冬休み?
自分では分からないのですが、文章に訛りが出ているらしいです。意味が分からなかったらごめんなさい。
冬休み。沢山の書類の山に囲まれて、レンがやっているのは、宿題。
「この状況で宿題やりますか?」
多くの文官達が言えない事を、エンデがついてくる。
「だって年始はもっと忙しいじゃないか。先生の雷怖いし」
少し拗ねたように言うレンに、エンデはため息をつく。
「僕にとってはどっちも大事だし」
だからと言って、国政と宿題を同レベルで扱うのはどうかと思う。
「それに一応、急ぎのは終わらせたし。エンデは宿題終わった?」
「一応、先日の休みの時に大体は」
「いいなあ。僕も休みが欲しい」
まるで子供の我が儘だ。けれど、周りの人間に甘えられるようになったのは、進歩とも言える。
廊下の方が一気に騒がしくなって、エンデは表情を引き締める。
「殿下、お疲れ様ですわ」
「エリザベート、部外者が許可なく入るな」
重要な書類を、さり気なく片付ける。
「部外者ではありませんわ。将来は私も、こういった仕事に関わっていくのですし」
「そうですわ、今日は殿下に良い物をお持ちしましたの。巷でもよく効くと評判の、栄養剤ですわ」
レンはそのラベルを見て、躊躇いなく口にした。
「殿下!」
「大丈夫だよ。ほら」
ラベルには作者のサインが入っている。イリスの作品だ。いや、イリスののほほんとした所が感染ったらどうするんだ。
「ありがとう、やる気出たから、もう出て行って」
「は?いえ私は、お手伝いを」
「エリザベート様、これ以上は」
エリザベートが出て行って、レンはもう一度瓶を見る。知らないで買って来るなんて、馬鹿だよな。父親に偵察でも頼まれたのか?あれに何か分かると思っているのか。
「エンデ、気付かれた様子はある?」
「今の所は。ですが、一層用心しましょう」
冬休みが開ける一日前、イリスは馬車からエンデに連れられて降りるレンを見かけた。
「わ、レンもしかして疲れてる?あ、荷物運ぶよ」
「運動の疲れじゃなくて、精神の疲れだね」
レンに手をかざして、魔力を見ていたイリスがつぶやく。
「この部屋だ。悪いが、しばらくついていてくれ」
「うん。一応私、レンのか、彼女だし。だから大丈夫」
エンデはレンをベッドに寝かせ、出て行った。…隣の部屋?仲良しさんだねー。私もシスカさんの近くの部屋になったから仲良くなれたんだし。
それにしても、物が少ない部屋だ。最初は広さが違うかと思ったけど、そうじゃない。アイゼルの部屋も大きさは一緒だし、綺麗好きなのかな?私の部屋には驚いただろうな。
額に張り付く髪を手でさらりと払う。結構髪の毛硬いんだ。猫っ毛で腰がないからちょっと羨ましい。
太陽の魔法には、疲れを取るのもあった。呪文は覚えていないけど、効果は分かっている。イメージさえ固まっていれば魔法は発動可能。魔力は余分にかかるけど、自分の属性魔法だから。それに、レンに恩返しがしたい。
汗ばむ額に手を当て、ゆっくりと魔力を流し込む。と、レンの顔色が目に見えて良くなった。
成功、かな。減ったのはホーリー一回分の魔力位かな。私には大したことないけど。
レンの寝顔見てたら、眠くなってきた。…ちょっとだけ…ん、暖かい。
「ん…?」
寮の部屋、か。頭痛が消えた…暖かい?
「!イリス?何でここに?」
いつの間にベットに潜り込んだ?
「失礼します。…何やっているんですか」
「?な、何も!してない!」
「…いえ別に、未成年者に手を出したとしても、付き合っているんですから。随分顔色が良くなりましたね?」
「どうやら、知らない内に魔法を使われたらしい」
「太陽の、ですか。呪文の書を取り上げた意味がありませんね」
「本当だよ。僕の為に使ってくれたのは嬉しいけど」
「しかし、自分を好いている男の前で眠るとは」
「言うなよ。悲しくなるだろ」
「んー…あれ?」
「あれ?じゃないよ。全く。少しは危機感持ってよ」
「危機感?」
「あのさ、一応付き合っているはずだよね?」
「あー、そういう事。でも私、ぺったんこだから触っても嬉しくないと思うよ?」
「あー、そういう問題じゃなくて。まあいいや」
「そういえばイリスは、あの呪文の書を問題なく読めたのだよな?」
「うん。何故かね。見たことない文字だったけど」
「あれは読めない文章だった。全てが意味不明で、何故理解出来たんだ?」
「そんな事言われても、分かんないよ」
「そうなのか」
「エンデは読めるの?」
「いや、辞典で調べたらしい」
「ふうん。でも、私には必要だと感じたんだよ。なんとなく」
「そうなんだ。…むやみに使わないなら、渡した方が良いのかな?」
「まあ、あれば呪文分かるから、魔力は無駄にかからないけど。でも、お城の宝物になっちゃったんでしょ?勝手に出したら駄目じゃん?」
「うーん。今手掛けていることが終わってからでいいかな?」
「今年の夏位?」
「!…なん、で?君は何も知らないはずだよね?」
確かにあと半年はかかると見てるけど。
「なんとなく?それ位は色々ある気がする」
レンは黙って、自分を見上げる真っ直ぐな瞳を見つめる。
「レンは私のなんとなくは嫌?」
「そんな事ないよ。ただ少しびっくりしただけ」
エンデもたまになんとなく分かったりするけど、ここまでじゃない。
「在り方の違い、かもしれません」
「在り方?」
「いえ、なんとなくそう思っただけですが」
「たまにね、私も考えるよ。成長期の筈なのに伸長も中々伸びないし、子供体型だし」
「2、3年間違っているとか」
「エンデ酷い」
「まあ、高すぎる魔力は成長を阻害するらしいし、何にせよイリスには変わりない。こだわらなくても、ゆっくり大人になればいいよ。中身もね」
「中身は大人のつもりだけど?ちょっとだけ分かんない事もあるけど」
「焦ったからってどうにかなる事でもないんだから。待っているよ。ただ、君が可愛くて我慢出来なかったらごめん」
「我慢?」
「今は、いいよ。考えなくても」
「んー?何か私に出来る事あったらちゃんと言ってね?」
レンが私の為に色々としてくれるように、私もレンの事、大切にしたいから。




