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シャオメイ危機一髪

 春の陽気に包まれる校舎。昼休み、シャオはクラスメートたちと校庭の片隅で談笑していた。

「シャオちゃん、パォっていつも言うけど、なんか意味あるの?」隣の席の明菜が興味津々で尋ねる。

「パォ?あれは…驚いたときとか、嬉しいときに自然と出ちゃう声です~。」シャオがにこやかに答えると、明菜は「なんかかわいい~!」と手を叩いて笑った。

 クラスメートたちが笑顔でシャオを囲んでいる中、不穏な影が忍び寄ってきた。

「あれ~、お前が噂の留学生か?」

 声の主は体育会系の上級生グループ。彼らは腕を組みながらシャオたちの前に立ちはだかり、ニヤニヤしていた。


「俺たち、ちょっと興味があってな~。留学生ってどんだけすごいんだか、腕試ししてみたくてよ。」

 リーダー格の上級生が軽くシャドーボクシングをしながら笑う。

「えっと…私、そんなにすごくないですよ~。」シャオはほんわかとした笑顔で答えるが、上級生たちはその様子を見てさらに調子に乗る。

「おいおい、謙虚ぶっちゃってさ~。でもよ、俺たち、ただ話してるだけじゃつまんないんだよなぁ。」

「ねぇ、シャオちゃん、逃げた方がいいかも!」明菜が小声で言うが、シャオは首を振った。

「大丈夫です~。ちょっとだけお話しましょうね~。」


「ほら、こっち来いよ!」上級生の一人がシャオの手を掴もうとした瞬間だった。

スッ――。

 次の瞬間、シャオが軽やかに動き、彼の手をひょいとかわす。

「パォ!ごめんなさい~、びっくりしちゃいました~。」シャオは申し訳なさそうに頭を下げるが、その動きは異様に素早かった。

「んだよ、今の動き…」上級生が顔をしかめながら再び手を伸ばそうとするが、シャオはまたもスッとかわす。

 しかも今回は、その手を軽く指で押しただけで上級生がバランスを崩し、地面に尻もちをついてしまった。

「おい、何やってんだ!」別の上級生が声を荒げながら前に出るが、シャオはふんわりと笑いながら構えを取った。

「パォ!ちょっとだけお見せしますね~。」


 次の瞬間、シャオはまるで映画のワンシーンのように動き出した。

 手を軽く振るだけで上級生たちの手をかわし、彼らが振り回す拳を寸分違わず避けていく。

「な、なんだこの動き!」

「全然当たらねえ!」

 さらに、シャオは近くにあった木の棒を手に取り、ヌンチャクのようにくるくると回し始めた。風を切る音が響き、上級生たちは思わず一歩後ずさる。

「ちょっとだけ遊びすぎました~。ごめんなさいね~。」シャオがにこやかに言いながら構えを解くと、上級生たちは完全に戦意喪失していた。

「こ、こんなヤツ相手にしてられるか!」リーダー格が叫びながら仲間たちを引き連れて逃げ出した。


 その場に残されたクラスメートたちは、目を丸くしてシャオを見つめていた。

「シャオちゃん…今の、何?」明菜が震える声で尋ねると、シャオはいつものふわっとした笑顔で答える。

「カンフーです~。台湾ではちょっとだけ習ってました~。」

「いやいや、あれ『ちょっと』のレベルじゃないでしょ!」別のクラスメートが叫ぶと、シャオは頭をかきながら照れくさそうに笑った。

「パォ~、みんなにびっくりさせちゃって、ごめんなさい~。」

「ごめんなさいどころか、むしろ助かったよ!」明菜がシャオの手を握りしめる。「シャオちゃんって、すごく頼もしいね!」


 その日の放課後、部室でシャオが上級生との一件を話すと、部員たちは大騒ぎになった。

「なんでそんなすごい特技、今まで隠してたのよ!」琴美が目を輝かせる。

「いや、むしろなんであの場で発揮したんだよ…」真平がため息をつきながら呟く。

「次の企画はこれで決まりね!」琴美が机を叩く。「昭和風アクション映画の再現よ!」

「また変なこと始めるんだろうな…」沙羅が肩をすくめると、美優がほんわかとした笑顔で呟いた。

「えへへ~、なんか面白そうですね~。」

 シャオはみんなのやり取りを見ながら、ふわっとした笑顔で一言。

「パォ!私、協力しますよ~。」

 こうして、カンフー達人のシャオを中心に、日ノ本文化部の新たな騒動が幕を開けるのであった。:

