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最強の魔術師?!  作者: 暁瑠
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リリアちゃんと、アマネ王女

「よし!間に合った!」


 昼休みを使って完成させた腕輪を手に、ふふっと笑う、とそれを無造作に紙袋に突っ込んで、錬金術の教室を後にした。


「レン、良かった。まだいた」


「例の怪しい実験器具か?」


「ぶう。エンデ酷い。怪しくないもん」


「これは、銀?不思議な色合いだね」


「持続性栄養剤を表面加工したんだよ。薬みたく常用性はないから、忙しいレンにはピッタリかなって」

「嬉しい。早速付けさせてもらうよ。うん。ピッタリだ」

「後で使用感とかの感想聞かせてね。多少は効き具合弄れるから」

「一応聞くが、その銀は何処で?まさか河を超えて南に行ったりしてないか?」


「いくら私でも、国境越えたりしないって。東の大地より少し北に行った所」


「あ、そっちか…って、そこは冬はスノーベアが出るじゃないか!」

「平気平気。毛皮も取れて一石二鳥だよ。ギルドのクーゲルさんには怒られたけど、今更だよね」


「本当に今更だな」


「取り敢えず15になったら即効でランクCに上げてくれるって」


「あのさ、生活の心配無くなったら、冒険者は辞めて欲しいな」

 イリスは首を傾げる。

「もし、君が僕を好きになってくれたら、卒業後は」

「どうしたの?何か顔赤いよ?」

「ええと、…心配、だから。危険なことはしないで欲しい」

「心配症だね、レンは」


 レンははあっと溜息をつく。エンデが慰めるように肩をたたく。

「相手は子供ですから」


「何?私がどうかしたの?」


「そうだ、お礼に、ケーキ食べに行く?中にチョコレートが入ったやつ」

「あ!それ知ってる!ダンさんの新作だよね!腕輪終わったら食べに行こうと思ってたんだ」


「あ!ダンさん、久しぶり」


「イリスちゃんか。最近ご無沙汰だったね」


 その声に、ケーキを買っていたワンピース姿に、2本の短刀を下げたお団子頭の少女が振り返る。エンデの姿を見、そっと視線を外す。


「新作ケーキ、美味しいよね!お気に入りなんだ。私はリリア。よろしく」


「リリアちゃん、冒険者なの?」


「一応Cランクだよ?」


「え!同い年位かと思った。大人なんだ」


「えへへ。良く年下に見られちゃうけどね。背も低いし」

「私はイリス。Dランクだよ」

「おお。あなたが噂のイリスちゃんなんだね」


「う…噂?」

 聞くの怖いな。どんな噂されているんだろう?


「竜殺しのイリスって呼ばれているよね」


「あー。偶々なのに」

「ベアキラーとか。格好いいよね!」


「それは否定しない。毛皮はいい値段で売れるからね」

「ね、春休みになってからでいいから、一緒に冒険行かない?」

「いいよ。どこ行く?」


「イリスちゃんは?」

「ダンジョン行きたいな。ポーター扱いなら大丈夫なんだよね?」

「うーん、ごめん。私もアイテムボックス持ちだし、…あ、西の高台って知ってる?いい眺めだよ」

「んー、春休みの宿題もやらなきゃだから、あんまりゆっくりは出来ないけどいい?」


「イリスちゃんと仲良くなれるだけで嬉しいからいいよ!」

「私も。リリアちゃんとお友達になれて嬉しい」


「イリスは、初めて会った人でも疑いなく友達になれるんだね」

 口の端に付いたチョコを拭ってやる。

「リリアちゃん、いい子そうだよ?」


 でもリリアは騎士で、イリスが無茶をしないようにエンデが付けたのだと思うし。



 3月。進級試験にも無事全員合格して、もうすぐ春休みだ。そんな折、ケントニスに滞在していたというアマネ姫が現れたという知らせが入った。

 ふわふわとした黒髪に、黒というよりはブラウンがかって見える瞳。まだ12歳のはずだけど、13歳のイリスより、大人びて見えた。


「父上はミコト王妃に会った事があるんだよね?どう?」

「大分前の事だし、分からんの。元々公の場に王妃は滅多に出てこんし。それに宝玉は持っているし、儂らは隣国の者の務めとして手続きを進めて、問題なく会えるように補佐してやれば良い」


「まあ、そうなんだけどね」


「お前の可愛い子より大人びていて、戸惑っているのかの?」

「ちょ、聞こえるって。ていうか、イリスが子供っぽいだけだと思うし」



「レインフォート様、素敵なお庭ですね」

 テラスでお茶していたら、腕をとられた。花の香りに混じって、かすかに嗅いだ覚えのある香りがする。

「まあ、殿下!何ですの?その小娘は」


「エリザベート、失礼だよ。こちらはアマネ王女。で、エリザベート。ヴォルト大臣の娘」


「婚約者の、が抜けていますわ」

「まあ、随分年上ですのね」


 エリザベートが固まる。おお、効いている。


「別に婚約はしてないけど。父は誰と結婚するかは僕の意思を尊重してくれるし」


「ふふっ。でしたら、私という選択肢もありますのね。私の国ドムハイトと余り仲良くないと聞きますし、私が平和の架け橋になることも」


「別に、国の為になる結婚にこだわるつもりはない。後は僕の努力だから」

 そう、国の為にならなくても、イリスさえいてくれればいい。



 週明けに戻ると、すっかり噂は広まっているようだった。

「ねえ、10年前に行方不明になったお姫様が生きてたって本当なの?」


「うん…らしいね」


「そうだな。お前より大人びていたな」


「え?…って、私よりいっこ下じゃん!酷い!」


「本当に本人ならな」


「宝玉は本物に見えたけど、それを判断するのは向こうだからね」

「そうなのか?でも、王女様って美人なんだろ?お淑やかで、間違っても魔物とかぷち倒したりしない」

「…そういう事言ってるから君は、イリスに蹴られるんだよ」

「でも、今までどうして名乗り出てこなかったのかしら?」

「それは、海竜が原因だって」


「あー。確かにあんなのいたら無理か。でも、今までもそれっぽいのはいたんだろ?」


「ウチの国は少ない方だよ。隣だけど、休戦中とはいえ敵国だし。まあ、できる限り仲良くやって行きたいとは思っているけど。それに本人じゃなきゃ意味ない」

「そりゃあそうだよね」


「それにしても今回は、噂の広まり早いな」


「あら、知らないの?姫様を育てたっていう商人が、自分たちでそう言って商売しているわよ?街のみんな知っているわ」

「武器とかもさ、海渡って来たからってナマクラじゃ買わねーよな。飾りとしての価値はわかんねーけど」

「へえ?酷いんだ」

「少なくとも武器に関してはな。ミスリルとか、魔力通せばすぐわかんだろ」

「杖の先に付ける石もダメだね。あんなのすぐ砕けちゃう」

「話題だけじゃ、ちゃんとした冒険者は買わないわね。おまけに高いししつこいし」


「お前達の意見は、騎士団に通しておく」


「お、マジ?」


「街の平和を守るのも騎士の役目だからな」

 

 それに、あの女は嘘をついている。証明は出来ないが。だとしたら目的は何なのか?



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