表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の魔術師?!  作者: 暁瑠
25/61

散歩と教会の事

 休みの日は大概仕事で潰れてしまうけれど、夕べ頑張って書類仕事をほぼ終わらせてきたので、今日は趣味の一つでもある散歩を楽しむことにした。夕べまで降っていた雨が止んで、所々に水たまりを残している。レンの半歩後ろを歩くエンデも、ゆったりと流れる時間に、少しだけ表情を緩めている

「あ、これ…ふっ」

店先に置いてあったねこのぬいぐるみを手に、レンはくすくす笑う

「ね、これ、誰かにそっくりだと思わない?」


「イリスですか?確かに。何も考えてなさそうな、呑気そうな雰囲気が、そっくりですね。大きな目も」

「だよね。確か、今月の19日が誕生日だったよね」

店員に言って、包んで貰う


「理由を知ったら、イリスは怒るのでは?」


「そしたら、ケーキとかお菓子でごまかす。楽しみだな」


「…はぁ」


「んー、そういえば、誰かに誕生日プレゼントを贈るなんて、初めてだな」


「そうなのですか?…あなたが初めてプレゼントを贈る相手がイリスでいいのですか?」


「そんな大層な事じゃないだろ?相手は子供だし」

「それは、そうですが」


レンはプレゼントをマジックバックにしまう


 丁度ギルド兼酒場の前を通りかかった時、聞き覚えのある声が聞こえた

「じゃあクーゲルさん、またね」


扉が開いて出てきのは着古したローブ姿のイリス


「あれ?レンにエンデ、どうしたの?」


「散歩中。イリスは依頼?」


「うん、お酒に混ぜるシュワシュワ水の納品だよ。体売ったりお酒飲んだりはしてないよ?」


「誰も疑っていないし、そもそも欲しがる奴などいるものか」


「今の発言、超失礼だよ、エンデ。最近よく声掛けられるんだよね。あんまりしつこい人は、魔法で伸しちゃうから平気だけど。孤児だからって、そういう事しないと生きていけない人ばかりじゃないんだから」


「むしろ、その声をかけた連中に同情するよ。並の冒険者じゃ、全く敵わないだろ?」


「今はDランクだけど、実力的にはBランク以上って言われてるよ。子供だからこれ以上は上げられないけど」


「むしろAランクでもおかしくないけど。エンデと対等に戦えるんだから。所で何処に向かっているの?採取?」


「ううん、教会。シュワシュワ水に果実水を混ぜたの、沢山創ったから」


「ついて行ってもいい?」


「いいけど、貴族の人だってバレないようにしてね」

「分かってるから、大丈夫」


 愛と豊穣を司る女神フォルトゥナを祀る教会は、南外周部。所謂スラム街の一角にあり、身寄りのない子供達や、お年寄りが多数身を寄せている。

「随分劣化が激しいな。首都の教会は、一定水準を満たすように予算配分されているはずだけど」


レンはエンデにだけ聞こえるように呟いた


イリスの後を追いかけて教会に入ると、子供達が集まってきた。


「イリス姉ちゃん、芋取り行くの、手伝って。昨日が食べられない日だったから、みんな腹ペコなんだ」


「イベントリから、オーク肉の燻製と、シュワシュワジュース出しておくから、みんなに配って?私は薬の補充してくるから」


イリスは何もない空間から次々と食べ物をだす。と、見覚えのあるパンもでてきた。給食で出たものだ

騒ぎに気が付いたのか、神父が奥の部屋から出て来る

「神父様、私、薬の補充しちゃいますね」


「いつもありがとう。彼らは?」

「友達だよ」


イリスは、奥に進む


「あの、何故あなたがここに」


そういえば、年1回の聖職者会議に何度か出た事があったっけ。それに神父は、ドルニエ学園長と仲がいいと聞く。


「イリスと友達だから。何か?」


「イリスの事は…いえ」


「イリスが、なに?」


丁度イリスが出て来た


「レン?エンデ?どうかした?」


「さっき、給食のパンが紛れてなかった?」

「バレたか」

「ちゃんと食べないと、身長伸びないよ?」

3人で外に出る


「あのさ、食べられない日って何?」


「そのまんまだけど?まあ、今はまだましな方だよ。去年とおととしの報償金とか、マジックバックもレンに買って貰ったし、子供の人数も一時期よりはへってるし。私が小さい頃はもっと酷かったよ。一日に芋1個とか」


「でも、監査の人間が行ってる筈だけど?」


「そういう時は、外に出てなきゃだし。酷いよね。汚いんだってさ」


「…ごめん。今は力になれない」


「別にいいよ。予算とかそういうのって、大臣とか偉い人が決めているんでしょう?あの人のお父さんが、まともだとも思えないし」


「外面がいいんだよ。父上はすっかり騙されている。僕は昔から嫌いだったけど」


「親同士が仲良しだから、エリザベートが何か必死な感じ?レンはどうして素っ気ないの?」


「嫌いだから」


「うーん、でも、偉い人とは仲良くしなさいって言われない?」


「そこまで強制するような父じゃないよ。僕の気持ちは分かってくれてるから、結婚相手は強要しないし。まあ、早く決めろとは言われているけど」


「まだ子供なのに?」


「二月で15になったんだけど」


「えー。何かずるい。裏切られた気分」


「何それ。君は今度10歳?」


「13!本当は大人になってから卒業予定だったんだけど、1年すっ飛ばしちゃったからなー」


「歳も何年かすっ飛ばしてそうだな」

エンデの言葉に思わず吹き出すレン


「え?エンデ何?上の方で呟かれても聞こえないよー?」

「まあ、聞こえない方が、いいこともあるよね」


「?まあいいや。大人になったら、好きな人出来た?」


「は?何それ」


「シスカさんがね、誰かを好きになる気持ちが分からないのは、子供だからって」


「そういうのって、年齢関係ないと思うけど。僕に好きな人が出来たのは、随分昔の話だし」


「えー!」

「初耳です。どなたですか?」


「失恋で終わっちゃったから、教えない。もう結婚して子供もいるし。焦らなくても、こういう気持ちって、自然と分かるものだから」


「そうなんだ。…いいな。もし結婚できたら、家族になるんでしょう?」


「なんだ。イリスにしてはと思ったけど、家族が欲しいんだ?」


「駄目?だって神父様はみんなのお父さんだから甘えられないし、淋しくても泣いたらみんな泣いちゃう。だから…。レンの両親て、どんな人?」


「母は僕が小さい頃に亡くなった。父は…人の事からかって遊ぶのが趣味みたいな人だからな」


「お父さんの事、好き?」


「まあ、普通?」


「普通、か。みんなそう言うよね。…別に、羨ましくなんかないもん。ほんの少ししか覚えてなくても、ちゃんと優しかった事覚えているから」


学園がみえると、イリスは走って行ってしまった。二人は北に進路をとる。


「例の件、調べてみますか?」


「うん、慎重に頼むよ。うまくすれば娘を押し付けられずに済む」


「では、親衛隊のみで動きます」


「他にも何かあれば探っておいて。焦る必要はない。僕の卒業までにやっておいてくれればいいから」


「ではそのように」


「頼んだよ。隊長さん」


エンデは、一般人のふりして離れていた人に何か話し、足早に去って行った。やがて近づいてきた狐耳と、レンは残りの散歩を楽しんだ






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