屁仲間リターンズ:スーパーノヴァ編
ズーハンの屁ツボで派手にやらかした琴美は、真っ赤な顔で机に突っ伏していた。
「くっそぉぉぉ……! なんであたしだけこんな目に……!」
部室の空気はまだほんのりと騒然。
真平は頭を抱え、沙羅は冷ややかにお茶をすすり、勇馬はメモを取り続け、シャオとズーハンは窓際で腹を抱えて笑っている。
そんな中、琴美がガバッと顔を上げた。
「……もういいわ!」
そして机に並んだジャガイモスイーツをわしづかみにする。
「どうせあたしは屁全開なんでしょ!? だったら食べてやるわよ!!!」
羊羹を口に押し込み、ドーナツをかじり、モンブランを丸呑み。
砂糖と芋の甘みが一気に胃袋へと流れ込んでいく。
「や、やめろ琴美! その先にあるのは地獄だぞ!!」真平が叫ぶ。
「……自爆テロだわ」沙羅が冷静に呟く。
「パォォ!? 琴美先輩、ヒーローみたいです~~!」シャオが歓声を上げる。
「ふっ……これが昭和魂よ!!!」琴美は胸を張り、さらにスイーツを詰め込む。
その瞬間――。
――ぷすっ。
――ぷぅぅ……。
――ぶぼぼぼぼっ!!!!
部室が再び爆音の嵐に包まれた。
机の上の羊羹が震え、窓がガタガタ揺れ、ズーハンが思わず「GG……まさに無限コンボ」とつぶやく。
「こ、これが……琴美先輩の……屁奥義……」勇馬は呆然とノートに書き込む。
「いや奥義とか言うなぁぁぁ!!!!」真平が絶叫した。
「……終わったわね」沙羅は目を閉じて深いため息をつく。
そして、部室の隅で美優がぽつり。
「えへへ~……やっぱり、ジャガイモさんって……強いですねぇ……」
こうして、琴美のやけっぱちスイーツ暴走によって、
日ノ本文化部は再び屁仲間リターンズの泥沼に突入したのだった。
甘いジャガイモスイーツをやけ食いし、
すでに「屁全開モード」に突入していた琴美は、椅子の上に立ち上がった。
「ふふふ……もういいわ! あたしは開き直ったの!
だったら——この昭和魂を全開にするしかないじゃない!!!」
言うが早いか、琴美はスカートの裾をがばっとたくし上げた。
「わあああああ!?!?!?!?」
真平が飛び上がり、全力で叫ぶ。
「やめろ琴美ぃぃぃ! それ以上はもう事件だ!!」
「パォォォォォ!?!?!?」シャオは顔を真っ赤にして転げ回り、
「GG……放送事故だな」ズーハンは真顔でつぶやく。
そこへ、沙羅が冷たい声で制止する。
「——ストップ。琴美、それはやりすぎよ。」
そして巫鈴も腕を組み、無表情で告げた。
「公然わいせつ罪の可能性があります。即刻やめなさい。」
「えぇぇぇ!? ちょっと、妹キャラにまで冷静に法律突きつけられるの!?」琴美が固まる。
「そういう問題じゃない!!!」真平は額に青筋を立てる。
「屁でみんなに迷惑かけてるだけでもギリギリなのに、スカートまで上げるなぁぁ!!」
「……」琴美はしばらく考え込んだあと、ゆっくりスカートを下ろした。
「……ちょっとだけ、やりすぎちゃったかしら……?」
「ちょっとどころじゃない!」全員のツッコミが飛ぶ。
部室に再び静けさが戻る。
だが、その直後——。
――ぷすっ。
「……………………」
「……やっぱり止まらないのね」沙羅がため息をつき、
「琴美先輩は、屁仲間の象徴ですねぇ……」美優が困ったように笑った。
スカート事件で「やりすぎたかも……」と肩を落とす琴美。
部室の空気も、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。
その時だった。
「……ん?」
真平が眉をひそめ、鼻をつまんだ。
「……誰か、したな」
