それぞれの昭和
放課後、琴美、沙羅、真平の三人は、再び部室に集まっていた。今日は琴美が新しい企画を持ち込んできた。
「今日はね、昭和の伝説の遊び、『あやとり』を極めるわよ!」琴美は得意げに言いながら、手にはカラフルな毛糸の紐を持っている。
「また何か面倒なことになりそうだな…」真平が呆れたように言う。
「どうせ琴美が絡まって終わるんじゃない?」沙羅は冷静に突っ込みを入れるが、琴美は気にせず話を続けた。
「いい?あやとりってのは、昭和の少女たちのたしなみよ!これを極めれば、優雅で知的な女子になれるの!」
「その発想がすでに昭和過ぎるだろ…」真平は頭を抱えた。
琴美は早速、紐を手に巻きつけ始めたが、わずか30秒で自分の指にがっちり絡めてしまい、取れなくなっていた。
「ちょっと!取れないんだけど!」琴美が叫ぶ。
「いや、早すぎるだろ!もう詰んでるじゃん!」真平が声を上げる。
「なにやってんのよ!」沙羅が半笑いで琴美の手を引っ張るが、結局紐がさらに絡まり、今度は沙羅まで巻き込まれた。
「なによこれ!私まで巻き込まれたじゃない!」沙羅が怒る。
「お前ら、何やってんだよ!」真平が二人の手を引っ張ろうとするが、さらに事態が悪化。結果、三人 全員が毛糸の紐で繋がり、まるで昭和版人間結び目のような状態に。
「これ、どうやって解くんだよ…」真平がため息をつく。
「これは昭和の絆よ!」琴美がなぜかポジティブに解釈する。
「絆じゃなくてただの失敗だろ!」沙羅が冷たく返す。
結局、紐をハサミで切って事なきを得たが、部室の床にはカラフルな毛糸の残骸が散乱していた。
翌週の放課後:昭和の「紙芝居」に挑戦
「今日は昭和の紙芝居をやるわよ!」琴美がまたもや部室に大荷物を抱えて現れた。
「紙芝居って…また昭和の文化引っ張り出してきたのかよ。」真平が呆れ顔で言う。
「でも、ちょっと面白そうじゃない?」沙羅が興味津々で荷物を覗き込む。
琴美が持ち込んだのは、手作りの紙芝居のセットだった。イラストは雑ながらも味があり、どこか琴美らしい。
「私が読むから、二人はちゃんと聞いてね!」琴美は張り切って読み始めた。
タイトル:「勇者琴美と悪の沙羅王」
琴美が自作したストーリーは、どう考えても自分がヒーロー、沙羅が悪役という内容だった。
「そして勇者琴美は、邪悪な沙羅王を倒すために立ち上がった!」琴美が熱を込めて読む。
「ちょっと待って!なんで私が悪役なのよ!」沙羅が抗議する。
「だって、沙羅って悪役っぽいじゃん!」琴美が言い返す。
「その理由適当すぎるだろ!」真平がツッコミを入れる。
さらに話は進み、「悪の沙羅王が巨大な怪獣を召喚する」という展開に。琴美が描いた怪獣のイラストは、どう見ても沙羅をモデルにしたような猫耳の付いたキャラクターだった。
「これ絶対私のことじゃない!」沙羅が怒る。
「気のせいよ!」琴美が必死に誤魔化すが、沙羅の目は完全に冷ややかだった。
最終的に、琴美が「邪悪な沙羅王にとどめを刺した!」というくだりで、沙羅が声を荒げた。
「ふざけるな!私にも勝たせろ!」沙羅が紙芝居を引っ張り出す。
「いや、ストーリーを変えるな!」琴美が取り返そうとするが、沙羅が引っ張り返し、二人の間で紙芝居がぐちゃぐちゃになった。
「おい!お前ら、紙芝居が散らかってるぞ!」真平が叫ぶが、二人は止まらない。
最終的に、紙芝居のセットは破れたまま床に散乱し、琴美と沙羅はお互いを睨みつけていた。
真平は深いため息をつきながら言った。
「昭和の文化、こんなに荒れるものだったか…」
琴美と沙羅は、しばらく険悪なムードだったが、最後にはどちらともなく笑い出し、結局は仲直りする。
「まあ、昭和の文化って、こういうハプニングも醍醐味なのかもね。」沙羅が微笑む。
「そうよね!次はもっと面白いことやろう!」琴美が意気揚々と宣言する。
「また何かやらかすんだろうな…」真平は苦笑しながら、二人の元気な姿を見守るのだった。
春が近づく3月初旬。日ノ本文化部の部室では、琴美がまた新たな提案をしていた。
「みんな!今月のテーマは『昭和の宝物を持ち寄ろう』よ!」
「また変なことを…」真平が呆れ顔で応じる。
「変じゃないわ!昭和の宝物をみんなで楽しむのよ!もちろん、ただ持ち寄るだけじゃなくて遊ぶのが目的!」
「どうせまた騒ぎになるんでしょ?」沙羅が冷静にツッコミを入れるが、琴美はお構いなしだった。
昭和の宝物持ち寄り大会、開催!
