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日ノ本文化部 シャオの生誕祭を祝う

6月19日――。

シャオの誕生日まで、あと2日。日ノ本文化部のメンバーは、彼女に内緒のサプライズパーティーを画策していた。

「絶対バレちゃダメよ。今日の昼休みは、どうにかしてシャオを遠ざけましょう!」

琴美が力強く宣言すると、沙羅は「あの子は純粋だから、案外バレないかも」と呆れながら賛同する。

「真平、あんたが一番ヒマそうだから、シャオを適当に連れ出して元職員室の整理とか言っておいて。うちでパーティーの準備するから!」

「はいはい…。わかったよ、俺が囮役ってわけだな。下手に気づかれなきゃいいけど。」

「えへへ~、ケーキとか飾りとか、私たちも急いで用意しますね~♪」

「予算と段取りは任せてください。シャオの好みもリサーチ済みですよ。」

こうして、日ノ本文化部による“シャオ誕生パーティー大作戦”が極秘裏にスタートした。

昼休みになり、シャオはいつものように部室へ向かおうとするが、真平が横から声をかける。

「おい、シャオ。隣の元職員室の整理を手伝ってくれないか? ちょっと先生から頼まれててさ。」

「パォ~! 元職員室の整理ですか~? はい、いいですよ~!」

シャオは特に疑いもなく、ニコニコと笑顔を向ける。

(よし、これならバレないな…)

真平は胸をなでおろし、そのままシャオを連れて旧校舎の元職員室へ向かった。

琴美たち部室組は、シャオを遠ざけている間にサプライズの準備を進める。

美優がバースデーケーキ用の材料を並べ、勇馬が飾り付けの予算をチェックし、沙羅が風船や昭和風の装飾を壁に貼り出す。

「昭和感出すなら、レトロなポスターも貼ろうよ!」

琴美が楽しそうに提案する。

「あ、あとシャオって台湾出身だし、日本らしい感じも混ぜてもいいかも!」

美優が嬉しそうに賛同。

元職員室では、シャオと真平が埃まみれの書類や段ボールを移動していた。

シャオは「パォ~、結構重いですね~!」と楽しそうに言いつつ、汗をかきながら働いている。

「ごめんな、昼休みにこんな地味な作業手伝わせて…。」

「いえいえ、私こういうの嫌いじゃないですよ~。それにしても、みんな何してるのかな…?」

シャオが首をかしげると、真平はバレないように焦る。

「ああ…琴美たちはなんか急用だって言ってたぞ。まあ、うちの部活、いろいろ忙しいからな。」

「あ、はい、そうなんですね~。パォ~、じゃあ手伝い終わったら部室戻りましょうか♪」

シャオがにっこり微笑む。真平はその笑顔を見ると、軽く罪悪感を感じつつ、必死に話題を逸らしながら作業を続けた。

しばらくして、廊下の陰から美優がひょこっと顔を出す。

目で合図を送り、真平に「準備できました」と知らせる。

(おっ、来たな…)

「なあシャオ、後は放課後にしないか? これ以上やると昼休み終わるし…」

真平がそれとなく提案すると、シャオは「そうですね~、けっこう片付きましたし!」と笑顔で頷いた。

放課後、元職員室から日ノ本文化部の部室へ戻ると、扉がかすかに開いている。

真平が「ちょっと先に入ってみろよ」とシャオを促すと、シャオは小首をかしげてドアを開ける。

「シャオ! お誕生日おめでとう!!」

琴美たちが声を揃え、昭和風のクラッカーがパーンと鳴る。風船や色とりどりの飾り付け、大きなバースデーケーキがテーブルを彩っていた。

「パ、パォ~~!? こ、これは…」

驚いたシャオは声も出せず、うっすら涙ぐんでいる。

「言ったでしょ、昭和の文化部はサプライズも全力なのよ!」

琴美が胸を張り、沙羅が「ほら、ロウソク吹き消して」と笑顔で促す。

美優は「えへへ~、作ったケーキ気に入ってもらえますか?」と照れくさそうにし、勇馬は「予算も余ったので飾りを豪華にしました」と胸を張る。

真平はシャオの肩をポンと叩き、「お前がびっくりしてる顔、なかなか面白いな」と茶化す。

「み、みなさん、ほんとに…ありがとうございます! まさかこんな風に祝ってもらえるなんて…」

 シャオは声を詰まらせながら、皆を見渡す。

ケーキがほぼ食べ終わる頃、シャオはやや緊張した様子で立ち上がる。

「パォ・・・先輩が“なんかしゃべれ”って言うので…」

少し沈黙が流れ、みんなが静かに見守る。やがてシャオは明るい表情で口を開いた。

「先に結論言います! この部活に入ったこと、私にとって大々大吉です!! 期待と不安で日本に来ましたが、最初は知り合いゼロで本当に心細かったんです。でも、新入生歓迎の部活紹介で先輩たちの仮装を見て…“何だこれは?”って思ったんですけど、すごく惹かれたんです。」

「そうそう、あれ琴美がゴリ押しして、ちんどん屋の仮装だったわね…」

沙羅が思い出して苦笑すると、琴美は「インパクトあるでしょ!」と得意げに胸を張る。

「結果的に私、日ノ本文化部を選んで大正解でした! みんなと過ごしてまだ100日も経ってないのに、ずっと一緒にいた気がするんです。日ノ本文化部は…私の人生にとってかけがえのない宝物。みんな大好きです!!」

部室には、拍手と笑い声、そしてほんのりとした感動の空気が漂う。

昭和の音楽が流れる中、シャオの誕生日パーティーは最高に盛り上がり、彼女にとって忘れられない時間となる。

仲間たちの笑顔、甘いケーキの香り、風船のカラフルさ、そしてなにより昭和レトロな装飾が、特別な夜を包み込んでいた。

「これが日ノ本文化部のサプライズ――愛と笑いが詰まった誕生日パーティーってわけよ!」

 琴美が鼻を鳴らしながら得意げに言い、沙羅や真平、勇馬、美優、そして主役のシャオが皆で笑い合う。

シャオの目には嬉しさからくる涙が浮かんでいたが、彼女は一気にそれを拭い、胸いっぱいに感謝の気持ちを抱える。

 こうして、二日前からの周到な計画が見事に成功し、シャオの誕生日は昭和の香りと仲間の温かさで満たされた、かけがえのない一日となったのだった。


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