舞踏会で
夢のなか。自分よりも年下の女の子が、見たこともない綺麗な服を着ていた。自分を呼んでいるみたいだけど、声は聞こえない。長い黒髪の、お人形さんみたいな子。目は閉じられていて、見る事が出来ない。
会った事はないはずなのに、懐かしく感じる。それと、何か大切な事を忘れていて、何かしなきゃならないのに、それが分からない。
「天音と繋がったわ」
少女は自分の世話をしてくれる巫女姿の女性に言った。
「けど、言葉が伝わらなかった。もしかしたら違う名で呼ばれているのかもしれない」
「美月様、所在はどうですか?」
「それも分からないけど、今回初めて繋がりが持てたのは、多少なりともあの子が太陽の力を使ったからね。一応美琴に伝えておくわ」
「きっと喜ばれるでしょうね。10年間全くの所在不明だったのですから」
「天音がちゃんと神子として目覚めてくれれば、月の側に大きく傾いていたバランスも、元に戻る。…そうね。あと1年位かしら?」
美月は、閉じらた瞳のまま、まるで見えているかのように動く。
「もしかしたら、バランスが崩れて生まれた闇の眷属を消したのは、天音かもしれないわね」
さっきの女の子は、誰だったんだろうな。久しぶりにちゃんと眠れた気がしたのに。あの海竜討伐の後位からか。ちゃんと眠れてない気がする。初めは、魔力不足で倒れた時に寝過ぎたからだと思ってたけど、そのうち食欲まで落ちてくるし。ちゃんと食べないと大きくなれないのに。お菓子だけは別腹だけど。
まだ夜中、か。このままダラダラしてても眠れないだろうし、今日の予習でもしておこうかな。
週末は文化祭。錬金術で創った作品の展示と、即売会。二人ずつ3交代でやって、夜は舞踏会。何度か練習して、どうにか踊れるようになったけど、ちょっと憂鬱。着慣れないドレス姿に、何ていわれるか。ダグラスは絶対からかってくるだろうな。エリーもアイゼルも褒めてくれたけど、子供用のドレスだし…って仕方ないけど。胸も何もないから。
「イリス、すごく可愛いじゃない。アイゼルの?」
「うん。もう着られないからくれるって…変じゃないかな?」
「全然。レンさんも喜ぶわよ」
「どうしてレンが喜ぶの?」
「ふふっ。私のは変じゃないかしら?胸がきつくなっちゃって、去年のを手直ししたんだけど」
「シスカさんすごく綺麗だよ。大人の女性って感じ」
「ね、折角だから薄くお化粧してみない?やってあげる」
「うー。じゃあちょっとだけ。時間もないし」
広場に行くと、皆思い思いに着飾って、とても華やかだ。マイスターランクの集合場所に行くと、もう皆集まっていた。
「うを!馬子にも衣装」
「ダグラスこそ、服に着られているよ。ミーアちゃんも綺麗!尻尾が隠れちゃうのが残念だけど。レンは言うまでもないけど、エンデも身長高いから、決まっているね」
レンは、いけないと思いつつも綺麗になったイリスから目が離せない。
「レン様~!今日は邪魔な結界もありませんし、存分に二人でいられますわね!…って、何処見ていらっしゃるんです?」
「君のそういう格好って見慣れてるし、それよりはみんなの方に目が行くのは当然だろ?」
「まあ、何ですの?そんな胸を強調したデザイン。下品ですわ」
「わざわざ強調しなくても、あるもの」
「子供用のお古でも、お前には分不相応よ」
「子供だから、子供用なのは仕方ないし」
「イリスと比べて優越感に浸らなきゃ、自信持てないのかしら?」
「何ですって!庶民の分際で。エルフは山にでもこもっていればいいのよ」
「ハーフだもの。それにまだ、ダンスは始まってないんだから、3年生の集合場所に戻ったら?」
「そこ、何を揉めているの?あなたは向こうでしょ?シスカも、挑発しないの」
「因縁つけられてただけなんですけどね」
それと、イリスを守る為。レンさんたら本当に目が離せなくなっちゃっているんだもの。まあ、気持ちは分かるけど。
「姉さん、ありがとうっす」
「お礼なんて。私だって頭にきたもの。ミーアも綺麗なのにね」
「私は獣人なんで、眼中外みたい。お陰で気楽かな」
ダンスが始まり、イリスは、3年生達と踊っている。レンを独占していたエリザベートは、レンと踊りたがった双子とちょっとした争いになり、転んでドレスを汚してしまい、怒りながら帰ってしまった。
「エンデさんは、踊らないの?」
「こういうのは、苦手だ」
「イリスとは踊ってたじゃない?身長差があり過ぎて、見ていて面白かったわ」
「あれは仕方なく。変な方にばかり気を回すから」
「苦手でも、同級生のよしみで一曲踊らない?」
「わ、私とか?…下手でよければ」
やっと双子から開放されたレンが戻ってきた。
「ダグラスは、踊らないの?」
「モテる奴にいわれたかねー」
「こういう時は、男性から誘うんだよ」
「あー。まあ玉砕してくるか」
イリスはさすがに人気者だな。誘いたいのに。
「あー、疲れた。あ!やっとレンの事誘える。踊って?」
「僕と、踊りたかった?嬉しいな」
「どうせならみんなと踊りたいし。マイスターに進まない人は、今年で最後だからって。でもみんな身長高いから、疲れる。レンはまだ小さい方だから」
「そんな理由か」
「?でもレン、さすがに上手だね」
「一応必須技能だから。最後の曲だね。このまま、いい?」
「うん。こういうゆっくりした曲って、ダンスっていうより、抱っこされてるみたい。嬉しいな」
「抱っこが嬉しいの?」
「あ、今子供みたいって思った?ちょっとした憧れ。私、お母さんに抱っこされた記憶がかすかにある程度だから」
「そう。甘えたい時は、僕に甘えていいよ」
「嬉しい。本当にレンて優しいね」
流石に少し罪悪感を感じるな。子供を騙しているみたい。歳は三つしか離れてないんだけどな。
まさかここまで甘々に…苦手な人は、流して下さい。
謎の幼女出現です。姿は7歳位。でも実は