翌日の放課後、部室には琴美、沙羅、真平がそれぞれ持ち寄った「昭和の宝物」が並んでいた。
1.琴美の持ち物:1977年の任天堂の「カラーテレビゲーム15」
琴美は古びた段ボール箱から、なんともレトロなゲーム機を取り出した。
「見て!これが私の宝物よ!カラーテレビゲーム15!」
真平が驚きの声を上げる。「お前、これどこから持ってきたんだ?」
「家の倉庫で見つけたの!昭和のゲーム機の最高峰よ!」
「最高峰って…ただの卓球ゲームだろ?」沙羅が冷静に突っ込む。
「失礼ね!これ、15種類も遊べるのよ!」琴美は胸を張る。
2.沙羅の持ち物:昭和のレコードコレクション
沙羅はレコードプレーヤーと、昭和のヒット曲が詰まったレコードを持参。
「私はこれ。昭和を感じるなら音楽が一番でしょ。」
「渋いな…でも、再生できるのか?」真平が心配そうに尋ねると、沙羅は笑顔で答える。
「もちろん。ちゃんと掃除してきたし、音質もバッチリよ!」
琴美が覗き込み、「ねぇ、この『UFO』って曲、タイトルだけで面白そうじゃない?」
「ピンク・レディーだよ。昭和の名曲。」沙羅が得意げに教える。
3.真平の持ち物:スーパーカー消しゴム
真平は小さな箱からスーパーカー消しゴムを取り出し、机に並べた。
「俺の宝物はこれだ。スーパーカー消しゴム。」
琴美が目を丸くして叫ぶ。「なにそれ!ただの消しゴムじゃない!」
「昭和ではこれが大ブームだったんだよ。コースを作って、消しゴムを走らせる遊びが流行ったんだ。」
沙羅が興味津々で手に取り、「これ、小さいけど可愛いわね。でも遊び方がよく分からない。」
「任せろ、今から説明してやる!」真平が自信満々に語り始めた。
それぞれの宝物で遊んでみた結果…
部室に昭和のエンタメが集結し、さっそく遊ぶことに。
1. カラーテレビゲーム15
琴美がテレビにつなぎ、卓球ゲームをスタート。
「ほら!こうやってバーを動かしてボールを返すの!」琴美がテンション高く説明する。
真平が操作してみるが、「シンプルすぎて逆に難しいな…」と苦戦。
沙羅は笑いながらも挑戦し、「なんかこれ、じわじわ面白いわ。」とハマり出す。
しかし、琴美が操作を間違えて勝ち越された瞬間、「こんなのズルよ!」と叫び、コントローラーを放り投げた。
「いやいや、お前がヘタなだけだろ!」真平がツッコむ中、沙羅が得意げに「はい、また琴美の負けね♪」と挑発。
「ねぇ別の遊ぼうよ」沙羅が提案、「じゃあどれ」ゲーム機のスイッチを変えるごとに画面が変わる。
「??????」見合わせる二人、「だから別のゲームしようよ」沙羅がせかすが、
「よく見なさい!これがバレー、これがテニス、これがホッケーで最後がピンポン!!!」
「同じだろ」
「全然違うわよ!これだから素人は」
2. レコード鑑賞
沙羅がレコードをセットし、昭和の名曲を流し始める。
「♪UFO~♪」部室に軽快なメロディが響き渡る中、琴美が突如踊り出す。
「ちょっと!これ面白いわ!」琴美は即興で振り付けを真似し、ノリノリになる。
「お前、意外と上手いな…」真平が呆れつつも感心。
沙羅は「もっと曲あるよ!」と次々と名曲を披露し、部室はプチ昭和ディスコ状態に。
3. スーパーカー消しゴムレース
真平が即席で段ボールを使ったコースを作り、スーパーカー消しゴムを走らせる遊びを提案。
「これで坂を作って、一番遠くまで進んだ車が勝ちだ。」
琴美と沙羅が真剣な顔で挑戦する中、琴美が消しゴムに全力を込めて発射。
「いけー!私のランボルギーニ!」
しかし勢い余って消しゴムが壁にぶつかり、後ろに跳ね返る。
「これ、完全に私の勝ちね!」沙羅が冷静に勝利宣言する。
琴美はまたも不満げに叫ぶ。「こんな遊び、不公平よ!」
「いやいや、普通に遊べばいいだけだろ!」真平が突っ込む。
部室が笑いの渦に包まれる
最後は3人とも笑いながら、それぞれの宝物を片付け始めた。
「昭和の宝物って面白いのね!」琴美が満足げに言うと、沙羅も頷く。
「意外とハマるわね。でも、琴美が負けず嫌いすぎて疲れるわ。」
「なんですって!次こそ勝つんだから!」琴美が拳を振り上げる。
「ほらほら、また始まったよ…」真平はため息をつきつつも、少しだけ楽しげな表情を見せていた。
こうして昭和の宝物を持ち寄った日ノ本文化部の活動は、またひとつ騒がしくも楽しい思い出となったのだった。




