みんながいるから、特別になる
(イントロ当てクイズ後の静けさの中…)
「ふぅ~、盛り上がったな……」
真平が麦茶を飲みながらつぶやく。
「でも、まだ終わらせないわよ――」
琴美がニヤリと笑いながら、ラジカセにもう一度カセットを入れる。
♪チャララララ~ン(ハッピーバースデーの昭和アレンジBGM)
「……ん? これ、何の曲?」萌花がきょとんとした顔で周りを見る。
そして――
美優がそっと、三色団子の下からホールケーキを取り出す。
上には「Happy Birthday 萌花ちゃん」のチョコプレートと桜型ろうそく。
「え……? これって……わ、わたし!?」
萌花が目をまん丸にして立ち上がる。
「そうよ、萌花!」
沙羅が笑う。「4月11日、今日があなたの誕生日でしょ?」
「サラッとスルーされがちだけど、今年はちゃんと祝うから!」
琴美が親指を立てる。
「うわあぁ……やだ、めっちゃ嬉しいぃぃ……!」
萌花は涙目でケーキに駆け寄り、
「もう! みんな秘密にしてたの!? ……最高っ!!」
とスマホで動画を撮り始める。
「記念に――この紙風船頭に乗せて撮ろうか」
巫鈴が真顔で渡して、みんな爆笑。
「じゃあ改めて、せーのっ!」
全員:「萌花! お誕生日おめでとーーっ!!」
桜吹雪と昭和メロディーが、最高の春を彩る――。
萌花が涙目でケーキを見つめていると――
琴美が、どこからともなく取り出した「昭和柄の紙袋」を掲げる。
「さあ! お誕生日といえば、プレゼントよ~! 日ノ本文化部名物・昭和セレクション!」
「え、ええぇ!? まだあるの!?」
萌花は驚きつつ、ワクワク顔。
プレゼント一覧
•琴美 → 昭和アイドルのスポーツタオル
→「これであんたも立派な昭和乙女よっ!」
•真平・沙羅・巫鈴 →3人でお金出しあって高級シャープペンシル
→「少しは勉強しろ」
•美優 → 桜柄のミニハンカチ&クッキーセット
→「えへへ…ハンカチは手縫いで…クッキーはさっき焼きました~」
•勇馬 → 昭和レトロな『ピンク電話のストラップ
→「以前ピンク電話をかわいいと言っていたから……気に入ってくれると嬉しいな」
•シャオ → チャイナドレス
→「パォ! 萌花ちゃん絶対似合う!」
•ズーハン → 「カンフーシューズ
→「萌香は運動得意だし姉貴と一緒にカンフーやってると聞いたから!」
琴美が腕を組んで言う。
「さあ……最後は文化部恒例の“バースデースピーチ”!」
「ええぇぇ!? わ、私が!?」突然の指名に、慌てる萌花。
「当然でしょ? 今日の主役なんだから♪」シャオが背中を押す。
「えっと……えへへ……本当に、今日はびっくりで……うれしくて……」
「私、お姉ちゃんに憧れてこの部に来たけど……すぐに、みんなのことが大好きになりました!」
「文化部って、変なことばっかやってるけど……(笑)すっごく楽しくて、毎日が特別で……」
「こんなに、こんなに笑える場所があるって、幸せです!」
「これからも……いっぱい動画撮って、いっぱい笑って、いっぱい青春していきたいです!」
「みんな――だいすきーーっ!!」
拍手と笑い声、そしてシャオの「パォーー!!」が響きわたる。
空には、舞い上がる花びらと春風――
「昭和春一番フェスティバル」は、こうして最高の締めくくりを迎える。
バースデースピーチのあと、巫鈴がふと呟く。
「……この部活、効率悪くて非論理的で……でも、なんか、いいわね」
「でしょ?」と、沙羅が肩を叩く。
「私たち、“非効率な青春”してんのよ」
「これが――文化部ってやつよ!」
—
スマホのレンズ越しに、萌花がみんなの姿を追いかけている。
画面の中、誰かが笑い、誰かが突っ込み、誰かがピースしている。
そして最後に、自分も「にっこり」――
投稿動画タイトル:《春の奇跡。桜の下の文化部》
再生回数:まさかの急上昇中。




