昭和の逆襲
真平と沙羅が部室に入ると奥の机で新品のノートパソコンを設定している勇馬とその後ろに琴美とシャオが美優はお茶の準備をしている。
「おいっそれもしかして新品か?」「新品も新品!おニューのパソコンよ!!」真平の問いに琴美が自信満々に答える。
「いやいやいやいや、シャレにならないだろ?シャオどうしたんだよコレ?」
「パォ?」シャオは小首を傾げる。
「ねぇあなたのお父様ってこの方?」沙羅がスマホを見せる。
「あっおとうちゃん!」スマホを見てニッコリ笑う。
「誰?」「台湾のパソコンメーカーの会長」「おまえってお嬢様だったのか?」「パォ?」
シャオはまた小首を傾げる。
「お嬢様っていうよりご令嬢に近いかな。財閥みたいシャオの実家」沙羅が淡々と説明する。「シャオってさぁほんわかしてるけど、どことなく気品があるでしょ?言葉もきれいだし、あたしなんか納得するかな」
「お茶の支度が整いましたよ~」美優ののんびりした声が部室に響く。
「勇馬ご苦労様!シャオあなたのお父様にもお礼言っといてね」シャオは「パォっ」と返事した。
みんなでソファーに座り、応接テーブルにはそれぞれが持ち込んだマグカップ、大きめのお皿にはクッキーと焼き菓子が奇麗にそろえてあった。
和やかな雰囲気の中、みんなでお茶を楽しんでいたが、琴美の目が突然輝きを放った。
「みんな!これを機に新しいプロジェクトを始めましょう!」と拳を突き上げる。
「プロジェクト?何言い出すんだよ…」真平が警戒した表情を見せる。
「せっかくシャオのお父様から素晴らしいパソコンを頂いたんだから、これを活用しない手はないわ!昭和文化と最新技術を融合させた、世界初の日ノ本文化部の大作を作るのよ!」琴美は熱く語り始めた。
「大作って…何をする気だ?」沙羅が冷めた目で尋ねる。
「昭和の魅力を詰め込んだ特製ホームページを作るのよ!」琴美が自信満々に答える。
「ホームページ!?お前、作り方分かるのか?」真平が呆れ顔で突っ込む。
「そこは勇馬がいるから大丈夫よね?」琴美が期待を込めて勇馬に視線を向ける。
「えっ、僕が…ですか?」勇馬は一瞬戸惑ったが、すぐにやる気を見せた。「でも、確かに僕がHTMLとかCSSを使って作れば、昭和っぽいレトロなデザインにできます!」
「それそれ!やっぱり勇馬、頼りになるわ!」琴美が手を叩いて喜ぶ。
「いやいや、勇馬だけに丸投げする気?」沙羅が冷静に指摘する。
「私もアイデアを出すわよ!シャオや美優も手伝ってくれるわよね?」琴美が二人に振る。
「パォ!もちろんです~!でも、私、どうすればいいんですか~?」シャオが首をかしげる。
「えへへ~、私はお茶を入れるのが得意ですけど、ほかにもお手伝いしますね~。」美優がほんわかと笑う。
「いや、それは普通のサポートじゃない?」真平が呆れつつも笑う。
勇馬が早速ノートパソコンを立ち上げ、デザインソフトやコーディングツールを開き始めた。
「まずはテーマを決めましょう!」琴美が声を張り上げる。
「昭和の魅力を伝えるって言っても、具体的に何を載せるんだ?」真平が尋ねると、琴美は指を一本立てた。
「それはもちろん、昭和風ゲーム、レトロ家電の紹介、懐かしの写真、そして部員たちのオススメ昭和スポットを特集するのよ!」
「ゲームって…またあのPC8801FRの話題が出てくるの?」沙羅が顔をしかめる。
「もちろんよ!あの伝説の名機の素晴らしさを世に広めるの!」琴美が鼻息荒く答える。
(放り投げようとして、ターミネーターとか言ってたくせに)真平が声に出さずに突っ込む。
•琴美: アイデア担当。記事の内容やテーマを決める。
•勇馬: 技術担当。ホームページの作成とデザインを手掛ける。
•真平: 調整役。無理なスケジュールや突拍子もないアイデアを抑える。
•沙羅: 校正担当。記事の内容が過激にならないようにチェック。
•シャオ: コンテンツ調査。台湾との文化比較コーナーを担当。
•美優: 雑務担当。お茶の準備と癒し担当。
ページ作りが進むにつれ、琴美が次々と無茶ぶりをしてきた。
「昭和風アニメーションをトップページに入れて!」「音楽は絶対にピアノの昭和っぽい曲にしてね!」「シャオ、台湾の昭和と日本の昭和を比較した記事も書いてちょうだい!」
「もう止めろ!勇馬が過労死するぞ!」真平が叫ぶが、琴美は全く意に介さない。
数週間後、ついに完成したホームページは、昭和の雰囲気を見事に再現したデザインとコンテンツで埋め尽くされていた。背景にはレトロな壁紙、音楽は昭和のヒット曲風のBGM、記事には部員たちのコメントが添えられている。
「これで日ノ本文化部の名が全国に広まるわ!」琴美が胸を張ると、沙羅は肩をすくめた。
