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懇願無礼

 攫われたスクーピーを救出するため強力な助っ人の元を訪れたエリックだったが、辿り着いた先は仕事のキャンセルを伝えるためのセルディオさん夫妻の元だった。

 一刻も早くスクーピーを救出しなければならないこの状況下でのエリックの行動に、煮えを切らし強引に立ち去ろうとする俺だったが、そこでエリックは思わぬことを口にする。


「セルディオさん夫妻はデュポンなんです! もしお二人のお力をお借り出来れば必ずスクーピーを救出できます!」

「えっ!?」

 

 デュポンってあのデュポン!?


「ですからもう少しだけ時間を下さい!」


 デュポンはエインフェリアに仕えると言われる種族で、その力は悪魔にも匹敵するとも言われる。だが、俺の知るところではデュポンはドラゴンのような姿をしており、エインフェリアと同じく人間社会には干渉しないはずだった。


 それもありエリックの言葉にはかなり疑念が生まれたが、縋りつくように引き留めるエリックに、今は信じるしかなかった。


「お願いします! どうかお力をお貸しください!」


 俺が足を止めるとエリックはすぐにセルディオさん夫妻の元へ駆け寄り、両膝を付き必死になって懇願した。その姿はとても悪魔には見えず、本来憎むべき相手でも頭を下げるエリックに、どれほどスクーピーを愛しているのかが伝わった。

 それが分かると、もうデュポンだとか悪魔だとか関係無く、ただスクーピーを救う事だけを考え一緒になって頭を下げた。


「お願いします! どうかスクーピーを助けて下さい! お願いします!」

「お願いします!」


 スクーピーを攫った相手が誰だかは不明だった。それもある為、今は少しでもスクーピーを救う可能性を上げたかった。そんな思いで必死になって頭を下げた。そんな思いに奥さんが応えてくれたのだが……


「分かりました。ですから頭を上げて下さい」

「待て! お前は何を言っているんだ!」


 そんな奥さんとは対照的にセルディオさんは反対を口にした。


「でもあなた! エインフェリア様が攫われたんですよ!」

「それは分かってる! でもそれは私達の仕事じゃない! それにこの後新年会があるんだぞ! 後援会の方々にはどう説明する気だ!」


 区議会議員である以上セルディオさんにも果たすべき責任がある。それは俺達個人の責任よりも遥かに大きい。ここでセルディオさんが反対するのは当然だった。


「どうかそこをお願いします! 俺達にはスクーピーが全てなんです!」


 それでもこちらも譲れない思いがある為、無理を承知で頭を下げ続けた。

 

「そう言われましても……では私から警察の方へ連絡させて頂きます。残念ですが今の私にはそれくらいしかご協力出来ません」

「それでは間に合いません! こうしている間もスクーピーには危険が迫ってます! どうかお力をお貸し下さい!」

「そう言われましてもエリックさん。私は議員です。どうか察して下さい」

「そこをどうか!」


 戦闘に関しては非力なエリックにとっては、どうしてもデュポンであるセルディオさん達の力は必要なのだろう。それは同じく戦闘に関しては全くの素人の俺にも言えた事で、是が非でも力を貸してほしかった。

 そんな状況に奥さんもセルディオさんの説得に協力してくれる。


「あなた! じゃあ私だけでも!」

「駄目だ! 議員の妻の責任は私の責任でもあるんだ!」

「でもシャロンちゃんが攫われたんですよ!」

「そんな事は分かってる! だけど私にも使命がある!」

「使命って! 今目の前で助けを乞う人と新年会を控えた後援会、一体どっちが大切なんですか!」

「そういう事を言っているんじゃない! 私は市政を任されているんだ! 選挙で私を選んでくれた方々を裏切れないと言ってるんだ!」


 セルディオさんにも貫くべき信念があるようで、口論に発展してしまった。そんな状況に、ここで突然ゴードンさんが俺の隣に来て頭を下げ始めた。


「お取込み中の所申し訳ありません! 私はギフテッドのスカウトのデリトリー・ゴードンという者です! 事情は重々承知致しましたが、それを踏まえても私からもお願い致します! どうかシャロンちゃんをエリックさん達の元へ取り戻すためご協力願います!」


 まさかの行動に俺達の方が度肝を抜かれた。だが、その真剣な眼差しと他人の為に土下座をする姿に、心が震えた。


「そう言われましても無理な物は無理です。どうかお引き取り……」

「分かりました! 私が協力致します!」

「お前!」


 やはり駄目かと諦めかけた時、奥さんが強引に割って入った。


「あなた、やはり私はデュポンです! もう故郷を捨てたと思っていてもこの想いは変えられません! もしそれでもあなたが許さないのなら、すぐにでも離婚届を提出して下さい!」

「なっ!?」


 まさかの展開に冷静さが戻った。確かにスクーピーを救いたいが、それが原因で誰かに不幸が降りかかるのはマズイと思い、咄嗟に立ち上がり間に入った。


「ちょっと待って下さい! それならいいです! この話は聞かなかった事にして下さい!」

「えっ!?」


 この俺の行動により、今度は違う意味でセルディオさんが驚いた。そしてさらに場が拗れ始める。


「ちょっと待って下さい! 私はもう行くと決めました! だからそんな事を言わないで下さい!」


 もう離婚するほどの覚悟まで決めていた奥さんにとってはあり得ない話になっているようで、今度は奥さんが懇願するように俺に縋りついて来た。


「でもスクーピーを助け……」

「そうですよリーパーさん! 今は少しでも戦力が欲しいんですよ! だからそんな事を言わないで下さい!」


 縋りつく奥さんを宥めようとすると、今度はエリックが入って来た。そしてもうゴードンさんも引くに引けないのか、それは駄目だと言わんばかりに無言でエリックと共に俺に迫って来た。


 大パニック!


