お好み焼き変化球とレーザービームの軌跡

【最終回・5回表】

ついに迎えた最終回。

文化部は5-4のリードを守るだけで、栄光の優勝に手が届く。

マウンド上の沙羅は自信満々に仁王立ち。

「よーし、あと3人！パパッと終わらせてやるわ！」

琴美が叫ぶ。

「沙羅！最後まで気合い入れていこう！！」

「言われなくても分かってるわよ！」

――最終回の先頭打者はサッカー部のキャプテン。

「まだ勝負は終わってねぇぞ！」

沙羅が不敵な笑みを浮かべて剛速球を投げ込む！

「くらえ、磯貝亭名物・鉄板ストレート！！」

「ストライク！」

「よっしゃ！」

しかし、サッカー部キャプテンは冷静な目で沙羅を見ている。

次の一球――沙羅、再び剛速球！

「なにぃぃぃ！？打たれたぁぁぁ！？」

打球は鋭いライナーでセンター前ヒットに！

「へへっ、何度も見りゃタイミングも合うってもんだ！」

沙羅はわずかに眉を上げるが、まだまだ余裕の表情。

「ふーん……ちょっとはやるじゃない。」

続く打者も、沙羅の剛速球をしっかりと狙っている。

「ストライク！」

しかし――

またもやヒットで繋がれ、ノーアウト一・三塁のピンチ！

「沙羅、大丈夫！？連続ヒットよ！」

「琴美、焦んなって。こっからが本番だからね。」

沙羅、なぜか妙に自信たっぷり。

セカンドの萌香が不安げにつぶやく。

「お姉ちゃん……何か企んでる顔だなぁ。」

沙羅が大きく深呼吸すると、キャッチャー琴美を呼ぶ。

「ちょっと琴美、次から『アレ』行くわよ。」

「アレって？」

「だから、アレよ。秘伝の磯貝亭流・特製変化球。」

「そんなのあったっけ？」

「今考えた。」

「いや、今考えたの！？」

沙羅はニヤリと不敵な笑みを浮かべながらマウンドに戻る。

沙羅、ゆっくりとセットポジションに入ると、突然フォームを変える。

「なに？あの投げ方？」

萌香が目を丸くする。

沙羅、大きく腕を振りながら叫ぶ！

「磯貝亭秘伝・お好み焼きスライダー！ソース増し増しスペシャル！！」

「名前長すぎ！！」

球が手を離れた瞬間――

ボールが突然鋭く曲がりだす！！

「な、なんだこの球！？」

打者、バットを空振り！

「ストライク！！」

「おおおお！！何それすごい！！！」

沙羅が腕を組んでニヤリと笑う。

「まあ、ウチの鉄板も熱いだけじゃないってことよ。」

続く球も、

「磯貝亭秘伝・モダン焼きフォーク！！」

「また変わった！！？」

ボールが鋭く落下し、打者は再び空振り！！

「ストライクツー！！」

サッカー部ベンチは大混乱。

「おい、あのピッチャーなんなんだよ！？」

沙羅、マウンドで高らかに宣言する。

「さぁ、締めはこれよ！！磯貝亭の最終兵器――」

「な、何だ！？」

「ミックス焼きデラックス超スローカーブ！マヨネーズ仕立て！！」

「絶対ふざけてるだろ！？」

沙羅、思いっきりスローカーブを投げ込む！

球はゆっくりとフワフワ浮き上がり、打者は完全にタイミングを崩される！

「う、うわあああ！！」

空振り三振！！

「やったぁぁぁ！！」

文化部ベンチ大歓声。

沙羅はガッツポーズ。

「どうよ、磯貝亭のメニュー、全部味わえたかしら？」

「野球に全く関係ないけど最高よ沙羅！！」

1アウト一・三塁。文化部が5-4のリードを守ったまま、ゲームはクライマックスを迎えた。

沙羅が再びマウンドで腕を振る。

「さあ、残り2つ！ビシッと決めるわよ！」

次の打者が打席に入り、沙羅が鋭く変化球を投げ込む！

「磯貝亭特製・ねぎ焼きチェンジアップ！」

「だから名前が長いって！」

「しまった！打たれた！」

打球はセンターへ高々と舞い上がる。

「大丈夫！守備は完璧よ！博美先輩！」

センターの博美は優雅に構え、落ちてくるボールをしっかりとキャッチ。

「アウト！」

2アウトになったが、3塁ランナーがタッチアップでホームへ猛然と走り出した！

「ランナー走った！」

「博美先輩、ホームへ投げて！」

「ふむ、了解したわ。」

博美は冷静な表情のまま、ゆったりと振りかぶって投げる――！

その瞬間、まるでビーム砲のような驚異的なレーザー返球が飛んだ！！

「ズドォォォォン！！！」

「えええええええ！？！？」

琴美がボールをキャッチ。驚きすぎて転びそうになる。

「あぶなっ……え、え、何この球！？剛速球すぎ！！」

審判「アウト！！ゲームセット！！」

文化部、ついに勝利！！

「やったぁぁぁぁ！！優勝だぁぁぁぁ！！」

シャオが感激して沙羅に抱きつく。「パォ～やりました！勝ちました！！」

「そうよ！あんたが頑張ったから！！」沙羅はシャオの頬に両手をあてくしゃくしゃにする。

「俺たち文化部だよな」呆けた真平が、勇馬に呟く。「なんか優勝しちゃいましたね…」

こうして、日ノ本文化部は球技大会の激闘を制し、見事に優勝を果たしたのだった！

最後まで大混乱の試合を制し、見事優勝した日ノ本文化部。

沙羅は額の汗を拭いながら言う。

「やれやれ、こんなに疲れた試合は初めてだわ。」 「沙羅、お疲れ様！」

琴美は興奮しながら笑う。

「これで文化部の価値が一気に爆上がりね！」

博美は冷静にうなずく。

「ふむ、野球もなかなか面白い競技だったわね。」 「博美先輩、絶対ルール理解してないでしょ？」

博美は静かに微笑む。

「博美先輩、肩強すぎじゃない？」

博美は淡々と答える。

「ふむ。投げろと言われたから本気で投げただけだけど？」

「博美先輩、もう最高！！生徒会長じゃなくてプロ野球選手になったらいいですよ！！」

「……それは遠慮するわ。」

大笑いする文化部メンバーたち。

こうして、波乱の連続だった球技大会は無事、日ノ本文化部の優勝で幕を閉じたのだった――。