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最強の魔術師?!  作者: 暁瑠
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イリスの特別?

エラーが出て同じ話が三回掲載されてしまいました。消し方が分からないのでこのまま進めたいと思います。済みません。

 今日は疲れた。わざととしか思えない予算のミスで、修正に時間がかかった。もうすぐ春休みも明けるのに、休む暇もない。…?人払いがしてあるのか?誰もいない。部屋の前に一人立つエンデを見、心臓が大きくはねる。

「申し訳ありません。イリスが事件に巻き込まれ、怪我をしてトーヤの所に」

 よろめいた所を、エンデに支えられる。

「命に別状はありません。大丈夫です」

 支えられながらも、トーヤの所に向かう。


 先ほどよりも厚い結界の中にイリスがいた。結界の中から、何かを訴えている。

「トーヤ、結界を」

「気をつけろ?」

 頷いて、結界が解かれると、イリスはレンにしがみついて泣きだした。今までも散々泣いたのか、目が赤い。

「私、ベックの事守れなかった。目の前で殺されて…私は、全然強くなんてないよ。守らなきゃいけなかったのに、何も出来なかった」

 レンは黙って髪をなでる。こんな遅い時間になるまで、何があったのか知らなかった。今だって。イリスが、こんな風に知らない所で泣いているなんて、嫌だ。エンデが直ぐに知らせなかった理由は分かる。きっと平静でいられなくなるから。僕がまだまだの証拠だ。

「すぐに側に行けなくてごめんね」

 弱い僕で、ごめん。

 一緒に泣いて、落ち着いたイリスをそのまま寝かせて、そっと離れると、トーヤが冷えたスライム枕を渡してくれた。心なしかぐったりして見える。

「魔力が尽きかけたぞ、俺は」


 目が腫れないように冷やす僕に、エンデが事件のあらましを語ってくれる。

「そういえばトーヤ、薬物反応は?」

「出たぞ。違法薬物がたっぷりとな。イリスはよく無事だった。体が潰れてもおかしくない力が出ていただろうに。ここに来た僅かの時間でも再生している。骨はまだだが、内臓は完治している。魔物にありがちな再生能力…いや、太陽の魔法にあるという治癒魔法?興味深いな」

