シャオ剛速球無双
「プレイボール!」 球技大会・野球の部 第一試合開始!
審判の掛け声とともに、球技大会・野球の部の第一試合が始まった。
日ノ本文化部 vs 柔道部
球技大会は時間の関係で3イニング制の特別ルール。短期決戦で勝敗が決まる。
「よーし、絶対勝つわよ!」と、吉峰琴美は気合十分。
「相手は柔道部だから、パワーはすごそうだけど、野球の技術は未知数ね……」と、磯貝沙羅が冷静に分析。
「まぁ、柔道部がどれだけパワータイプでも、シャオの剛速球は打てないんじゃないか?」と、キャッチャーを務める伊勢野真平が呟く。
「パォ! わたし、エース頑張るよ!」と、シャオも気合十分だ。
一方、相手の柔道部はガッチリした体格の選手たちが並び、明らかにパワーで押してきそうな雰囲気を漂わせている。
「ほほう……相手は小柄な子ばかりか。悪いが、ウチのパワーで圧倒させてもらうぜ!」
そう意気込む柔道部のキャプテンだったが――彼らはまだ知らなかった。
シャオの球が、並みの速球ではないことを……!
【1回表】柔道部の攻撃
「シャオ、まずは様子見で軽く投げてみよう!」
琴美がそう指示すると、シャオは「うん!」と頷き、軽く腕を振った。
バシュッッ!!
「うおっ!? 速っ!!」
打席に立っていた柔道部の1番打者は、驚きでバットを振ることもできない。
「な、なんだ今の球……!? 速すぎる!」
審判が「ストライク!」とコールするが、柔道部側はざわついている。
「シャオ、もう少し力入れてもいいんじゃない?」
琴美の一言で、シャオはさらに本気を出す。
「わかった! じゃあ、いくよー!」
バシュッッッ!!!
「パォッ!? ちょっと強く投げすぎたかも!」
球はキャッチャーミットにズドンと突き刺さる。
「ぐっ……重っ……!」
キャッチャーの真平は思わず手を痺れさせながらも、なんとかキャッチ。
「ストライクツー!!」
「ま、待て待て! こんな速球ありかよ!?」
「反則じゃないのか!?」
「普通の投球です。ルール違反じゃありません。」と審判が冷静に返す。
結局、柔道部の1番打者はシャオの豪速球に全く対応できず、3球三振。
「や、やべえ……野球ってこんな競技だっけ……?」
次のバッターもシャオの球を前に手が出ず、三者連続三振で1回表終了。
「よし! 完璧な立ち上がり!」
シャオの圧倒的な投球により、文化部は無失点で1回表を終えた。
【1回裏】日ノ本文化部の攻撃
「さあ、打っていくわよ!」
先頭バッターの琴美がバッターボックスに立つ。
対する柔道部のピッチャーは、がっしりした体格の大柄な男子。
「野球は詳しくないが、力任せに投げればなんとかなるだろ!」
ズバンッ!!
「うわっ、ノーコンすぎる!」
初球はキャッチャーの頭上を大きく逸れ、後方へ転がっていった。
「やっぱり柔道部、パワーはあるけどコントロールがダメダメね。」と沙羅が呟く。
結局、ピッチャーの制球が定まらず、琴美はフォアボールで出塁。
「ラッキー! ノーアウト一塁ね!」
次の打者は沙羅。
「じゃあ、私が決めるわ!」
柔道部ピッチャーが投げる球は速いが荒れている。沙羅は慎重にボールを見極め、甘く入ったストレートを狙い打つ!
カキーン!!
「おおっ!? いい当たり!」
打球はセンター方向へ抜けるクリーンヒット!