ホームページの完成で盛り上がった日ノ本文化部。だがその次の日、問題が発覚した。
「真平、緊急事態よ!」琴美が駆けよる。
「なんだよ、また何かやらかしたのか?」
「昨日公開したホームページ、アクセス数が予想以上に伸びちゃったの!」
「それ、いいことじゃないのか?」真平が首をかしげる。
「いいことだけど、コメント欄が荒れまくってるのよ!『この家電、昭和後期のものだろ!』『もっとマニアックな情報を載せろ』とか!」琴美はパソコン画面を指差す。
「それ、ただの熱心なファンじゃないのか?」
「でもこれ、『管理人のセンスが昭和っぽくない』って言われたのよ!私のセンスをバカにするなんて許せない!」琴美が拳を握りしめる。
「だからって、俺にどうしろと…」真平がため息をつくと、部室に他の部員たちも集まってきた。
「コメント欄をどうにかしないとダメだよね。」沙羅が冷静に口を開く。
「そうですね~。でも、コメント欄って面白いですね~。」美優がほんわかした声で続ける。
「放っておくわけにはいかないわ。昭和魂が試されてるんだから!」琴美が力強く言い放つと、勇馬が提案した。
「フィードバックを活かして、新しいコンテンツを追加するのはどうでしょう?昭和ファン向けの細かい情報とか。」
「パォ!あとは、『日ノ本文化部Q&A』とか作ればいいんじゃ?」シャオが手を挙げる。
「でも、それを誰がやるかだな。」真平が呟くと、全員が一斉に彼を見た。
「俺かよ!」
部室では、再びノートパソコンを中心に作業が始まった。
•琴美: 昭和風デザインの手書き案を大量に持ち込む。
•勇馬: コメント欄のフィルタリング機能を設置。
•真平: コメントを読みながら、苦情に返信する役を担当。
•沙羅: 琴美の案を厳選して、内容を修正。
•シャオ: 台湾と日本の昭和文化の違いをリストアップ。
•美優: 「コメント返しのコツ」と称して、紅茶を入れ続ける。
「琴美、これ全部は無理だろ!」真平が琴美の案を指差す。
「妥協は昭和の敵よ!」
「いや、誰もそんなこと言ってない!」
数日後、新たなコンテンツがホームページに追加された。「昭和家電の裏話」や「懐かしのおもちゃレビュー」、さらには「文化部員たちの昭和裏話」など、マニアックな情報が満載だ。
コメント欄には、
「これはいい!」
「管理人が昭和愛を理解してる!」
「次はもっと昭和初期の話を!」
など、好意的な声が増えていた。
「やったじゃないか、琴美。」真平がパソコン画面を見ながら呟く。
「当然でしょ!これが日ノ本文化部の本気よ!」琴美が胸を張ると、沙羅が呆れたように続けた。
「でも、これからもずっとこんなペースでやるの?」
「もちろん!昭和魂は永遠よ!」琴美が自信満々に答えると、真平はまた深いため息をついた。
「やれやれ、俺たちに平穏な日常は来ないんだろうな…」
日ノ本文化部のメンバーは、昭和の魅力を再発見し、最新技術を駆使して新しいプロジェクトに取り組むことで、充実した日々を送っていた。しかし、その活動は決して平穏無事ではなかった。
琴美の情熱に引き込まれて、全員がそれぞれの役割を果たしながら、プロジェクトを進めていく。勇馬は技術担当として、ホームページのデザインや機能を改善するために奔走し、真平は調整役として、琴美の突飛なアイデアを現実的なものにするために奮闘する。
沙羅は冷静な視点で内容を校正し、シャオは台湾と日本の文化を比較する記事を用意し、美優は部員たちの癒し役として、お茶を入れたり、気分を盛り上げたりする。
しかし、コメント欄の荒れ具合は予想以上だった。熱心なファンからのフィードバックは、時には厳しい意見に変わり、「昭和風デザインが足りない」「もっとマニアックな情報を」といったコメントが寄せられていた。琴美は、その反応に対して真剣に向き合い、新たなコンテンツを追加することに決めた。
メンバーは再び集まり、新しいアイデアを出し合った。琴美が持ち込んだ大量の手書き案を基に、勇馬が技術的なサポートを行い、沙羅が内容を精査し、シャオが文化比較の記事を書く。美優はその合間に紅茶を入れて、みんなを和ませた。
数日後、ホームページは新たなコンテンツで充実し、コメント欄も改善された。「これはいい!」という声が増え、琴美は自信を深めていく。
「これが日ノ本文化部の本気よ!」と琴美が胸を張ると、真平はまた深いため息をつく。「やれやれ、俺たちに平穏な日常は来ないんだろうな…」と笑いながらも、彼はこの活動がもたらす楽しさと絆の深さを感じていた。
こうして、日ノ本文化部の賑やかな活動は、昭和の魅力を再発見し、新たな挑戦を続けていくのだった。それは、ただのプロジェクトではなく、メンバーたちの絆を深め、成長を促す大切な時間となっていった。




