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蒼星のセレス  作者: おうぎまちこ
海の章

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第7話 空は闇と再び出逢う




「ここは、一体――?」


 セレスは、知らぬ間に、水晶で覆われた洞窟のような場所に居た。

 今の今まで、自分は城にあるバラ園にいたはずだ。

 周囲を見回すが、人の気配を感じない。

 漠然とした不安が、セレスを襲った。


 後ろを振り向いてみるが、水晶でできた壁がそこにはあるだけだ。


(前に……進むしかないようですね……)


 どこから灯りが提供されているのかは、分からない。だが、洞窟の中身はほんのりと光輝いていた。

 場所が分からない恐怖に胸が押しつぶされそうになりながら、セレスは先へと進んだ。

 特に分岐点などもない。

 ひたすら、前へ向かって歩くしかない。

 

 今いる場所よりも明るい場所が、遠くに見える。


 あそこまで歩けば、誰かいるかもしれない。


 歩を進めると、少しだけ肌寒い場所に到着した。


 その場所には――。


「牢屋?」


 水晶で出来た岩の合間に、格子が視える。その先に、ぽっかりと開いた空間があった。

 牢屋で間違いはないと思う。

 しかし、問題はそれだけではない。

 この場所で、道が行きどまりだったのだ。

 最初に歩き始めた場所より後ろには、間違いなく何もなかった。

 つまり、この空間には出口がないということだろうか?


「ここは……?」


 本当に城に戻れるのかどうか分からない。

 いや、もしかしたら夢なのかもしれないと思う。

 試しに頬をつねってみたところ、痛みはあった。だとすると、夢ではない。

 きょろきょろと周囲を見渡してみる。

 すると、突然、牢屋の方から声が聞こえた。



「僕を、迎えに来てくれたの?」



 セレスは、暗い牢の奥に視線を向けた。

 格子のあたりに、人影が差す。

 聞き覚えのある声だ。

 まだ少年らしさの残るこの話し方は――。


 今日の夕方に魔術が暴走していた、黒髪に紅い瞳をした少年。


「……スピネル?」


「ああ。やっぱり、君だ。セレス」


 少しのんびりとした口調で、少年はセレスに向かって話し掛けた。


「ここは? どうして、貴方はこんなところにいるの?」


 セレスの中で疑問が沸いた。

 彼は、別の場所で休んでいるとカーネリアンは言っていたような気がする。

 その場所と言うのが、こんな薄暗い牢屋なのだろうか?


「スピネルは、どうして、こんなところに?」


 セレスは、おずおずとスピネルに対して尋ねた。


「どうしてだろう?」


 彼は、首を傾げている。肩先まで伸びた黒髪が、さらりと揺れた。


「どうしてだろう、って。その、今日の出来事の後、この場所に連れてこられたんですか?」


 彼が魔術を暴走させた結果、城の中にある建物や、騎士や魔術師といった人々にかなりの被害が出ていた。それが原因で牢屋に入れられたのではないかと、セレスは思い至った。


「今日? いや、ずっと昔から、僕はここにいるんだ」


「ずっと、昔から?」


「そうだよ、セレス」


 閉じられた場所にずっといるという割に、彼の感情が昂ぶったり、落ち込んだりといったようにはセレスには感じられなかった。スピネルは、ずっと微笑を浮かべている。


 いや、むしろ――。


(ずっと、ここにいるからこそ、淡々としているのでしょうか?)


 彼の、えらく白い肌に、やせ細った身体。陽の光を浴びていないからこそかもしれない。

 スピネルが口を開く。


「セレスは、僕を迎えに来たの?」


 もう一度、同じ質問をされた。

 セレスはスピネルに事情を話す。


「そうなんだ、僕を迎えに来たわけじゃないのか。残念だな」


 そうは言うが、やはり彼は残念そうには見えなかった。


 セレスはふと、彼との今日のやり取りを思い出す。

 今は穏やかな印象があるが、最初にみた彼は粗野な印象も受けた。

 どちらが果たして、本当の彼なのだろうか?

 セレスは、尋ねても良いものか、少しだけ悩む。しばらく考えた後、セレスは思い切って彼に問いかけてみた。


「その、あなたは、今日、私にその、く、くち……」


 言おうとしたら、セレスはうまく言えなかった。


(男の人と、口づけたのは生まれて初めてでした)


 いい淀む彼女を見て、スピネルは微笑を浮かべ、首を傾げたままだ。

 彼も思いを巡らせたようで、セレスに話しかけた。


「ああ、もしかして、あれかな? 君に口づけたこと?」


 そのまま彼の口からそう言われたので、セレスは戸惑った。

 顔が赤くなっているのが、自分でも分かる。


「あの……」


「ごめんね、僕からも謝っておくよ。……あれ? 僕も意識はあったわけだから、彼と同罪なのかな?」


 彼のその言い方に、セレスは疑問を感じる。

 スピネルは、一人で悩んでいるようだ。

 変わった印象のある男性であることには変わりはない。

 これ以上尋ねても、不思議な言い回しをされて、しっかりした解答は返ってこない気がした。


(よくわからない、男の人です……)

 

 それにしても、身体の感じる寒さが増してきた気がする。


 スピネルは果たして、この場所の出口など知っているのだろうか?

 だが、彼を閉じ込めた人物が必ずどこかに存在するはずだ。

 

 セレスは、また彼に疑問をぶつけようとした。



 その時――。



「そこにいるのは誰だ?」




 突然、セレス達の背後から、男の声が聞こえたのだった。


 


 


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

また、明日お会いできたら幸いです。

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