第34話 闇は目覚めて、空と旅立つ
不思議な水晶の牢に閉じ込められ、黒竜化した第ニ王子スピネル・フローライトを救出した女騎士セレスタイト・カルセドニー。
城にあるスピネルの部屋にて――。
しばらくベッドの上で気を失っていたスピネルは、目覚めた途端、セレスに口づけた。
「おやおや」
碧のふわふわとした髪を揺らしながら、魔術師エメラルドは二人の様子を見て、にやにやと笑っていた。
セレスから唇を離したスピネルが口を開く。
「久しぶりに、力が戻ってくるな……」
異性に口づけられたにも関わらず、至極冷静にセレスは返した。
「あなた……もう一人のスピネルね……」
血のように紅い瞳で、彼は彼女を睨めつける。
「ああ。それで、外に連れ出されているようだが……今度は第一王子はこいつに何をさせる気かな……」
彼は伸び切った長い黒髪をかき揚げながら続けた。
「私は何もまだ聞いていないわ……」
「そうか」
そのままスピネルは押し黙った。
そんな彼に向かって、エメラルドが話しかける。
「一人の身体に二人の第ニ王子が存在しているのか? 私には一つの魔力しか感じないのだがな……」
彼女の発言の意図が、セレスにはよく分からなかった。未来予知の力はあるが、魔術は専門外に近い。
スピネルは黙したままだ。
「まあ、良い。旅の間にいくらか分かるだろうて」
エメラルドの発言に、セレスは首を傾げたため、空色の髪が揺れる。
「旅……?」
スピネルも紅い瞳だけを、ぎょろりとエメラルドに向けた。
彼女は豊満な胸を反らしながら続ける。
「カーネリアン・フローライト第一王子からの密命だ」
女性にしては、やや低い声音でエメラルドは告げた。
「第ニ王子スピネル・フローライトが目覚め次第、第三王子サルファ・フローライト、魔術師エメラルド・クロムスフェーン、女騎士セレスタイト・カルセドニーの四名で、北の神殿に向かえ――とな」
想像外の展開に、セレスは眉をひそめたのだった。




