第32話 女騎士と王子の再会
セレスが、黒竜の姿をしたスピネルの顎に口づけると、二人はまばゆい光に包まれ始めた。
しばらく光の奔流は続き、目を閉じても瞼を光が貫通してくる。
あまりに強い光のため、セレスの空色の髪色が白く見えるほどだった。
また洞窟内が暗くなるのを待った後、周囲が真っ暗になる。
目がまた暗闇になれてきた頃に、セレスはスピネルの姿を探した。
「スピネル、どこにいるの?」
セレスが一歩踏み出すと、何か柔らかいものを踏む。
彼女は腰を落として、それに近づいた。
さらりとした長い髪が、彼女の手に触れる。
「スピネル?」
セレスは数年ぶりに出会った友人の身体を起こした。
(意識がない――?)
彼女は咄嗟に彼の手首に指を当て、口元に耳を、そして目で胸の動きを見る。
(まだ脈はある。呼吸が止まっているだけ――)
セレスは一度大きく息を吸い込むと、スピネルの唇に自分のそれを重ねた。そうして、ふーっと息を吹き込む。
何度か同じ動作を繰り返すと、彼は咳き込み始めた。
暗闇に完全に目が慣れてきたようで、セレスの目に彼の表情も見えるようになってくる。
「スピネル? 大丈夫?」
セレスが声をかけると、横たわる彼はゆっくりと目を開いた。
「その声、セレスかい?」
名を呼ばれたセレスは安堵する。
「そうよ、スピネル。久しぶりね――」
「あれ? なんだか、髪形と顔が違うね……」
それもそうだろう。
彼と彼女が会わなくなって、もう数年の月日が経っている。
「成長したね……」
スピネルが柔らかく微笑む。彼の紅い瞳が柔らかく三日月を描いた。
最近ではあまり笑わなくなっていたセレスだったが、彼の笑顔を見て破顔する。
二人に和やかな雰囲気に包まれていると――。
「二人とも、久しぶりの再会で、嬉しそうなところ悪いのだけれど――」
セレスははっとする。
彼女と一緒に来ていたカーネリアン第一王子が、彼女に声をかけてきたのだった。
「いったん、城に戻ろうか――」
スピネルを抱きかかえたままのセレスは、こくりと頷いたのだった。
※※※
城では、一応スピネルの部屋とされる場所に通された。
セレスは王族ではないが、カーネリアンの計らいによって、彼のそばにいることを今だけ許されている。
今、スピネルは白いベッドの上で横になっている。
以前あった時よりも少しばかり大人になっているが、スピネルは少年と言っても見間違いかねない見た目をしていた。さらりとした彼の黒髪が、シーツの上に拡がっている。
(なんだか物語のお姫様みたいになっているわね――)
彼の眠る姿を見て、ベッドのそばの椅子に腰かけているセレスはくすりと笑った。
その時、部屋の扉をノックする音が聴こえる――。
セレスが扉を開ける前に、それは開かれた。
「魔力の揺れを探知したので参ったのじゃが……」
現れたのは――。
「それは、黒竜の王子ではないかえ?」
――碧色のふわふわとした髪に妖艶な顔立ち、胸元が大胆に開いた黒いドレスを身に着けた一人の女性の姿だった。




