昭和は春に咲く ~文化部、花見出撃!~
春の風が校舎をくすぐる午後、日ノ本文化部の部室にて。
「ねえみんな、春といえば何があると思う?」
琴美が、意味ありげな笑みを浮かべて口を開いた。
「……また、どうせろくでもないこと考えてる顔ね」
沙羅がため息交じりに睨む。
「パォ~? 春といえば花粉症!」
シャオが鼻を押さえる。
「えへへ~、いちごの季節ですね~」
美優はほんわか笑いながらお茶を入れていた。
「違うわ! 昭和といえば、春といえば――お・花・見!!」
琴美が机を叩いて立ち上がる。
「僕、日本のお花見ってドラマかアニメでしか見たことない」とズーハン。
「古き良き日本の伝統! 花見団子! ブルーシート! ド演歌!!」
「演歌いる!?」
真平が全力でツッコむ。
「花屋でお手伝いした恩返しもかねて、今年は文化部主催で《昭和風お花見》をやるのよ!」
「……文化部主催って、誰が許可出すのよ」
沙羅が冷静に問いかける。
「生徒会の許可? 大丈夫、博美先輩なら“課外文化研究活動”で処理してくれるから!」
琴美がニッコリと、前例主義の抜け道を宣言する。
「よし、僕は炊き出しセットと発電機の調整を……」
勇馬はすでに工具袋を抱えていた。
「じゃあ私、レトロ屋台ごっこやってもいい~?」
萌花が手を挙げる。
「私は……“文化の品位を守る方向”で動きます……」
巫鈴は、既に事務メモを取り出していた。
「やる気しかないじゃん……」
真平がぼやいたが、どこか楽しそうでもあった。
4月上旬の週末を迎えた放課後。
文化部の部室では、いつも以上に真剣な空気が漂っていた。
「今年の文化部お花見会場、正式に決定しました!その名も――黒磯公園!!」
琴美がホワイトボードに「花見計画」と大書きし、満面の笑みで振り返る。
「……いや、その前に誰がいつ決定したのよ」
沙羅が眉をひそめるが、
「市子先生の印鑑、もう押してもらったから大丈夫!」
琴美はすでに、ちゃっかり校外活動届を完了させていた。
「パォ~! 桜、いっぱい咲く公園だよね~! 池あるし、カモさんいた!」
シャオがぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「駅から近いし、撮影にも向いてますよね」
ズーハンはロケハン用のスマホを構えながらうなずく。
「えへへ~、お団子たくさん作っていきますね♪」
美優はもう買い出しメモを書いている。
「じゃあ、ぼくはポータブルスピーカーとレトロラジカセの修理ね……」
勇馬は昭和の風を音で再現する気満々。
「わたしは……“昭和的秩序と静謐”を守る係にします」
巫鈴は警戒態勢でメモを取りはじめていた。
「準備内容はこうよ!」
琴美が黒板に書き出す。
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《文化部流・昭和風お花見 準備リスト》
1.ブルーシート:最低でも3枚(昭和っぽく広げること)
2.レトロ弁当:昭和の駅弁風(ゆで卵・赤ウィンナー・俵おにぎりなど)
3.花見団子と駄菓子コーナー(美優&萌花担当)
4.バーベキューで鉄板焼き (沙羅担当)
5.カセットラジカセBGM:演歌~昭和アイドルまで
6.即席“演歌ステージ”とイントロ当てクイズ大会
7.懐かしの写真コーナー:文化部活動写真+家族の昔の写真を集める案も
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「……どこまで“文化”って言い張れるかの勝負ね」
沙羅が呆れながらも、スケジュール表を書き始める。
「なお、予算は全員から部費とは別に“昭和協力金”として100円ずつ徴収します!」
琴美が嬉しそうに言いながら、手製の募金箱を取り出す。
「それ、実質カツアゲでは?」
真平が半眼でつぶやいたが、誰も止める者はいなかった。
こうして――
日ノ本文化部、春の一大イベント「黒磯公園・昭和花見大作戦」は、本格的に動き始めたのだった。