穏やかな昼休み。シャオはクラスメートたちと一緒に購買で買ったパンを分け合いながらのんびり過ごしていた。

「シャオちゃん、このメロンパンおいしいよ~!」明菜が笑顔でパンを差し出す。

「パォ!本当においしいです~!」シャオもにこやかに頷く。

 そんな平和な空気を壊すように、またしても上級生たちが現れた。

「おい、留学生!」

 リーダー格の上級生が、昨日とは違う仲間を引き連れてやってきた。前日の屈辱を晴らすため、人数を増やしていた。


「昨日はうまくやられたけどな…今日は違うぜ!」

 リーダー格の上級生は腕をまくりながら睨みをきかせる。

「パォ!昨日はびっくりしましたね~。」シャオは全く動じず、いつもの笑顔を浮かべていた。

「おいおい、そのふざけた声がムカつくんだよ!」別の上級生が怒りを露わにし、シャオに一歩近づく。

「シャオちゃん、逃げて!」明菜が慌てて立ち上がるが、リーダー格が舌打ちして一言。

「おい、余計なことすんな!」

 その瞬間、リーダー格の足が振り上げられ、明菜のお腹に軽く当たった。

「きゃっ!」明菜がよろけて転び、クラスメートたちが悲鳴を上げる。


 その光景を見た瞬間、シャオの表情が一変した。いつものふわっとした笑顔が消え、目が鋭く光った。

「パォ…それは、ちょっと良くないです~」

「おい、なんだその目は!」リーダー格がシャオに向かって威圧感を強めるが、彼女はすっと前に出た。

「みんな、ちょっと下がってください~。」シャオがクラスメートたちを手で制しながら言うと、リーダー格は鼻で笑う。

「おいおい、そんな細っこい体で何ができるってんだよ!」

 その瞬間だった。

パシッ!

 シャオの手がリーダー格の肩を軽く叩く。そのわずかな動きで、リーダー格はバランスを崩して地面に尻もちをついた。

「な、なんだ!?どうやった!?」

「力を入れずにやれば、こうなります~。」シャオは優しい口調のまま、次の動きを見せる。

 別の上級生がシャオに突進してきたが、彼女は軽く身をひねりながらその腕をつかみ、一回転させて地面に転がした。

「パォ~、こんなこと、あまりしたくないんですけど~。」


 次々と襲いかかる上級生たち。しかし、シャオの動きは全く無駄がなく、彼らを次々といなしていく。

「な、なんだこの動き!?」

「全然攻撃が当たらねえ!」

 シャオは最後の一人の足を軽く払うと、彼もまた地面に転がり、全員が戦意を失った。

「パォ…これで終わりにしましょうね~。」シャオは微笑みながら手を差し伸べるが、上級生たちは恐怖の表情を浮かべながら後ずさる。

「も、もう二度と近寄らねえ!」リーダー格は仲間を引き連れて、全速力でその場を去った。


場が静まり返り、シャオがクラスメートたちの方を振り返ると、みんながぽかんと口を開けていた。

「シャオちゃん…すごすぎる。」明菜が呟くと、シャオはふわっと笑いながら答える。

「パォ!ちょっと動きすぎちゃいました~。」

「ちょっとってレベルじゃないから!」別のクラスメートが叫ぶと、全員が一斉に頷く。


部室に戻ったシャオが、昼休みの出来事を話すと、琴美が興奮して立ち上がった。

「すごいわ!シャオ、これで分かったでしょ!あんたは文化部の秘密兵器なの!」

「パォ!兵器にはなりたくないです~。」シャオは困った顔で首を振る。

「でも、これで決まりね!次の部活動は、昭和風カンフー映画の撮影よ!」琴美が自信満々に宣言する。

「また騒ぎになる未来しか見えない…」真平が額を押さえる中、美優がいつものほんわかした笑顔で呟く。

「えへへ~、なんか面白そうですね~。」


数日後の昼休み。シャオとクラスメートたちは、いつものように校庭で談笑していた。

「シャオちゃん、あれ以来絡まれてないみたいでよかったね。」明菜が安心したように言う。

「パォ~、みんなが見ててくれるから安心です~。」シャオはニコニコしながらパンを頬張る。

しかし、その平和な時間は長くは続かなかった。

「あーあ、いたいた!こないだの留学生!」

上級生グループが再び姿を現した。今度はリーダー格に加え、さらに仲間を増やしていた。

「おい、さすがに一人じゃ手に負えないからって、こんなに呼んできたの?」明菜が呆れた声を上げる。

「お前ら、今度こそ本気だ!」リーダー格が拳を握りしめる。


「この前はすまし顔でやられたけどよ、今度は逃がさねえぞ!」リーダー格が勢いよく前に出る。

 シャオはふんわりした笑顔で言った。「パォ~、また遊びに来たんですね~。」

「遊びじゃねえんだよ!」リーダー格が叫びながら拳を振り上げたその瞬間――。

「はいはい、そこまで。」間に割って入ったのは真平だった。

「なんだお前、邪魔すんな!」リーダー格が真平を睨みつける。

「邪魔とかじゃなくてさ、まず落ち着けって。」真平は両手を上げて穏やかに言う。「ここ、学校だぜ?先輩方が何をしに来たか知らないけど、喧嘩なんてする場所じゃないだろ。」

「そんな綺麗事で…!」リーダー格が言い返そうとするが、真平は少し顔を近づけて低い声で続けた。

「それに、あんたら全員でまたやられたら、もう立つ瀬ないぞ。」

上級生たちは一瞬固まり、目を泳がせた。


「なっ先輩方お願いしますよ」、真平は膝をついていた。さらに

「土下座でもなんでもします、何なら股でも何でもくぐりますよ」真平はこれでもかというくらいにへりくだる。シャオはポツリと「韓信」と呟く。

「なんなんだよお前、興がそがれた。みんな行こうぜ」上級生たちは立ち去っていく。

「あの~もうシャオには・・・」

「もういいよ、しらけた」立ち去りながらそう言った。

 真平はシャオに向かい「良かったな、もういいって」とにこやかに言った。次の瞬間、シャオは真平に抱き着いた。「えっおいシャオ」わけのわからない真平に対して

「先輩こそ真の壮士!」シャオの腕に力が入った。


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