がんばる体育祭
夏の初めを感じさせる微かな風が、日ノ本学園の廊下を吹き抜ける。
放課後、いつものように日ノ本文化部のメンバー――琴美、真平、沙羅、シャオ、美優、そして勇馬が、部室に集まっていた。
しかし今日はなんとなく落ち着かない。なぜなら、もうすぐ体育祭が開催されるからだ。
「ねぇ、みんな! 今年の体育祭、どの競技に出る?」
昭和文化をこよなく愛する琴美が楽しそうに問いかける。すでにスケジュール表を手にして興奮気味だ。
沙羅が「私はリレーくらいしか興味ないわね。マラソンなんて走りたくないし。琴美こそ、騎馬戦に出るんでしょ?」
「当たり前でしょ! 騎馬戦ほど昭和魂が燃える競技はないわ。私が最上段に乗って、敵のハチマキを奪いまくるのよ!」
「おいおい、あんまり暴れすぎるなよ…。妹の巫鈴が風紀を守るとか言って、また騒動になるぞ。」
そう言いながら苦笑する真平の顔が、どこか楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
一方、学院の生徒会室も慌ただしい。
総生徒会長の大野博美を中心に、中等部生徒会長の伊勢野巫鈴が書類を手分けして作業を進めている。
体育祭の種目や予算、会場設営、放送係など、細かい決定事項が山積みだ。
「巫鈴さん、各クラスのリレー選手リストはこれで合ってるかしら?」
「はい、確認済みです。あと、日ノ本文化部の出場競技もさっき届きましたよ。兄たち、結構エントリーしてますね…。」
そう呟きながら巫鈴は心の中で(どうせまたレトロな盛り上がりを見せるんでしょうね…)と半ば呆れ、半ば微笑ましい感情を抱いていた。
「昭和の体育祭って、どんな演出があったんでしょう?」
シャオがふと疑問を口にすると、美優がほんわかした声で答える。
「えへへ~、昭和の運動会とか、ラジオ体操第一をやるイメージがありますよね。玉入れとか綱引きとか…。」
「パォ~! 日本の玉入れ、初めて見たとき驚きました~!」
シャオが目を輝かせると、琴美は「だって昭和には今ほど競技の種類が多くなかったんじゃない?」と想像を膨らませる。
勇馬がPCで検索しながら言う。
「当時は徒競走や玉入れ、綱引き、騎馬戦、騎馬戦のアレンジなんかがメインだったらしいですね。今では少し懐かしいかも。」
「よし、じゃあレトロな応援スタイルで行こうか。法被とか鉢巻とか使って!」
琴美はすっかりノリノリだ。
沙羅は呆れ顔で、「せめて先生に相談してからにしてね」と念押しする。
放課後、旧校舎の廊下でばったり出会った真平と巫鈴。
巫鈴は生徒会の資料を抱えたまま、真平に少し厳しめの視線を向け
「体育祭のエントリー、多すぎない? 兄さん、リレーと騎馬戦と、あと何かやるの?」
「ああ、障害物競走にも出る予定。琴美たちが『昭和的に盛り上げよう』とか言うからさ…。お前の方こそ大丈夫か? 生徒会で忙しいんだろ?」
巫鈴は少し眉をひそめながらも、真平の言葉に少し安心したような表情を見せた。
「確かに忙しいけど、体育祭は大事なイベントだから、みんなが楽しめるように頑張りたいの。兄さんも、あまり無理しないでね。」「もちろん、無理はしないさ。でも、せっかくの体育祭だから、楽しむことも大切だろ?」
二人はしばらくの間、体育祭に対する思いを語り合った。巫鈴は兄が参加することで、少しでも日ノ本文化部の雰囲気が和むことを願っていた。
体育祭の前日、日ノ本文化部は部室に集まり、最終的な打ち合わせを行った。琴美は法被や鉢巻を用意し、みんなで応援するための準備を整えていた。
