マジックバックとダグラスの事
五月末は国王誕生日で、国民の休日になっている。
「ねえねえ!お菓子の日、みんな一緒にいかない?」
「お菓子の日ではなく、国王誕生日なのだか」
その日は城門が解放され、城のベランダからカカオの実を使った特別なクッキーが王族の方々の手によって、蒔かれる。
「その日は仕事だ」
「あ、私もー」
「そっかー、騎士だもんね。レンは?」
「ええと、僕も忙しい、かな」
蒔く方、だし
「知らねーのかイリス、貴族は王様とか王子様から直接貰えるらしいぜ?」
「ごめんね、ずるしてるみたいで」
「別に?ちょっとだけ足元強化して、ジャンプして落ちる前にゲットするのが楽しいんだし」
「じゃあ今年も、お馴染みのメンバーだな」
「ふっふっふー。今年は一味違うよ!じゃーん」
「ウォルフの革で出来たバック?」
「マジックバックだよ!」
「凄い!確かそれって、プロの錬金術師でも創るの難しいって聞いたよ?創る本人もアイテムボックスの魔法使えないとだめって言うし。使えるの?」
「上位のイベントリも使えるよ。魔力馴染ませる必要あるから、時間はかかるけど、まだ一ヶ月あるし。ダグラス位の魔力でも、見た目の三倍位は入るはず。シスカさんもはい、これで大量ゲット間違いなしだね!」
「お菓子の為にそんな凄い物作ったのかよ…恐ろしいな」
「イリス?期待させて悪いけど、そもそもそんなに拾えないと思うのよね。運が良ければ一個位は拾えるかも知れないけど」
「確かに。売って違う物買った方が良くねーか?」
「うー、意地悪!」
「ね、イリス。因みに僕が持つとどれ位入るのかな?」
「レンなら、この教室の倍は入ると思うよ?ていうか、アイテムボックス使えない?それと同じ位の容量だよ」
「中々難しくてね」
「なら今度、コツを教えてあげるね。いつも勉強教わっているお礼に。エンデとミーアちゃんにもその内創ってあげるね」
「私たちまで?いいの?」
「ウォルフは近くの森にいるし、魔石も小さいので充分だから、いいよ。盗まれ無いようにだけ注意すれば…って、騎士の人から盗む馬鹿は居ないか。不安ならマジックバックだってばれないように使えばいいだけだし」
「因みに注文したら、いくら位で売ってくれる?」
「見た目がコレだから貴族の人が持つのには向かないと思うよ?アイゼルにも要らないって言われちゃったし。レンは駄目。弱いから」
「酷いなぁ。僕はちゃんと、アイテムボックス覚えるよ。知り合いに渡したい。20個位?」
「今の相場は、金貨5枚位でしょうか?」
「マジかよ?!そんなもん貰えねぇ!」
「私も、半年分の生活費とか、無理だからね」
「気にしなくてもいいのに。創るの難しいってだけで、材料費は殆どただなんだから」
「これの三倍の荷物位なら余裕で背負えるからな」
「重さも無くなるよ?」
「じゃ、使いたい時に貸してくれ」
「だから、自分の魔力に馴染ませるのに時間がかかるんだって。それしないと、ただのバックなの。じゃあ、どうしても嫌なら、ウォルフ狩って、革なめして。あと魔石ね」
「お、おう…俺が騎士になったら、出世払いで買い取るからよ」
「おや?ダグラス君は、騎士目指しているのかな?確かカリエル出身だったよね?」
「俺さ、あの青い鎧に憧れてるんだ。他国の平民じゃ、兵士止まりだろうし。だからアカデミー入ったんだ」
「同じ物着ても中身が…まあいいや。でも門番て、儲かるの?」
「はあ?!何だよその門番て。あ、いや、城に不審者が入らないようにするのも立派な仕事だけどよ、まさか…」
「うん、なんとなくだよ。いいじゃん?いっつもイングリット先生に立たされてるんだから、慣れているでしょ?」
「うおー!またなんとなくの呪いかー!俺だって、事件解決とか格好いい事したいのに」
「無理無理。門番決定ー!」
「ちくしょー!!」
「でも、逆に考えれば、騎士にはなれるって事じゃない」
「努力すれば、だよ?来年マイスターランクの2年生になれる事が、前提条件だから」
「厳しいわね。でも当然ね。望んだからって簡単になれるものじゃないもの」
「ダグラスが門番か。でも君、貴族は嫌いじゃなかった?」
「俺が嫌いなのは、何もしてないのに権力ばっかり振りかざすエリザベートみたいな奴。心配しなくても、レンの事はちゃんと守ってやるぜ?友達だもんな!」
「あ…りがとう」
「なら、か弱い国民も守ってよね」
「はあ?!おめーのどこがか弱いって?手強いの間違いだろ」
「誰も私の事なんて言ってないし。将来旅に出た時に、みんなの事守って欲しい」
「あー、だけどよ、門番じゃ出来る事も少ねぇだろうけど、俺も神父様には世話になったかんな。たまの様子見位なら」
「充分だよ」
お菓子の日は次に持ち越しです




