表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の魔術師?!  作者: 暁瑠
33/61

登山実習 1

 シグザールの北には、休火山であるビラン山と、それに連なる連峰が国を隔てている。アカデミーのマイスタークラスは毎年、採取と実戦の経験を積む為、二泊三日の宿泊実習がある。今年の2年生は、フィリアとフィーナの、双子の天災級錬金術師で、爆弾製造が大得意。可愛いものが大好きで、イリスは殊の外気に入られている。

 馬車は二台に別れて、双子とイリス、シスカが一緒だ。

「残念、レン君には断られてしまいましたわ」

「可愛いレン君と、イリスちゃんを一緒に愛でたかったのに、残念ですわ」


「あの、先輩方、レンはエンデと一緒の方が良いと思うし」


「嫌よイリスちゃん、お姉様って呼んで?」

「そうよイリスちゃん、お姉様よ?」


 いつもこんな調子で、流石にイリスもペースを乱される。


 もう一方の馬車では、早朝という事もあって、ダグラスは大いびきをかいている。


「レン様、気軽に行きましょうよ」


「ヴォルト殿の事は、今は考えても仕方ないですし、更迭なさるにしても、他貴族との関係も洗っておきませんと」


「やっぱり強引にでも、イリスちゃんこっちの馬車に攫って来ちゃえば良かったですかね」


「…あの双子は苦手だ…」


 エンデはため息交じりに言った。


「僕も。どうしてこうみんな、僕を子供扱いしたがるのかな」


「恋愛に疎いからでは?」


「僕の立場で、気軽に恋なんてできるわけないだろう」


「じゃあ例えば、イリスちゃんに告白されたらどうします?」


「いや、それ以前にあり得ると思う?」


「…無いですね。済みません、隊長」


「私に振るな。…では誰かがイリスに告白して、恋人が出来たらどうしますか?」


「何でさっきからイリスな訳?…あんまりそういうイメージ無いよね。そもそもイリスと恋愛が結びつかないし」


「あり得なくはないと思います。見てくれはそれなりに可愛いですし、相手がダグラスで無ければ案外簡単に頷くかもしれません」


「所で、何故こんな話に?」


「それは…いえ」

「手強いっすね、隊長」


「その呼び方は止めろ、ミーア。ダグラスに聞かれたらどうする」


「別に、役職が付いたからって学生やってちゃ駄目って事はないし、去年からだし。仕事だって」


「それでも、親衛隊はないです。それでも、イリーナ隊長に文句は言えませんが」


 前親衛隊長はまだ仮騎士だった自分を親衛隊に引き抜き、ミーア、カミルと共にアカデミー内での殿下の護衛の為、学生にし、子供が産まれる為、だまし討ちのように一番の新参者である自分を隊長にした。そして、過去に一人だけ、月の魔力を絡めた技、月光乱華を破った人でもある。


「イリーナか。懐かしいな」


「同じ女として、絶対勝てる気がしないっす」


 馬車が止まり、2年生の担任教師のブラッドが小窓から顔を見せる。

「そろそろ誰か、代わってくれないか?」


「あ、ハイ!私が」


 ミーアが下りると、隣の馬車もイングリット先生とシスカが交替するようだ。


「シスカ姉さん、よろしく!」


「あら、男達は誰も出てこないの?」


「ダグラス君は寝てるし。でも丁度良かった。相談があって」



 途中、麓の町で一泊して、いよいよ登山だ。5合目にある宿泊施設まで、上らなければならない。

「レン、何かぐるぐるしてる?」


「え?」


「何か悩みでもあるの?そんな顔してる」


「そう?悩みなさそうでいいね、君は」


「えー?悩んでるよ。身長の事とか。一番悩んでなさそうなのは、ダグラスだよ」


「あ?俺だって一応…セシルの事とか」


「7年も音信不通の妹さんの事?怪しい」


「おめーだって身長とか、不毛な悩みしかねーだろうが」


「不毛じゃないもん!切実な悩みだし」


「お前たち、先生の雷が落ちる前に止めておけ」


「お…おう」


「とにかくレン、悩みなんて、ファイアーリザードとか、レッサーデーモンとかぷち倒して、吹っ飛ばしちゃえ!」


「イリス、一応言うけど、それはこの国でも最強の部類の魔物だからね?」


 まあ、イリスにかかれば、雑魚と一緒かもだけど。



「先生、これって、戦士系以外には不利な実習、では?」


 レンは、早くも息が上がっている。その隣を歩くエンデは、涼しい顔をしている。


「毎年登らなければならない先生より、ましです」

「…あー、ご愁傷様、です」


 近寄る魔物は、エンデが危なげなく倒してゆく。まだ、着かないのか。


「あ、まーだこんな所にいた。もうすぐだよ、ほら、頑張って」


「イリス、もしかして、戻ってきたの?」


「うん。早く来ないと、お昼ごはんなくなっちゃうよ」


 イリスは、レンの腰を押す。


「ちょっと、早い、よ。ていうか、体力ありすぎ。魔法師なのに」


 飛んできたレッサーデーモンを杖の一振りで退け、魔石と必要部位だけ取り、ポイ捨て。


「レンも、ちょっと鍛えたら?」


「君は戦士でもいけそうだけど」


「え?剣なんて、重くて持てないよ。ほら、着いた。コップ取って来るね!」


 あっという間に走り去るイリスを見て、少しは鍛えようかと本気で思ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