指輪の顛末
夏休みが明けて、イリスはエンデを探して図書室に来た。居るのはいつもの仲良し4人で、エンデ、狐獣人のミーア、カミルとメガネのレンだ
「あの、エンデ先輩…ちょっと大事な話しがあって」
「何だ?」
「…ええと」
「エンデ君たら、行きなさいよ!女の子に恥かかせちゃダメよ!」
「へぇ。こりゃ意外。こんなに小さくても女の子だ。正直、何でエンデばかりがって思うけど」
「悪いがそういう話しなら聞いてやれない」
「あの、そういう話しって?」
レンが吹き出す
「何というか、まあそうだろうな。で?」
「えっと…騎士の人に聞いて貰った方がいいかなって」
「うん?私もカミルも騎士だから安心して。レン様は大丈夫だから」
イリスは、鞄から本と小箱を取り出した
「うん?古いけれど、綺麗な指輪ね」
「手記…のような物でしょうか?イリス、これをどこで?」
指輪を見たレンの顔がふと厳しくなる
「えっと…偉い人に渡して欲しいって頼まれて」
「誰に?何所で」
レンの問い詰めにイリスの目が泳ぐ
「し、知らない人」
「何所で?これは、その辺に出回っていい物じゃないんだ」
「ええ~」
「イリス?こんな大切な物を、初対面の子供に渡すなんて考えられないんだ。それとも君は、牢屋に入りたい?」
「!や、やだ!…夏休みに、ダグラスとシスカさんとエリーと一緒に、東の大地に採取に…ごめんなさい。幽霊の出るお城を探検しに行って、そこで、知らない人…じゃなくて幽霊の人に、これを隠してある場所まで案内して貰って、本当は王様に渡して欲しいって言われたんだけど、私なんかが会える訳ないし、エンデ先輩なら聖騎士だから、お城で王様にも会えるかなって」
レンは溜息をついた
「本当かどうかは証明出来ないけど。アルヴィンさんは成仏しちゃったし、他のみんなには、声も姿も見えて無かったみたいだし」
「アルヴィンね…。アルヴィン ラーグか」
「苗字は知らない。けど、それって50年位前の領主様だよね?歴史で習った」
「そうだよ。これは行方不明になってた領主の指輪。子供の居なかった彼が、傍系の人間に跡目を継がせないために、何処かに隠したとされていた。…全く、君には毎回驚かせられるな」
「…牢屋に入らなきゃ駄目?」
「は?」
「だって、立ち入り禁止の場所に入ったから…捕まる?」
「捕まえないよ。素直に渡してくれたし。ていうか、あそこは本当に危ないから立ち入り禁止にしてあったんだよ」
「…ごめんなさい」
「ちなみに何所で見つけたの?」
「奥の壁の上の方にあるレンガを押したら出てきて、でももうお城、崩れちゃったから。見送ってくれたアルヴィンさんを浄化したら」
「役目を果たした…って所かな。分かった。ちゃんと王様に渡しておくから…あんまり無茶しちゃ駄目だよ。まだ子供なんだから」
「レン先輩だって、子供でしょ?」
「僕は2月で15だよ」
「えー。みんなよりちっちゃいのに?」
ミーアさんと、同じ位かな?
「その辺は遺伝かな。父上が僕と同じ位だから」
「なら私、レン先輩になら勝てるかも!私のお父さん、周りの人たちより大きかった気がするもん!」
「へぇ?ならあと20センチ位伸びなきゃね。せっかく大きい制服用意したのに、無駄になるね」
「レン先輩て、大人しいイメージなのに、結構意地悪?」
「子供相手に構えても、仕方ないからかな?君と話していると楽しいし」
「先輩は、まだ子供なんだから子供扱いしちゃ駄目なの!…うぅ、みんなして笑って酷い」
何も知らない人と、こんな風に話せるなんて。アカデミーに入って良かったな