「えっ!?!?」全員が一斉に顔を上げる。
「音がなかった……」
真平は低い声で言葉を続けた。
「……なのに、めちゃくちゃ臭いぞ……」
「パォォォォ!?!?!?」シャオは両手で鼻を押さえ、床を転げ回る。
「GG……これは、昨日を超えている……」ズーハンは額を押さえた。
「だ、誰よ!? 正直に名乗り出なさい!!」琴美が立ち上がって叫ぶ。
「アンタの叫び声で臭気が増幅してるから静かにして!」沙羅が即座に制止。
「……犯人は、沈黙している」勇馬は真顔でメモを取りながら呟く。
「無音=高レベル。おなら界のスナイパーだな」
「やめろぉぉぉ! そんなプロフェッショナルみたいに言うな!!!」真平が絶叫。
巫鈴は腕を組み、鼻をつまんだまま冷静に告げた。
「これは……透明なる暴君ね」
「ネーミングやめろぉぉ!!!」真平のツッコミが響く。
結局、誰が放ったのかは分からない。
だが一つだけ確かなのは——
音のない奴ほど、破壊力は桁違い だという事実だった。
異臭に覆われた部室で、誰もが口を閉ざし、眉間に皺を寄せていた。
沈黙を破ったのは、隅っこでスマホをいじっていた萌香だった。
「ねぇ……」
彼女はにやにや笑いながら顔を上げる。
「もしさ……すかしっぺをみんなで同時にしたら、どうなると思う?」
「…………」
「…………」
文化部の空気が、一瞬で凍りつく。
「ば、馬鹿言うなぁぁぁぁぁ!!!」真平が全力で机を叩いた。
「そんなことしたら、この部室ごと終わるぞ!!!」
「パォォォォ!?!?!? 部室が爆発しますぅ~~~!!」シャオは頭を抱えて転げ回る。
「GG……シミュレーション不能……」ズーハンは真顔で天井を仰いだ。
「……でも、ちょっと気になるわね」沙羅が腕を組んで真剣に考え始める。
「やめろ沙羅ぁぁぁぁ!!!」真平が即座にツッコミ。
「ふむ……同時に無音攻撃を行えば、音響効果はゼロ。だが臭気は純粋加算される。つまり——」勇馬がメモを取りながら眼鏡を光らせる。
「屁のスーパーノヴァが誕生する」
「そんな宇宙規模で説明するなぁぁ!!!」
「パォ~……でも、もし本当にやったら……文化部の絆、深まるかも……です」シャオは顔を赤くしながら微笑んだ。
「だから深める方法が特殊すぎるのよ!!!」
「……実験してみる価値はあるかもしれない」巫鈴がさらりと呟いた瞬間——
「妹まで乗っかるなぁぁぁぁ!!!!!」真平は頭を抱えた。
そして琴美がドヤ顔で立ち上がる。
「よし! 決めたわ! 文化部、昭和魂の挑戦! 全員すかしっぺ同時発射よ!!!
「誰がやるかぁぁぁぁ!!!!」真平の絶叫が、再び那須塩原学園に響き渡った。
「3、2、1……発射ぁぁぁ!!!」
琴美の号令のもと、日ノ本文化部の面々は恐る恐る——しかし確実に——同時すかしっぺを敢行した。
――シィィィィン……(音はない)。
沈黙。
だが、数秒後。
むわぁぁぁぁぁ~~~~っ!!!!
部室に充満する、形容不能の悪臭。
重い空気が立ちこめ、窓から差し込む陽光すら霞んで見えた。
「ぎゃああああああああ!!!!!!」
「パォォォォォ~~~~!?!?!?!?」
「GG……これは……終末兵器……」
「……目がっ……目がしみるっ……!」
部員たちは机にもたれ、床を転げ回り、鼻を押さえて悶絶する。
その中で——。
「……っ」
いつもニコニコしている美優の頬が、ぴくりと震えた。
三角巾とエプロン姿のまま、拳をぎゅっと握りしめる。
「……せっかく……お掃除したのに…………」
次の瞬間、美優の目が見開かれ、怒りのオーラが全開に。
「みなさんっ!! ふざけすぎですぅぅぅぅぅ~~~~!!!!」




