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日ノ本文化部の七夕祭り 完結編

「うわぁ…あれ見ろよ」

真平が部室に入るなり、風に揺れる笹を指差しながらため息をつく。

そこには、大量の折り紙チェーンや星形の短冊、さらに美優の作った“お菓子の匂い付き”短冊までが所狭しとぶら下がっている。

「飾り付けはいいけど、さすがにこれ、取り外すの大変じゃない?」

沙羅が冷静に現実を指摘すると、琴美は眉をひそめる。

「だって昭和の七夕って、もっと長く飾るイメージじゃない? せっかく作ったのに、もったいないわよ!」

「パォ~! でもこれ、笹が重さで倒れかけてますよね~」

シャオが笹を支えながら、心配そうに声を上げる。

「しかも、美優の匂い付き短冊にアリが寄ってきてるんだよ…」

真平が遠巻きにアリの行列を見て、げんなりした顔をする。

美優は「えへへ~、すみません…」と恐縮気味だが、「お菓子の香りが残ってたなんて…」と反省しきり。


そんな状況の中、琴美たちのもとに「生徒会室まで来てほしい」という要請が届く。

「あれ、何か怒られる?」真平が嫌な予感を口にすると、琴美は胸を張る。

「大丈夫よ! きっと昭和風七夕を評価されてるのよ!」

「いや、絶対迷惑がられてるだけでしょ…」と沙羅は冷ややか。

しかし、とにかく行ってみようと部員全員で生徒会室へ向かった。


「失礼します~!」

ドアを開けると、総生徒会長の大野博美が穏やかな笑顔で迎え入れ、中等部生徒会長の伊勢野巫鈴も隣に控えている。

「日ノ本文化部のみなさん、七夕の飾り、すごいわね。あれだけ豪華だと、校内でも話題になってるわ。」

博美がにこやかに言うが、その声には微妙に困り気味な響きも混ざっていた。

「パォ~! やっぱり噂になってるんですね~!」とシャオは嬉しそう。

「ただ…ちょっと大きすぎるのよね、笹が。」博美がため息交じりに言う、美鈴が続く「せっかくなので、どこか広い場所に移動して、展示とかできませんか?」

 その提案に、勇馬が真顔で考え込む。「確かに文化部らしい展示なら、迷惑にもならないし…。」

「うち、あの笹が重さと飾りでギリギリだし、校舎の中だと大変よね…」

沙羅が呆れ顔でつぶやき、真平は「外に置いたらアリがさらに来るぞ…」と指摘。

「えへへ~、となると体育館のホールとか、視聴覚室とか?」と美優が言うが、巫鈴は首を振る。「さすがに視聴覚室に笹は…難しいですし、体育館も練習で使う予定があるんです。どうしようかしら…」

「パォ~! じゃあ校門の前とか!」

シャオが無邪気に提案すると、博美が「校門も、さすがに校外の人が通るし、管理が難しそうね…」と苦笑。


「実は、中庭を検討してるんだけど、あそこに設置するなら管理が行き届くし、風もそんなに強くないし。」

巫鈴が資料を見せながら話を続ける。「ただ、中庭はまだ他のクラスも使うかもしれないし、飾りの量を少し減らしてもらえませんか?」

「飾りを減らす…?」琴美が悔しそうな顔をして固まる。

「う、まあ…それもアリか。アリだけに…」

真平がオヤジギャグを言いかけ、沙羅に「やめて」と即ツッコミされる。

「パォ~! でも、折り紙のチェーン全部外すとか、もったいないです~…」

シャオがしょぼんとするが、勇馬が「だったら、折り紙チェーンだけでアーチ状のオブジェを作って、中庭の一部に移すとかどうでしょう? 短冊はある程度残して笹を軽くすれば、倒れる心配も減るし。」と提案する。

「おお、それ名案じゃない!」

琴美がさっそく食いつく。「アーチを昭和風に飾れば、まるで夏祭りの入り口みたいになるかも!」

「じゃあ短冊は、甘い匂い付きのやつだけ外して、普通のやつを残す、とか?」

美優が恥ずかしそうに提案すれば、真平は「最初からそうしとけよ…」とため息。沙羅は「まあ、それでアリも減るでしょうしね。」と納得。

「そうしてくれれば、生徒会としても大歓迎よ! 中庭が華やかになるし、みんなで写真撮影なんかもできるしね。」

博美が嬉しそうに微笑む。巫鈴も「これならクレームも減りますし、私としても助かります…」とほっとした表情を浮かべた。


日ノ本文化部はさっそく行動を開始。

• 部室の笹から大量の飾りの一部を外し、折り紙チェーンを再利用した「アーチ」を作成。

• アリを呼び寄せる原因となった“匂い付き短冊”は撤去し、美優が「えへへ~、ごめんなさい…」と平謝り。

• 残った短冊と飾りを、ちょうど良い重量バランスで笹に付け直す。

その結果、適度に華やかな笹飾りが完成。部室から中庭へ移動する際は、生徒会メンバーやクラスの友人たちも手伝ってくれて、大移動はまるで昭和のおみこしのようなにぎやかさに。

中庭に設置された大きな笹には、琴美やシャオたちの短冊がゆらゆらと揺れ、折り紙チェーンのアーチも昭和レトロな雰囲気を醸し出している。生徒たちが「なんだこれ! すごい!」と驚きつつも、写真を撮ったり、短冊を眺めたりして楽しんでいた。

「よかった…これで部室も広くなる。」

真平がホッと胸をなで下ろす。沙羅も「まあ、あれだけデカい笹をずっと部室に置いておくのは無理があったわよね」と笑う。

「パォ~! 中庭でみんなが見に来てくれて、うれしいです~!」

シャオは目を輝かせながら、写真を撮る生徒に「どうぞご自由に短冊を書いてください~!」と声をかける。

「昭和の七夕、学校の行事にしちゃうとか最高じゃない?!」

琴美は鼻息荒く宣言し、博美も「確かに、これだけ盛り上がるなら恒例行事にしてもいいかもね」と好反応。

そして最後に、美優がほんわか笑顔でお茶を差し出す。

「えへへ~、皆さん、暑いですよね…冷たい麦茶どうぞ♪」

昭和の喫茶店を思わせるような雰囲気の中庭、笹飾りのカラフルな折り紙、そして楽しそうに短冊を書く生徒たち。

日ノ本文化部のメンバーは生徒会と協力し合い、**“昭和テイスト七夕祭り”**という新たな学園イベントを実現するに至った。

そこには甘い香りではなく、文化の香りと笑い声が広がっている――まさに日ノ本文化部らしい、にぎやかな昭和×七夕の大団円となったのだった。


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