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予想外!

 エリックが操る見張り三人を盾に、俺達は遂に敵の本丸に足を踏み入れた。すると岩が剥き出しの王の間のような広間に、大勢の一味が待ち構えていた。


「何用だ貴様」


 恐らくリーダーなのか、威風堂々と椅子に腰かけるひと際大きな体に鎧を纏う男が言った。その姿はミズガルドで対峙した悪魔のようで、あれがエリックの言う悪魔なのだと思った。


 周りは大勢の敵に囲まれ、直ぐにでも襲い掛かって来そうな状況は得も言われぬ威圧感があった。そんな中でもこういう事には慣れているのか、エリックが堂々と答える。


「私の娘を迎えに来ました。随分と礼儀を知らない方々だったので、わざわざこちらから出向きました」

「ほう」


 エリーック! お前交渉って意味知ってんの!? 完全に喧嘩腰じゃねぇか!


 物腰柔らかく礼儀正しいエリックを知っている為、交渉という言葉を聞いた時、手品をしている時のような巧みな話術を駆使して交渉に当たるのかと思っていたが、予想を裏切りまるで凄腕の殺し屋みたいな挨拶をするエリックに、開いた口が塞がらなかった。


 そんな俺を他所にエリックは続ける。


「こちらとしてもあまり手荒な真似はしたくはないので、早急にお返し願えますか? でないと……」


 そこまで言うとエリックは体から黒いオーラを上げ始め、それに共鳴するようにツクモとゴードンさんもオーラを上げ始めた。


 えっ? 嘘でしょう? もう待った無しなの?


「楽には死ねませんよ」


 ここに来るまでのエリックからは感じなかったが、エリックも実は相当頭に来ていたようで、言い終わると一気に魔力を解放し燃え盛る炎のような黒い魔人と化した。

 その圧力は今まで感じた事が無いほど強烈で、味方であるはずの俺でさえ恐怖を感じた。しかしそれ以上に、ここに来てまさかの本性を現したゴードンさんの変化はそれ以上に俺に恐怖を与えた。


 リザード種と言っていた事から、きっとゴードンさんはトカゲ人間のような姿になると思っていたのだが、エリックと共に魔力を上げ始めると体が膨れ上がり、丈夫なはずのスーツがビリビリと音を立てて破れ始めた。そして体中から棘のような物が無数に現れ、最後には見上げるほどの筋肉ムキムキの大男に変わった。

 それはリザードというよりワニのような姿で、黒光りする鱗と棘は鎧と言っても過言ではなく、長く伸びた口から見える牙は歯というより斧だった。


 あわわわわ……もしかしてゴードンさんが一番ヤバかったの!?


 そして気付くとツクモも髪の色が重々しい金髪に変わり、肌の色も灰色に近い色に変化し、右頬に枝のような白い文様が現れ、瞳が真っ赤に充血していた。


 とんでもねぇの連れて来ちゃったよ! どうすんだこれ!?


 完全に俺の予想を上回る状況だった。俺の予想ではエリックとツクモが大方やっつけると思っていた。だから俺はその隙をつきゴードンさんと共にスクーピーを救出して逃げる算段だった。

 そんな予想を裏切り、まさかの総力戦になるとは思いもよらず、もうあたふたするしかなかった。


「リーパーさん、早く魔力を高めて下さい。戦闘が始まれば私では守り切れません」


 もう完全に頭に血が上ったエリックとは違い、あんなワニみたいな姿になっても冷静なゴードンさんは、野太い声だが優しく言ってくれた。


「わ、分かりました!」


 見た目からもう手に負えない兇悪な化け物に変わってしまったと思っていたゴードンさんの中身が変わらなかった事を知ると、逆にその兇悪な体が俺の頭を働かせ、無我夢中で魔力を高めた。

 するとちょっと力を入れただけで内側から何かが弾けるような感覚が背中を突き抜け、一気に体全体が力に包まれ、驚くほど軽くなった。


 何だこれ!? まるで自分の体じゃないみたいだ!


