せっかくだから今度は朗読劇に挑戦するぜ
ラジオドラマの成功(?)から数日後。部室に集まった日ノ本文化部メンバーに、琴美がまたもや新たな企画を持ち込む。
「みんな!次は朗読劇をやるわよ!」
琴美が拳を突き上げると、全員が同時に「あ~また始まった」と呟いた。
「ちょっと待って、朗読劇ってなんで急に?」沙羅が真顔で突っ込む。
「昭和といえば、ラジオドラマだけじゃないの!家族で一緒に聴ける朗読劇も昭和文化の一つよ!」琴美が胸を張る。
「いや、それ本当か?そんなに朗読劇、流行ってたっけ?」真平が怪訝な顔をする。
「知らないけど、絶対そうだったはず!」琴美が断言する。
「適当すぎる…」沙羅が呆れつつため息をついた。
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琴美の脚本:『昭和の大怪獣、逆襲のグリンゴン!』
•語り手:勇馬
•主人公・怪獣ハンター:真平
•怪獣グリンゴン:琴美
•博士:沙羅
•村人A&効果音:シャオ
•村人B&効果音:美優
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勇馬
「昭和の山奥、緑深き村に突如現れた巨大な怪獣――その名はグリンゴン!人々の生活を脅かす恐怖の象徴だった…」
琴美(グリンゴン役)
「グオォォォォーーー!人間どもよ、私の怒りを思い知れ!」
真平(怪獣ハンター役)
「おい待て!お前、どんな設定だよ。怪獣なのに喋るのかよ!」
「だって喋った方が面白いじゃない!」琴美が素で返す。
「いやいや、朗読劇だからって自由すぎだろ!」真平がツッコミを入れる。
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沙羅(博士役)
「怪獣ハンター真平よ!グリンゴンを倒すには、唯一つの弱点を突かなければならないわ!」
真平(怪獣ハンター役)
「その弱点ってなんだ?」
沙羅(博士役)
「それは…カレーだ!」
「おいおい、カレーってどういうことだよ!」真平が声を荒らげる。
「昭和の給食で出てたじゃない!昭和の象徴よ!」琴美が誇らしげに説明する。
「いや、昭和の象徴だからって怪獣の弱点になる理由にならねえだろ!」真平が即座に反論。
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シャオ(村人A役)
「パォ~!グリンゴンが村を襲ってきました~!」
美優(村人B役)
「えへへ~、でも怪獣ってかわいいですね~。」
「どこがかわいいんだよ!?」真平が振り返るが、美優はほんわか笑っているだけだった。
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勇馬
「果たして、怪獣ハンター真平はグリンゴンを倒せるのか…!?昭和村の運命は…!?」
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シャオ(村人A役&効果音)
「パォ!グリンゴンの足音が聞こえます~!」
バン!ドン!バンバン!と椅子を叩く音。
「おいシャオ、それ足音っていうより爆発音だぞ!」真平が冷ややかに指摘する。
「パォ~!つい力が入りました~!」シャオが小首を傾げる。
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美優(村人B役&効果音)
「えへへ~、風の音をやりますね~。」
「フゥ~~~……ピューピュー……」
(息だけで効果音を再現しようとしている)
「お前、絶対無理するな!」沙羅が冷静に突っ込む。
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琴美(グリンゴン役)
「グオォォォーーー!だが私は昭和のアイドルも大好きだ!」
「ちょっと待て!怪獣がアイドル好きって設定どっから来たんだよ!」真平が声を荒らげる。
「アイドルを語らずして昭和を語れないでしょ!」琴美が胸を張る。
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沙羅(博士役)
「カレーをグリンゴンにぶつけるのよ!でも、どんなカレーがいいのかしら?」
美優(村人B役)
「えへへ~、甘口ですかね~。」
「いや、辛口でしょ!」沙羅が即座に否定する。
「パォ~!台湾では辛い料理が人気ですよ~!」シャオが手を挙げる。
「だから、カレーの議論じゃないんだよ!」真平が声を荒らげた。
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最終的に、グリンゴンはカレーを食べて満足し、村を去るという謎展開で幕を閉じた。
琴美(グリンゴン役)
「グオォォォー!昭和の味、最高だ!また来るぜ!」
勇馬
「こうして、昭和村に平和が訪れたのであった――」
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「結局なんだったんだよ、この朗読劇…」真平が肩を落とす。
「面白かったじゃない!これぞ昭和魂よ!」琴美が満足げに言う。
「昭和魂って便利な言葉ね。」沙羅が呆れ顔で呟く。
「パォ~!私、楽しかったです~!」シャオがニコニコと笑う。
「えへへ~、私もです~。」美優もほんわかと微笑む。
「次はどんな企画が待ってるんだろうな…」真平は遠い目をしながらため息をついた。
部室には笑い声が響き、日ノ本文化部の新たな挑戦が続く予感で満ちていた。




