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最強の魔術師?!  作者: 暁瑠
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その後の顛末

 お昼過ぎに、ダグラスとシスカが来てくれた。

「失礼します!お体は大丈夫でありますか!」

 イリスの眉がピクリと上がる。

「それと、あのゴミ…じゃなくて、作品は要らない物ですか?」

「あー!もうキモい!ダグラスは敬語禁止!大体まだ、かもしれないってだけなんだから、シスカさんも普通に喋ってね?」

「ふふっ、そうね。取りあえず宿題は持って来たわ。あと、足りないものはない?」

「大丈夫だよ。ローブもまた新しいの貰っちゃったし」

「つーかおめーのせいでどんだけ苦労したか。あのゴミの山を必死で捜索してたら、持ってたとかいうし」

「材料が心許なかったんだよ。ついでにアイテムボックスの中も整理しながらやってたから。後で一括りにゴミとして持ってくつもりだったんだけど、忘れちゃった。えへ」

「えへ、じゃねえっ!」

「でもまだ、半分も終わってないんだよね。流石にゴミで圧死はやだなと思って、途中でやめた」

「あれで半分とか、どんだけ容量あるんだよ」

「しばらくまともな採取行ってないから、少ない方だよ。イベントリの方が、思ってるの出せるし便利だし」

「それで、どうなの?本当の所は」

「王妃様に似ているらしいけど、この国では石の鑑定も出来ないから、分かんない。14歳だから、違うと思うんだけどね」

 ドアがノックされて、エンデとレンの父が入って来た。

「あれ?おじいちゃん…あ!王子様のお父さんなら、王様だよね!」

「知っていたのか…神父から証言が取れました。姫様と知っていて預かったと。年齢を誤魔化したのは、少しでも知られる可能性を無くしたかったのと、その魔力に手を焼いたそうです」

「えー!じゃあ本当に13歳なの?1年損した!」

「言う所はそこかの?」

「両親が生きていたのは素直に嬉しいです。でもあと1年で大人だと思ってたのに…」

「ふむ。相手がドムハイトの王女となると、嫁に来て貰うのもちと厳しくなるかの?まあ、その辺はレンに任せておけばよい」

「でも、私が捕まらなければ、戦争にはならないんですよね」

「そうじゃな。ただ、扇動していた大臣を押さえたからといって、完全に危険が去った訳ではない。不満じゃろうが、しばらくはここにいて貰う事になるかの。なるべく早く解決を図るし、不自由はさせんから」