「明日の応援は、みんなで一丸となって盛り上げるぞ! 昭和の魂を見せつけるんだから!」「そんなに気合い入れなくても…でも、せっかくのイベントだから、楽しむのは大事ね。」気合を入れまくりの琴美を沙羅がちゃかす。
「それに、昭和のスタイルで行けば、きっとみんなも楽しんでくれるはずですよ。」と勇馬。
シャオが嬉しそうに頷くと、美優も微笑んだ。
「私たちの応援が、みんなの力になればいいなぁ。」美優がほんわかと呟いた。
そして、いよいよ体育祭当日。青空の下、日ノ本学園のグラウンドには生徒たちの熱気が溢れていた。日ノ本文化部のメンバーは、法被と鉢巻を身に着け、元気よく応援の準備を整えていた。
琴美 が気合十分で「さあ、みんな! 昭和の魂を見せる準備はできてる?」
全員が大きく頷く中、真平がリレーのスタート地点に立ち、緊張感を漂わせていた。
巫鈴は生徒会の仕事をしながらも、兄の姿を見守り、「みんなが楽しめる体育祭になりますように」と心の中で祈った。
この日、日ノ本文化部と生徒会は互いに支え合いながら、学校全体を巻き込んだ素晴らしい体育祭を作り上げることになるのだった。
体育祭は、生徒たちにとって特別な一日であり、文化部と生徒会が力を合わせて成功させるための絶好の機会だった。朝日が昇る中、グラウンドは色とりどりの旗や風船で飾られ、生徒たちの笑顔が溢れていた。
琴美たち日ノ本文化部のメンバーは、法被を着て、鉢巻を締め、昭和の精神を全開にして準備を進めていた。応援グッズとして用意したうちわや横断幕も、個性的で魅力的なデザインが施されている。シャオが元気よく「私たちの応援、絶対に盛り上げるよ!」と声を上げると、仲間たちも一斉に応じて気合を入れた。
その時、真平がリレーのスタート地点に立ち、周囲の仲間たちに向かって微笑みながら手を振った。「みんな、見ててくれよ!」彼の自信に満ちた姿に、琴美たちも拍手で応援した。
一方、生徒会の巫鈴は、グラウンドの一角で設営を担当している。彼女は作業をしながら、ふと真平のことを見つめ、「頑張れ、兄さん」と小さく呟く。忙しい中でも、彼女は兄の姿に心強さを感じていた。
体育祭が始まると、種目ごとの競技が目白押しで、どのクラスも全力で挑戦する姿が見られた。リレーが始まると、真平がバトンを受け取る瞬間、彼の心臓は高鳴り、全身に力がみなぎる。彼は全力で走り抜け、仲間たちの応援がそのエネルギーをさらに引き上げた。
「行け、真平!」琴美の声が響く。沙羅やシャオ、美優も一緒になって盛り上がり、周囲の生徒たちもその熱気に引き込まれていく。結果、真平のクラスは見事にリレーで勝利を収め、彼は歓喜の声を上げた。
その後も、騎馬戦や障害物競走など、さまざまな競技が続き、日ノ本文化部は昭和のスタイルで盛り上げ続けた。巫鈴も生徒会の仕事をしながら、競技の様子をしっかりと見守り、時折、応援に加わっていた。
「うふふ! みんなの笑顔が見られるって楽しいですね」美優が言うと、他のメンバーも頷き、同じ気持ちを共有した。体育祭は、ただの競技だけではなく、生徒たちの絆を深める素晴らしい機会となっていた。
夕暮れ時、体育祭が無事に終了し、みんなが笑顔で集まる中、琴美が「私たちの昭和の魂、みんなに伝わったかな?」と問いかけると、全員が大きく頷いた。巫鈴もその様子を見て、心からの満足感に包まれた。
「明日からまた頑張ろうね!」と勇馬が声を上げ、メンバー全員がそれに応えて、次の活動への意欲を新たにした。こうして、日ノ本文化部と生徒会は、互いに支え合いながら、素晴らしい思い出を作り上げたのだった。




