丸くて可愛い物
次の日。イリスはノートいっぱいに何やら計算したりして、忙しそうだった。
「もしかして、錬金術?この時期だと、賢者の石とか」
「今年は挑戦してみるつもりだよ」
「じょ、冗談で言ったつもりだったけど、創れるんだ?」
「分かんない。今年初挑戦だし。賢者の石はレシピがしっかりあるから、これは別の、オリジナルアイテム。どんなのかは内緒だよ」
「えー、イリスってほっとくと、何かとんでもない代物創ってそうで、怖いんだけど」
「怖くはないよ?可愛いの」
「いやイリスちゃん、そっちの怖いじゃ無いと思うな」
「どうせ、丸いモノだろ?」
「何で分かるの?」
「そりゃおめー、丸い鳥とか猫とか雑貨屋の人気商品だし?丸い花とか見かけると、必ず触ってるし」
「…何も言い返せない…」
「知ってる。それ、色々効果があるんだよね。集中力を高めたり、安眠効果があったり。私は、心が落ち着く香りのを買ったよ」
「そうなの?言ってくれれば創ったのに。シスカさんのはまだ香り、残ってる?」
「ええ。熊をあんなに可愛いくしちゃうなんて、イリスは凄いわね」
「エンデもいる?」
「要らない」
「レンは?可愛いのが嫌でも、効果はちゃんとあるよ?」
「えっと、…丸くなくてごめんね」
アイテムボックスから、ねこを取り出す。
「わ、可愛い!」
「あらそれ、レンさんが選んだの?案外イリスの事、よく見てるのね」
「おー。確かに。どっか抜けた顔といい、でっかい目といい、そっくりだ」
「でもレン様、女性のプレゼントにはちょっと」
「似てるかなぁ?でも、くたっとしてて、可愛いし、凄く嬉しいよ!レンは誕生日いつ?」
「2月だけど、気にしなくていいよ。大した物じゃないし」
「はいはーい、私8月!」
「エンデは?」
「5月だ。別に何も要らないぞ?丸いモノは特に。マジックバックも貰ったしな」
「過ぎちゃったんだね。残念」
「本当に気にするな。それよりも、授業が始まるぞ」
エンデと可愛いモノ…似合わないな。鬼の親衛隊隊長が丸いモノ…ぷくくっ
それにしても、冗談で買ったのに、あんなに喜ばれるなんて、罪悪感が…女性への贈り物として買った訳じゃないけど、イリスにはお世話になっているし。
夏休み少し前に、イリスが持ってきたのは…スライム?!
「!ちょ…いくら可愛いからって、魔物は」
「えへへ、騙された?これ、核を特殊な液体と混ぜて培養させたの。氷魔法で凍らせてもカチカチにならなくて、冷たいままで一晩位は持つんだよ。寝苦しい夜も、これで安心」
「どうでもいいが、顔は無くせないのか?」
「あはは、先生と同じ事言われちやったねイリスちゃん」
「一応培養中に分離させられるけど、顔がポイントなのに」
「強度は?破れたりしない?」
「押したり、引っ張った位なら破れたりしないよ?流石に武器で攻撃したら駄目だけど」
「よく伸びるね」
「帽子にもなるよ。暑い日は、熱中症対策にもなるね。今から沢山培養して、夏休み迄にはある程度数を揃えるつもり」
「なるほどね。…これ、レシピを買い取ってもいい?君が創って売るのは制限かけないから」
「そんなに気に入ったの?みんなのは、創ってあげるのに」
「是非顔ナシで頼む」
「…男の人には、可愛いのは駄目なのかな?」
「レシピも、顔を分離させられる方向で」
「何か釈然としないけど、いいよ。広めてくれるなら、みんなが助かるしね」
旅行代自体は、賢者の石を売った代金で賄えそうだしね。
イメージは、アイスノンです




