来年の事
冬休み目前のある日。イリスは、学園長に呼ばれた。
「もし退学だったらどうしよう!」
「心当たり、一杯ありそうだね」
エリーは呑気に笑って応えた。
「でも夏の一件なら私も怒られると思うよ?」
「国立の学園で、備品を沢山壊しているのもね。貴女、錬金術の腕はいいのに、どうでもいい調合で失敗して、爆発する筈のないモノをさせて機材壊すから」
「廊下走ったりとか?…あ、寮の部屋の惨状をしられた?」
「知られたらヤバいよね…」
「退去させられるかも」
「貴女の部屋はどうなっているの?今度行かせて貰うわ」
「…いいけど、気絶しないでね?あぅ、放課後が怖いよ!」
「なんとなくで分からないの?」
「なんとなくは万能じゃないし、自分の事は殆ど判らないんだよ」
「とにかく、ちゃんと謝りなさい?部屋の汚さが原因で流石に退学はないと思うけど」
放課後、戦々恐々としながら学園長室に行く
「ごめんなさい!」
先制攻撃で、とにかく謝ってしまう
「また何か、やったのかね?」
学園長の隣にはイングリット先生もいる。
「えっと…心当たりは沢山あるんですけど…あれ?もしかして私、怒られない?」
「今日呼んだのは、飛び級をして来年マイスターランクへ行く気はないかと聞きたかった」
「ふわあ…私が、マイスターランクに。そっか…その方が給食代とか1年分お得ですよね」
「…学園長、本当にこの子大丈夫なんですよね?あのね、イリス。これはたいへん名誉な事なのよ?実力は勿論、勉強もついて行けると判断されたからなの。勿論、こちらでもできるかぎりのサポートはします。この話、受けて貰えるかしら?」
「エリー達と別れるのは淋しいけど、虐められなくなる、かな?…分かりました!私、もっと錬金術を勉強したいですし、頑張ります!」
イリスが出て行き、イングリットは学園長と二人、残った
「来年は、より大変になるな」
「元々、マイスターランクまで進める子は個性的な子が多いですから。あの方の担任になるのは分かってましたし、イリスが居れば、より要望に応えられるかと」
「あの呑気さが、あの方には必要だろう。疑う事を知らない素直さや、裏表ない純粋な心」
「単に子供なだけとも言いますけど」
これでダグラスまでマイスターランクに上がったら…心労で、胃に穴が空きそう




