オークは美味しい
ザールの街を囲む塀を抜けて一時間程東に歩くと、国民の主食であるテトポ芋が年間を通して沢山自生している。イリスは、教会の子供達を連れて採取に来ていた。みんな泥だらけになりながら掘り出した芋を籠に入れていく
気配感知は常にしていたけれど、自分中心な為、少し離れて採取していた女の子たちのグループから悲鳴が聞こえて、慌てて立ち上がる。
「ぶたにく~!!」
女性の天敵でもあるオークに、イリスは、嬉々として向かって行く
追尾機能の付いたホーリーを杖の一振りだけで放ち、5匹いたオークの頭を撃ち抜いた。パキッと軽い音がして、杖に取り付けてあった魔石がわれた。嬉しくてつい、魔力を込めすぎてしまったのだ。1匹だけ濃い色のオークがいる。オークジェネラルが混ざっていたらしい
「ラッキー。ね、解体手伝ってよ」
オークジェネラルは、革も売れるし、肉も良い値で売れる
「絶対嫌!肉がおいしいのは分かってるけど、たとえ死んでても触りたくない」
女の子たちは遠巻きに眺めているだけだ
仕方なくイリスは、最近覚えた無属性の空間魔法、イベントリに魔石だけを抜き取り、仕舞う。アイテムボックスと違い、時間が止まるので肉が腐らずに済む。序でに沢山採取したテトポを籠ごとアイテムボックスに仕舞う
「芋はこれだけあれば当分保つね。肉も沢山だし。ジェネラルはお金に換えちゃうけど、いいよね?」
「イリス姉ちゃんが狩ったんだから、好きにすればいいよ。てか、姉ちゃんの魔法の前には、ジェネラルも瞬殺なんだね」
「一応言っておくが、オークジェネラルはCランク以上推奨だからな。Fランクで狩って来るな」
溜息混じりのディオさんの言葉に
「だって、美味しそうな豚肉が歩いて来るんだもん」
「…はぁ。とりあえず今回でEランクに上がったが、お前さんにはまだまだランク詐欺だな。だが15歳まではDランク迄しか上げられない。ギルドのルールだからな」
「分かってまーす!杖も直さなきゃだし、しばらく大人しくしてるよ」
アカデミーの寮に戻ると早速魔石の錬成を始める。すべてを融合させると、今迄より色の濃い魔石が出来た
「もしかして、魔晶石が出来たかな?…うん、強度も高いし、魔力も結構保持出来る。いい杖になりそう」
とは言え、本気で魔力込めたらこれでも保たないかも知れない。魔力が高すぎるのも善し悪しなのだ。更に上の魔宝石が出来ればいうことないけれど、今の私の錬金術レベルでは出来そうにもない
。それを材料に使う賢者の石なんて、作れるのはほんの僅かな人達だ
イベントリ内には、まだ3匹分のオーク肉が入っている。腐らせないためだか、これだけあるんだから、一匹分は保存食にしようかな
一口大に切って塩とハーブを揉み込んでアイテムボックスへ。味が染みこんだら燻製にすれば出来上がりだ
作っていたらお腹が空いてしまったので、熱々の一欠片を口に入れる
「おいひい~!」
女の子を狙う最低の奴だけど、大きいから魔法も絶対外さないし、イリスにとっては魔物は魔物。しかも美味しいのだ。しっかり狩る。それだけだ