「い、いや……落ち着けよエリッ……」

「お願いします!」


 もう混沌が混沌を呼んだせいで、エリックは俺に文句を言うとすぐさまセルディオさんに迫った。そしてそれをゴードンさんが追う。しかし今度はそれを見て慌てて秘書が駆け寄りセルディオさんを守るように入って来た。


「ちょっと何やってるんですか! やめて下さい!」

「どうかお願いしますセルディオさん!」

「やめて下さい! すぐに先生から離れて下さい!」

「ちょっ! 何ですか貴方! 邪魔をしないで下さい!」


 どうすんのコレ!? なんかとんでもない事になっちゃった!


「リーパーさんお願いします! どうか私に協力させて下さい! 例え非力でも私も戦えます!」


 こっちもこっちでもう立場が逆転してしまった奥さんが連れて行けと俺に迫る。


「落ち着いて下さい! とにかく一旦離れて下さい!」

「いいえ離しません! 私はリーパーさん達と一緒に行きます!」


 おい青年! 呑気に見てないで助けろ!


 正直こうなってしまえば一刻も早くスクーピーの元へ向かいたかった。だがこうなってしまったから逆に離れられなくなってしまった。そこで最終手段に出た。


「行くぞエリック! もうここにいても時間の無駄だ!」

「あっ! ちょっと待って下さい! まだ……」


 奥さんが手を放した一瞬を逃さず離れると、エリックの腕を掴み強引に部屋を出る事にした。


「こっちにはガードの青年がいる! だからこのままでも問題無い! それにこれ以上は時間が惜しい! 行くぞ青年!」

「ちょっと待って下さいリーパーさん!」


 かなり強引だがこれが最善だと思ったのだが、ここでエリックに続き諦めきれない奥さんが魍魎の如く俺にしがみ付いて来た。


「ちょっと待って下さい! 私も連れて行って下さい!」


 ここに来たのは失敗だった! ただ時間を無駄にしただけだよ! エリックももう諦めれや!


 そんな俺の窮地を救う為、ここでセルディオさんが動く。


「ちょっと待て! お前はここにいろ!」

「邪魔をしないであなた!」

「おい! お前も手伝え!」

「はい先生!」


 セルディオさんと秘書が参戦し奥さんを引き離しにかかると、状況はカオスになった。そんな状況を一刻も早く抜け出すため、俺も総力戦に出る事にした。


「おい青年! お前も手伝え!」

「えっ!?」

「えじゃなくて! もうここから出るぞ! このままじゃいつまで経ってもスクーピーを助けに行けない! だから手伝え!」

「う~……分かったよ」


 自分には関係無いというような顔をしていた青年だったが、俺が活を入れると渋々ながらも動き、セルディオさん側に付き奥さんを引き離しにかかった。


「ゴードンさん! あんたも逃げるの手伝え! ここにいてもスクーピーは救えないぞ! あんた何しに来たんだよ!」


 ゴードンさんは手は出さないがエリック側の味方をしていたのだが、俺が怒鳴るとムスっとした表情を見せながらもエリックを引っ張る事に協力し始めた。


「リーパーさん! セルディオさん達の力は必要です! だから邪魔をしないで下さい!」

「アホかお前! 今無駄にしている時間のせいでスクーピーが殺されるかもしれないんだぞ! お前それでもいいのか!」

「ですが!」


 エリックがここまで固執するからには、デュポンはそれほどの力を持っているのだろう。それでもこれ以上のロスは命取りになる。そこでエリックに効きそうな言葉を放った。


「スクーピーはてめぇの子供だろ! ならてめぇ一人でも守ってやる覚悟無くてどうすんだよ! もうお前の料理でスクーピーが喜ぶ姿が見れなくなっても良いのかよ!」


 そう言うとこれが効いたのか、エリックは踏ん張る力を解いた。


「分かっただろ! 今俺達がしなきゃいけない事! ほら行くぞ!」

「分かりました! セルディオさんお騒がせしました! 失礼します!」


 スクーピーの救出に再び焦点が合うと、エリックはコロッと態度を変えた。ただその豹変ぶりは無礼過ぎて、ここまでしっちゃかめっちゃかにしといてその二言でセルディオさんを後にした事には少々驚いた。


 ちょっとした設定

 エリックのベーコンエッグレシピ (一人前)

 材料 卵一個、ベーコン二枚、バター、粗挽きコショウ、水

 

 フライパンにバターをひき、ベーコンを強火で焦げが付かない程度に炒めます。次に火を止め、炒めたベーコンの上に卵を割り、水を少し入れ蓋を被せて弱火で蒸します。黄身が半熟になったあたりで粗挽きコショウを掛け、さらに二分ほど蒸します。


 



  

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