「お前の悪い癖が出たな。さすがに未来の王妃に実験は出来ないからな」

「チッ。せめて経過観察を」

「無理だ。諦めろ」

「しかも、イリスが了承しないと城にも来ないし」

「何?…いっそのこと俺が」


「やめてくれ。リリアの事だけで頭が痛いのに」


「びっくりしたよね。まさか職務とは全く関係無しにイリスと旅行に、行っちゃうんだから」


「しかも、理由が好みのタイプの子だったからとは」

「ははは。お前、部下に出し抜かれたのか」


「しかも目の前でな…元々親衛隊は曲者揃いだが、アイツは飛び抜けているな」


「一番はエンデじゃないかな」


「そうだな。なんとなく騎士になったなど、初めて聞いた」

「ちゃんと考えて行動しているようで、結構感覚で動いているみたい。イリスに似てる」

「なっ…!」

 絶句しているエンデを見て、レンはクスクス笑う。

「何処が似てるんですか!私はあんなに考え無しじゃありませんし、感覚だけで動いている訳ではありません!」

「しー!イリスが起きちゃうから」

「けど、いいのか?イリスは何も知らないんだろう?」

「眼鏡なら、問題はないよ。…?!服!」

 エンデも今気がついたのか、固まっている。

「流石にこの色合いは不味いな。あんまり見てなかった気もするけど」

「大丈夫じゃないですか?イリスですし」

「うーん。今更どうしようもないし。バレたら仕方ないかな」

「そろそろお休みになりませんと。明日も忙しいですし」

「じゃあトーヤ、任せたよ」


 次の日。毛布に包まれて、エンデに抱き上げられたイリスを見送る。

「ごめんね。イリスより仕事優先するしかなくて」

「謝ることじゃないよ。私も、心配かけてごめんね」

「しばらくは馬車だ。寝ていろ」

「うー、痛くて眠れないよ」

「痛み止めならあるが」

「エンデ、これ、匂いが違う。睡眠導入剤?」

「知らん。適当に飲め」


「以外とおおざっぱ?…あれ、私のローブじゃない」

「ボロボロになってしまったから、傷に触らないようなものを買って来てもらった」

「何から何まで。トーヤ先生にもまたお世話になっちゃった」

「それこそ気にするな。あれは半分以上趣味だからな」


 寮の前には、ダグラスとシスカが待っていた。

「頼む」

「ミーアもいないのか?」

「今は仕事でこの街にもいない。悪いが、私も仕事で直ぐに戻らねばならない」

「大丈夫よ。任せて」


「取り敢えず朝ごはんの支度しちゃうから、イリス寝かせて来て」

 ベッドに寝かせると、僅かに顔をしかめて目を覚ます。

「ダグラス?ね、アルとロンは?」

「アイツらなら大丈夫だよ。それと、これ」

 ダグラスは、ペンダントを渡す。

「う…よかった。ベックの事考えたらこんな事言えないけど」

「全くあんな奴ら、おめーなら瞬殺だろうが」


「文字通りの瞬殺になっちゃうよ。加減なんて出来ないから」

「それでも、少なくともおめーがやられることはなかったし、あんな奴ら殺しても罪になんねーよ」

「無理。私に人は殺せない」

「まあ、盗賊相手にも魔法使えなくなる位だしな。けど、躊躇って傷つくのは大切な奴かもだぞ。例えばレン。アイツは守らなきゃ一発で死ぬな。それでもか?」

 首を横に振るけど、実際イリスには無理なんだろうなと思う。とことん人が好きで、全て受け止めようとする。そのくせ、自分自身はどうでもよく、もしかすると人ですらない。どこか危うい。

「おめーはさ、普通に大人になって大切なみんなと生きて行きたいだろ?」

「当然だし」

「自分がどっかおかしいって自覚は?」


「何で分かる訳?本当に頭くるんだけど。実は不死身かな、とか大人になれないんじゃないかな、とか。…最近は食欲もあんまりないし、ちょっとしか寝られない」

「それはあの、魔法のせいじゃねーのか?」

「違うと思う。きっかけはそうかもだけど、運命みたいなもの?それでも私は、ここにいたい。大好きな人達と一緒に。離れても、ちゃんと戻ってくる」

「そうか。なら少し位変でもこだわることはねーのかもな」

「変とかいうな。馬鹿。大人になれたら、変われる気がするんだ」

「大人、ね。恋人でもつくれば?俺は無理だけど」

「こっちから願い下げだし。私にだって、選ぶ権利あるし」

「俺にだって。絶賛片思い中だからな」

「あー、無理。相手は全く意識してないから」

「!相手分かるのか?」

「ううん。なんとなくだし」

「またなんとなくの呪いかよ!」

「だから、呪いじゃないって。…でも、遠い未来には、可能性もなくはないのかな?」

「何年後?」

「知らないよ。だってなんとなくだから」

「…おう」

 釈然としないけど、何年後かも分からないのに、心変わりは無いのだろうか。



 夜、レンは寮に戻ってきた。丁度シスカが出て来た所で、レンを見て苦笑する。

「今、丁度寝ちゃった所なのよ。目の下にくまできてるわよ」

「う…。忙しくて」

「明日はゆっくり出来るの?」

「いや、朝にはもどらなきゃ。明後日からはアカデミーだから、何とかしなきゃだし」

「何とか言われても、レンさんの仕事分からないし」

「そうだね」

 そっと中に入ると、イリスはぼんやりと天井を見ていた。

「レン、お仕事終わったの?」

「取り敢えず今日は。明日朝には戻るけど」

 ベッドサイドに座り、ちょこんと出ていた手を握る。

「かえって起こしちゃったかな?」

「ううん。一日中寝てたから」

「何かして欲しい事とかある?」

「じゃあ、ここで一緒に寝て」

「?!」

「何か、びっくりさせる事言った?」

 

 落ち着け、相手は子供。イリスだから。

「もしかして甘えてる?」

「だめ?レンの隣なら、安心して眠れる気がしたから」

「だめじゃないよ」

 隣に潜ると、胸に頭をすり寄せて来た。何とか平常心を保ち、頭を撫でると、嬉しそうにすり寄ってくる。本当の意味での彼氏にはまだまだ遠そうだと、苦笑する。

 暖かい。どうしてか初めはどきどきしてたレンだったけど、すぐに呼吸が落ち着いた。寝てしまったらしい。疲れているんだろうな。

 ごめんね、いつも心配かけて。いつまでも欲しい好きをあげられなくて。それと、ちょっとだけ変でごめん。でも、きっと大丈夫だから。

 イリスはそっと、レンの頬に唇を寄せる。

 あれ?今ちょっとだけどきどきした?これって特別?

「ね、レン、レンてば」

「んぅー…寝かせて」

 頭を抱きしめられてポンポンされると、ふわふわのいい気持ちになって、眠くなって来た。良く分かんないけど、ま、いいか。


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