第22話 海を救うためなら
昨日は寝落ちていて申し訳ありませんでした。
兄が去った後を見送った後、セレスを虚無感が襲ってきた。
もっと何か言い方があっただろうか。
そもそも戦争が始まる前に、もっと手立てがあったのではないだろうか。
アズライトを戦場に立たない様にするべきではないか。
城でスピネルが暴走していた時に、兄をかばわなければ、そこで大怪我をして、戦争には来なくて良かったのではないか。
(いえ、あの時はあの時で、助けなければ、お兄様は死んでいました……)
後悔がとめどなく彼女の中に去来していた。
抱きかかえていたスピネルが、そっと目を開ける。
「セレス……?」
「良かった、スピネル、目を覚ましたんですね……」
彼女は彼に声を掛ける。
ちょうどセレスの頬を涙が伝い、スピネルの紅い瞳の近くに落ちていった。
彼は彼女の方をぼんやりと見つめる。
「ごめんなさい、スピネル。私、お兄様の元に向かいます」
そう言って、彼女は膝の上に乗っているスピネルの頭をのけて、地面に横たわらせようとしていると――。
「待って、セレス。僕も連れて行ってくれる?」
彼は、そっとセレスの水色の長い髪を手にとった。
彼女は戸惑う。
とても彼は動けるような状況ではない。
「走っても追いつけないんじゃないかな? 君が協力してくれるなら、僕は動けるはずだから」
少し困ったように、スピネルは微笑んでいる。
これまでの数回で、なんとなくセレスにも彼が言いたいことが伝わった。
なぜだかよく分からないけれど、彼女と口づけると、スピネルに魔力が戻る。
なんとなく、こういうことは好きな者同士がする行為だと思っていたので、セレスとしても戸惑いはある。だが、もう今はそんなことを言っている場合ではない。
セレスはスピネルの顔を両手で挟み込んだ。
彼女が彼に顔を近づける。
唇が触れる少し前に、彼が一言だけ、彼女にこう告げた。
「ごめんね」
――と。