「おぉ! やはりリーパーさんはインペリアルだったんですね!」

「え?」


 余りの変化に自分でも驚き、手から迸る眩い銀のオーラを見つめていると、ゴードンさんが俺を見て言った。だが不思議な事に、声に反応して見上げたゴードンさんは先ほどよりも小さく感じ、体躯とは見合わない程軽く見えた。


「あんたインペリアルだったの!? 嘘でしょ!?」

「え? あ……はい……」


 恐らくエリックの魔力の影響でそう見えるだけなのだろうが、俺の変化にはツクモも驚いた。ただ、驚くツクモの顔はまるで凶悪なゾンビのようで、目が合うと猛烈に怖くなった。


「ホントに!?」

「えっ! あ、いや! 俺はインペリアルではないから……」


 余りの恐怖に適当な返事をしたのが悪かったのか、ツクモが迫り慌てて訂正した。ツクモ超怖ぇ~。


 そんな俺達のやり取りを聞いて、エリックが勝負に出た。


「そういう事ですビリーフ・マーズの皆さん。こちらにはインペリアルが付いています。それでも構わないのならいくらでもお相手をしますよ?」


 エリーック! そのハッタリは直ぐバレるよ! 


 これには内心バクバクだったが、どうやらエイダールでもインペリアルは最強らしく、一部を除いて一味は明らかな動揺を見せ始めた。


 俺としては超やめて欲しい駆け引きだったが、相手をコントロールする術に長ける手品師だけあって、こういう勝負所を分かっているエリックはさすがとしか言いようが無かった。


 だがやはりハッタリが通用するのは格下ばかりで、エリックが言った強者と思われる内の一人の、細目の男が前へ出て来た。


「それは是非手合わせ願いたい。常々インペリアルとは語り合いたいと思っていた」


 肩まで伸びた青みがかる灰色の長髪。腰に差した刀。そして着物のような服装は、まるでツクモと同じサムライの様だった。だが、細い目は鋭くゆったりした口調は、今までに多くの命を奪ってきた殺人者のような妖気なオーラを放っていた。


 エリーック! これはマズイよ! 絶対俺殺されちまうよ!


 もしここで俺が怖気付けばそれを見た格下共は士気を増す。かと言って俺が思い切りハッタリをかまして出て行っても即殺される。

 精神的なアドバンテージを狙っての発言だったようだが、エリックがかましたハッタリにより超マズイ状況になってしまった。

 そんなピンチに救世主が現れる。


「はっ? あんた如きにインペリアルは勿体ないでしょ? どうせどこかの落ち延びでしょう? 私がしっかり狩り取って上げる」


 救世主というかただ戦いたいだけのような気もするが、もうバイオレンスマシンと化したツクモは、アドラのお株を奪うような勢いで前へ出た。

 その姿はとても頼もしく勇敢だった。だがどうしても殺人狂にしか見えず、見た目だけは兇悪の俺達男性陣はただただ気圧されるだけだった。


「随分と威勢が良いな。まぁ良い。肩慣らしに相手をしてやろう」

「上等。だけど私の刃は血まで断つわよ」

「血を断つか。打ち刀の分際で面白い。勝負だ」


 俺が切り殺される危機は去ったが、ツクモの勇姿により予想外の展開になってしまった。しかし今の俺達にはどうする事も出来なかった。


「娘。名は何と言う?」

「そんなの聞いてどうすんの? あっちに逝ったら私に殺されましたって言うの?」


 ツクモ超強気! もう完全にエリックの力に支配されてんじゃねぇの!?


「いや。せめて俺に挑んだ功績として、名ぐらいは知ろうと思っただけだ。気にするな」

「そう。なら刀神とでも覚えておいて」

「口の減らない奴だ。まぁ良い。そろそろ始めよう」

「ええ」


 争いは望まない俺達だったが、思ってもみない形で戦闘となり、まさかの一騎打ちが始まった。


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