「分かりました」

 国王が出て行くと、ダグラスとシスカはほっと一息つく。

「緊張してたの?」

「普通するわよ。以前にお会いしたことあるの?」

「うん。海竜を倒した時にね。どうしても海竜を倒した私と会ってみたいって」

「つーか、国王の顔知らなかったのかよ。あーでも、王子様の顔、遠目とはいえ俺も見ているから、人のこと言えねーか」

「そういえばそうよね。偉そうに見えないし、普段可愛いから、考えが及ばなかったのね」

「シスカさんの可愛いって、どこ基準なの?」

「普通よ。あなたもレンさんも、小動物みたいに愛らしいわよ?」

「女ってわかんねー。コイツなんて、見た目可愛くても中身は凶悪じゃん?」

「凶悪じゃないし」

「凶悪じゃない奴が、屋敷を爆弾で吹っ飛ばすかよ」

「だって、捕まったままで利用されて、迷惑かける訳にはいかなかったんだもん」

「ていうか爆発させない方が、エンデもすんなりおめーを保護出来たかもな」

「…。それは私もちょっと思った。まあ、何とかなって良かったよ」



 その日の夜、やっと城に着いたレンは、イリスが無事保護されたと聞き、ほっと一安心した。近寄ってきたエンデに労いの言葉をかけ、詳しい報告を聞く。

「早朝まで陛下が大臣殿を引き留めて下さったおかげで、ギリギリでしたが何とか保護する事が出来ました…というより、爆弾を使って自分で出て来ました」

「あー。何というか、すごくイリスらしい」

「後の処遇は全て任せるそうなので、これはいい機会でもありますね」

「本当にね。自分から罪を重くして」

 客室の前に来ると、内側から扉が開いた。

「レン!やっと帰って来た!」

 思わず抱きしめ返すと、悲鳴があがった。

「いたたた…あの、王子様、私一応怪我人」

「えっ?包帯だらけじゃないか!酷い事をされた?」

「ううん、自業自得。魔力反射壁内で魔法使っちゃったから」

「ああ、だから爆弾ね。でも気を付けないと。君の魔力じゃ命を落としかねない」

「トーヤ先生にも、散々怒られたってば。怖いけど、いい先生だよね」

「他貴族からは不評だけどね。敬語は一切使わないし、思ってる事ズケズケ言っちゃうからね。ただし、裏表は一切ない」

「レンの好きなタイプだね」

「君もいずれ分かるよ。貴族に囲まれて生活してたらね」

「それは嫌だけど、…私、レンと一緒にいたいな」

 レンはじっと、イリスの目を覗きこむ。先に目をそらしたのは、イリスの方だった。

「そんなにじっと見られると、恥ずかしいよ」

「もしかして、僕の事好き?」

「だから頑張ったんだもん!迷惑かけられないから。頑張ったねって褒めて欲しいから」

 イリスは、隣に座るレンを見上げる。レンはそっと、頭を撫でた。

「ふにゃ…」

「少しは進歩した、のかな?」

 こういう所は、変わらないけど。


 宿題位しかやることないと思ってたけど、その宿題も出来ない位、沢山の人が訪ねてきて、イリスはうんざりしていた。値踏みする者、取り入ろうとする者。初めはみんなに会っていたけど、しつこい人は、通さない事にした。それでも手を変えて訪ねてきて、鬱陶しい。


「隊長!イリスちゃんが行方不明です!」

 言うほどリリアは慌てていない。

「どこかに隠れたか?」

「ふふっ。まあ、少しは気分転換させてあげましょうよ」

「…で?どこに?」

「屋根の上ですね」

 立場は人を変えないらしい。

「全く。前代未聞だな。らしいが」

「今まで自由に過ごして来たイリスちゃんを閉じ込めて置こうとする方が、問題なのでは?」

「しかし今はまだ、自由にさせる訳にはいかない。最有力候補ではあるが」

「だからこそ、ですね。私は屋根に登ってイリスちゃんとお話してきまーす。折角こんな近くにいるのに、邪魔者が多くてゆっくり話しも出来ない」

「お前の本音はダダ漏れだな」

「心配しなくても、ただ愛でるだけにしておきますから」

 エンデは大きく溜息をついた。何だかんだ言いつつも、わきまえてはいるのだ。それでいいのだろう。

 


 大臣と、エリザベートは国外追放処分になった。本当は死罪でも良かったのだが、イリスが否定した。被害者のイリスが否定したので、資産没収の上に国外追放になった。

 序でに大臣のそばで旨い汁を啜っていたもの達にも相応の処分にする事が出来たので、成功と言える。まあ問題と言えば大臣不在となったので、仕事が増えた位か。直ぐに後任を決めても良かったのだが、これについては少し考えがあるので、保留にした。

 やっと自由になれたイリスだけど、立場上、そのままただ自由にする訳にはいかないので、一応護衛を付けた。夏休みも残りわずかだし、アカデミーが始まれば、そう鬱陶しいこともないだろう。

 今日は子供達を引き連れて、草原にテトポ芋の採取に行くようだ。城内では自由にさせていたけれど、イリスには窮屈だったのだろう。

 オークとも出くわしたりしたけれど、魔法で瞬殺されていた。

「イリスちゃん…そりゃ、オークなんて戦いたくもないけど、私の出番がないよー」

 付いてきてくれたミーアがぼやくけど、そもそも護衛なんて必要ないのだ。

「まあまあ、オークの串焼きは美味しいよ?」

 言いながら解体を済ませ、塩とハーブで味付けする。

「分かってるけどさ。でも最近魔物が微妙に増えてるみたいだから、気を付けないと」

「そうなの?」

「そっか、イリスちゃんはまだ迷宮に入れなかったもんね。そもそもの数もだけど、上層で下層のはぐれが出たりしてるみたい。魔物自体も昔より少し強いみたい」

「ダンジョン行きたい!もし…なら1年増えるし、ポーターでいいから。ね?ミーアちゃん」


「それは私だけじゃ決められないよ。せめて隊長に聞かないと」

「エンデかあ。あっさりダメって言われそう」



 夏休みも終わり、迷宮の話しは予想通りだった。でも、誰かとまでは分からないが、アマネ王女が国内で見つかった事や、戦争には至らない事が噂に上り、どこか緊張した空気は幾分収まりつつあった。

 クラス内も一見普通だが、今はまだどこか少しぎこちない。同じにはならないと思う。でもそれなりに仲良しクラスにはなれるだろう。


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