うふふ、波の音を聞きながら眠りにつくなんて、最高ですね」美優がきれいにしめた。
翌朝、太陽が水平線から顔を出し、海辺を黄金色に染めていくころ、日ノ本文化部のメンバーたちはそれぞれ目を覚まし始めた。
「おっはよー!」
琴美が元気よく布団を跳ねのけると、萌香が寝ぼけ眼で「…朝、早い~…」とあくびをする。
一足早く起きたシャオは日課らしいのか海岸でカンフーの型をしていた。真平はスポーツタオルと飲み物を手にシャオに声をかける。
「すごいな、毎日してるのか?」終わったところで、タオルと飲み物を受け取ったシャオは「パォ~久々に広いところでできますから気合はいっちゃいました、ちょっとでも朝しないと調子でないんです」
それぞれ水着に着替え、ビーチサンダルを鳴らしながら砂浜に繰り出す。波の音が耳に心地よく、海風が涼しさを運んでくる。
「さて、まずは泳ぐわよ!」
琴美が勢いよく波に飛び込むと、シャオが「パォ~! 待ってください~!」と追いかけていった。
「私はちょっと準備するから、先に遊んでて。」
沙羅は手際よくパラソルやレジャーシートを広げ、ビーチボールやスイカなどの荷物を整えていた。
勇馬が砂浜に線を引き、即席のコートを作ると、自然とビーチバレー大会が始まった。
「私たち、余裕で勝つから!」
琴美とシャオがタッグを組み、真平と萌香ペアと対戦することに。
「いくぞー!」
琴美が全力でサーブを放つも、萌香が華麗にレシーブ。シャオの返球も、真平がなんとか拾い、接戦が続いた。
「パォ~! こんなに真剣にやると思わなかったです~!」
シャオが汗を拭いながら笑い、琴美は「負けてられないわよ!」と気合を入れ直す。
結局、試合は真平と萌香ペアが勝利。琴美が「くやしいー!」と地団駄を踏みながらも、「次は絶対勝つから!」と笑顔で言った。
昼食後、琴美が昭和風の手回しかき氷器を取り出すと、全員が目を輝かせた。
「これ、回すの重そうだけど、味が出ますよね~。」
美優がほんわか笑いながら言うと、琴美が「私がやるわ!」と意気込む。
「ほら、ちゃんと力入れて!」
沙羅が横でアドバイスする中、琴美がゴリゴリと氷を削り、メロンシロップをたっぷりかけたかき氷が完成した。
「パォ!、めっちゃ美味しい!」
シャオが感動しながら食べると、真平も「こんな暑いときには最高だな。」と涼しげに笑った。
午後の暑さがピークに差し掛かる中、日ノ本文化部はビーチ・フラッグスでさらに熱い勝負を繰り広げることになった。
沙羅が旗の代わりにビーチタオルを用意し、砂浜に埋める。
「ルールは簡単。私が合図したら全員で走って、このタオルを取った人が勝ち!」
沙羅の説明に、みんなの目が輝いた。
「負けないわよ!」
琴美が気合を入れ、シャオは「パォ~! 私、こういうの得意かもしれません!」と自信満々だ。
真平は「いや、俺こういうの苦手なんだよな…」とぼやきつつも、参加を決める。
萌香は「お姉ちゃんに勝つ!」と意気込んでいた。
第一回戦:全力疾走!
沙羅が大きく手を上げて「よーい、スタート!」と叫ぶと、全員が一斉に砂浜を駆け出した。
琴美が勢いよく飛び出すが、シャオが俊敏な動きで先頭に立つ。
「パォ~! このまま取ります~!」
だが、その瞬間、真平が一気に追い上げ、タオルをつかんだ。
「やった!」
息を切らしながら真平がガッツポーズをすると、琴美が「ちょっと何よ! こんなときだけ本気出して!」と悔しそうに言う。
第二回戦:萌香の大健闘
次のラウンドでは、萌香が姉である沙羅に挑む構図となった。
「絶対勝つから!」
萌香が全力で走り出し、沙羅も負けじと追いかける。最終的に萌香がわずかな差で勝利し、「やったー!」と歓声を上げた。
「さすが若さね…」
沙羅は悔しそうだが、どこか満足げに笑っていた。
決勝戦:シャオの華麗な勝利
最終ラウンドはシャオと琴美の一騎打ち。
シャオは俊敏な動きでタオルをつかみ、「パォ~! やりました~!」と歓声を上げる。琴美は膝に手をついて息を整えながら、「くそー、シャオが速すぎる!」と悔しがった。
「いや、シャオの運動神経、ほんとすごいな。」
真平が感心して言うと、シャオは「えへへ~、カンフーのおかげかもしれません!」と笑顔で答えた。
午後の勝負で体力を使い果たした一行は、夕暮れの砂浜でクールダウンをすることにした。
「こうやってのんびりするのもいいわね。」
沙羅がパラソルの下でラムネを飲みながらつぶやく。
日が傾き、砂浜はオレンジ色に染まっていった。
「ほら、見て! すごく綺麗!」
沙羅が全員を呼び、波打ち際で夕日を眺める。
「おれなんか海岸走りたくなってきちゃた」
真平がぽつりと呟き、琴美は「そうね。昭和の青春ドラマみたいで最高じゃない?」と笑顔を浮かべた。
「パォ~! こんなに綺麗な夕日、初めて見ました~!」
シャオが感動して手を広げると、美優は「えへへ~、なんだか胸がいっぱいになりますね~♪」と穏やかに言った。
こうして、昭和の夏を全力で楽しむ彼らの夏休みはスタートした。