「琴美、走れ!!」
俊足の琴美は一気に三塁へ到達。文化部は無死一、三塁の絶好機を迎える。
「いい感じよ! このまま先制点を取るわよ!」
次のバッターは、生徒会長・大野博美。
「博美先輩、ここでタイムリーお願いします!」
「……ふむ、では全力で打つわ。」
博美はバットを握りしめ、構える――が、彼女には重大な問題があった。
「博美先輩、ルールわかってないんですよね?」
「……なるほど、つまり打ったら走ればいいのね?」
「そうですけど、それだけじゃないです!」
そして――
審判「プレイ!」
ピッチャーが投球!
カキーン!
まさかのクリーンヒット!!
「おおっ!? 先輩、打てたじゃないですか!」
「当然よ。」
……しかし、博美はバットを持ったまま、打席で仁王立ちしている。
「……?」
「博美先輩、走ってください!!!」
「えっ?」
「早く! 琴美も沙羅も動いてますから!!」
慌てて一塁へ走り出す博美。ぎりぎりでセーフになり、文化部は1点を先制!
「ふぅ……間に合ったわね。」
「もう、マジで勘弁してください!!」
1回裏、日ノ本文化部は1点を先制! なおも無死一、二塁。
「よーし、このまま追加点狙うわよ!」と、琴美がガッツポーズをする。
次の打席には、文化部のシャオ。
「パォ!? わたし、打てるかな?」
「シャオなら余裕よ!」
「でも、わたしピッチャーだから、バットは苦手かも……」
「じゃあ、バントにしよう!」
「パォ?」
「バットをこうやって構えて、軽く当てるのよ!」
シャオは真平の指示どおりに構え、ピッチャーの投球を待つ。
ピッチャー、投げた!
シャオ、バットを当てる!
カスッ!
……しかし、バントは絶妙な角度で転がり、ピッチャーの足元にポトリ。
「えっ?」
「シャオ! 走って!!」
「パォォォーー!!」
シャオ、爆速で駆け出す!!
対する柔道部ピッチャーは焦ってボールを拾い、必死に一塁へ送球――
ブォンッ!
「えっ、ボールどこ?」
送球が大暴投!!
ボールは無情にもフェンスを超え、グラウンドの外へ消えた。
「ボールデッド! ランナー進塁!」
「やったー!」
シャオの奇跡のバントにより、文化部はさらに2点を追加!!
3-0! 文化部がリードを広げる!
2回表、文化部の守備。
相変わらず、シャオのピッチングは絶好調。柔道部は全く打てず、あっという間に2アウト。
「あと一人ね!」
しかし――
カキーン!!
柔道部の4番打者が放った打球は、弾丸のようなライナー!
「うわっ! やばい!!」
打球は一直線にセカンドの美優のもとへ!
文化部のメンバーが思わず目をつぶる――が、
スパァァァン!!
「……あれ?」
気がつくと、美優が横っ飛びで捕球していた。
「えっ!? 美優、すごっ!!」
「ほわぁ……? なんか、手にボールが入ってました~。」
「えっ、狙ったんじゃないの!?」
「いえ~、なんか飛びついたら勝手に入ってた感じです~。」
「奇跡かよ!!」
まさかのスーパーキャッチにより、柔道部の反撃は阻止され、2回表終了!
試合はついに最終回(3回表)。
3-0、文化部のリード!
しかし、柔道部は反撃に燃えていた。
「ここから逆転してやるぞ!!」
シャオ、セットポジションに入り――
「パォ! いくよ!!」
バシュッ!!
見事な剛速球で、ストライク先行!
「よし! もう1球!」
シャオ、気合いを入れて投げた――
カキーン!!
「うわぁっ!?」
打球はセンタ―
「博美先輩!!」
「……」
博美は慎重に落下点に入り、構える。
そして――
ポスッ!
「捕った!!」
審判「ゲームセット!!」
「やったあああ!! 文化部、初戦突破!!!」
シャオの好投と、博美のギリギリの守備(?))と美優のスーパーキャッチにより、日ノ本文化部は3-0で柔道部を撃破!
試合は文化部の勝利で幕を閉じた――が、次の試合も波乱の予感がするのであった……!




