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泉の女神  作者: 徒然花
月の石を求めて
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満月の日

『月の石~』編、やっとラストです(^^)

毎月の定期検診的なものは、王都からわざわざ魔女様がやってきてくれる。私一人のためにとか思うと恐れ多いんだけど、


「なーに、散歩がてらよ」


と、言ってくれるのですっかり甘えてます。散歩とか言いながら転移の魔法でポン! なんだけどね~。

普通、村人さんが検診を受けてきたのはお婆さまなんだけど、最近お婆さまは、


「女神様が来て下さったおかげでようやく廃業できるわい」


と、ご隠居生活をエンジョイしている。イイ御身分だ。自分が妊娠するまでは私が妊婦さんの検診をしていたんだけど、さすがに悪阻ながらはできなくて、お婆さまを無理矢理引きずり出してきた。妊婦さんの検診以外は、シエルが診察をしてくれている。

王都の魔女様のところでしっかりと修行をしていたおかげで、かなりいい薬師に成長している。オネーチャンはうれしいよっ!


ついでに家も着々と改装されている。

ラルクとお義父さまの構想通り、元ラルクの部屋だったところが、すっかりかわいらしい子供部屋に模様替えされてしまった。白と淡い黄色を基調としたその部屋は、男子でも女子でもどっちでもOK! な感じで素晴らしい。

リフォームは、村の大工さんが嬉々として作業してくれた。ありがたや。ベッドや家具も大工さんたちの作。布団やその他のファブリックは村のマダムや娘さんたちの合作。

みんなの愛を感じましたとも!!



そんなこんなでいよいよ臨月。

ハード面はすっかり準備が整っていた。後は私のメンタル面だけか?


今日は満月。

みんなの満月! 子供が生まれやすい日とされている。大潮かどうかは知らないけどね~。


起きた瞬間から張りは感じてます。つーか、張りの痛みで目が覚めた。


「うう。ちょっと痛いかも……」


張りの痛みに思わず声が漏れる。するとすぐに、


「大丈夫か? 痛むのか?」


ラルクが目を覚まし、顔を覗きこんでくる。朝から見ても美形ですね☆ なんて痛みからの逃避だわ。


「えーと、まだ間隔が開いてるので、運動したほうがいいと思いますが、そろそろではありますね」

「そうか。わかった」


時折強い痛みが来る。が、まだ間隔は長い。

う~ん、促進するために薬草摘みにでも出かけるか。


「だから、薬草摘みには行きましょう。ちょうどいい運動ではあると思いますので」

「無理はするなよ?」

「もちろんですよ」

「約束だぞ?」

「はい」


そのまま引き起こしてもらい(お腹が邪魔で起きにくいのだー)、支度を整えて森に向かった。




「あいたたたたた~~~!!!」


森に入ってしばらくは何事もなく薬草摘みをしてたんだけどなぁ。しゃがむ体勢が悪かったのかなぁ? 今日は倒木が多くてやたらに踏み越えたのが効いたのかなぁ?

とりあえず急転直下、どうやら産気づいてしまったよ。

今朝の自分の見立ては甘かったのね。とほほ。っつーか、そもそも私は産婦人科のナースじゃないもんっ! と、開き直ってみたりしても、この状況は変わりません。はい。


痛みに蹲る私に駆け寄るラルク。


「ミカっ!! 生まれそうなのか?!」

「ううう~。そうみたい。ったたたた」


こういう時は息を止めてはいけない。いきみを逃すためにも呼吸をしなければならないのだ。ソフロロジーとか言ったっけ? ああ、ごめん、うろ覚え。

ふぅぅぅ、とゆっくり息を吐き出す。


「少し耐えろ。すぐに帰ろう」


ラルクは私をすぐさま横抱きにすると、慎重かつ迅速に家へと向かって歩を進めた。

私はその腕の中で朦朧ですわ。ゆらゆら揺れてるのくらいしか解らない。あまりの痛みにぼんやりするばかり。ああ、おかーさんて、こんな痛みに耐えて子供産むんだねー。実感して改めて有難味を感じるわ!


「は……い……ぐうっ……」


自分で何を言ってるのかもさっぱりわからんわっ! 痛くて脂汗が滲んできたよ……。




私を家に連れ帰り、ベッドに寝かせてすぐさま。ラルクは王都の魔女様を呼びに行ってくれたらしい(シエル談)。シェンロンかっ飛ばして10分で着いたらしいよ! すげーよ!  ラルク! スピード違反とか、ないよね?




どうやら私は安産だったみたいだ。美樹ちゃんは一昼夜唸ってたのにね☆


魔女様が到着してすぐ、私はツルンと男の子を生みました。もうほんと、ツルン、て感じでしたよ? あまりの呆気なさに『おや?』と内心思ってたら、


「そこは魔女の手助けだよ。母子共に健康じゃなかったら、あたしゃここの村人に殺されるよ」


と、魔女様は茶目っ気たっぷりに言いましたさ。


「ありがとうございました。ふふ、かわいい」


綺麗にされた我が子は、おむつだけされて、そのまま私の胸の上に乗せられた。

ずっと傍にいて手を握っていてくれたラルク(立会出産ですねっ☆)も、


「かわいいな」


そのラピスの瞳を細めて、息子の背をそっと撫でています。


とりあえず大仕事は無事終えました。


「後は任せておきな。今はゆっくり休みなさい」


という魔女様の言葉と同時に、私は眠った。

つか、魔女様、催眠術とかかけたよね?




「おお~~~っ! 自分で着脱可能になった~~~!!」


うれしげに『月の雫』を何度も着けたり外したりしている私。

出産から1日明けて。私はまだまだベッドの住人です☆ ベッドの上に起き上がって『月の雫』をいじってるのだー。ちなみに、私のベッドの横には、生まれたばかりの息子がベビーベッドの中ですやすや眠っている。

ちょっと前まではラルクたちの手を借りないと外せなかったのに、息子――リュンと命名――ができた途端に可能になりました~!! わーい、ファンタジーワールド住民認定おめでとう~!! って、もはや『月の雫』なくてもコミュニケーション取れるけどね……。


あ、でも。


「こっちの人になっちゃった私は、もう向こうの世界には行けないんですかね?」


これ、大事よね。さっきまでのはしゃぎようはどこへやら、ちょっとしゅんとしてしまう。せめて年一くらいは帰りたい。ノスタルジー?


「さあ……? さすがにそれはわからないな。なにせ前例がない」


起き上がっていた私を再びベッドに寝かしながら、ラルクが答えた。


「落ち着いたら、試してみてもいいですか?」


上目づかいに恐る恐る聞いてみる。


「落ち着いたら、な」


目を逸らせながらラルクが答えるけど、それ、全然実行する気ないでしょ?


『月の石~』編も、最後までお付き合いありがとうございました!


最近、ラスト放置症みたいです(笑)ラスイチが書けない……

気長に待ってくださっていた皆様、本当にすみませんでした!


あともう少し番外編書きたいですので、お付き合いくだされば幸いです(^^)

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