第20話 空は闇の中で祈る
「どうあがいても勝てない」
スフェラ公国では、そう言う判断になったらしい。
「神器の継承者が後退したばかりだから好機だ」と考えた帝国にけしかけられて、仕方なしに始まった今回の戦争だった。だが、やはり神器の力を甘く見ていたと言わざるを得ない。
「人間達は相変わらず愚かだな」
ぽつりとスピネルが呟いた。
その言葉を拾ったセレスが、彼に話しかける。
「まるで自分が、人間ではないかのように話すんですね……」
スピネルはその言葉には特段何も返事はしなかった。
二人の前に立つ何千もの戦士達を見た。
スフェラの騎士はほとんど育っておらず、兵士達は数合わせのために揃えられたような者達ばかりであり、両者の足並みはそろっていない。味方同士でもそうなのだから、敵と戦うことを前提に考えれば考えるほど、負けるために準備された烏合の衆でしかない。
「お願いいたします」
アズライトがスピネルに頼むと、周囲に闇が拡がっていった。
※※※
セレスとスピネルの前にいた戦士たちが、闇に乗じて指定された地点まで進んでいく。
昼だと言うのに彼らの周囲は真っ暗だった。暗闇に隠れながら、敵であるオルビスの要である剣の守護者の元まで近づいて、そこで彼一人を急襲する流れらしい。
そこまでしても勝てるのかどうか分からないそうだ。
「術で加勢はするが、俺は神器の元には近づかない。分かっているだろうな?」
スピネルがアズライトにそう話し掛けた。
「はい、分かっています」
厳かにアズライトが返した。
セレスは疑問に思って、スピネルに尋ねた。
「その、スピネルは神器と何か関係があるのですか?」
だが、やはりと言って良いか、彼は答えてはくれなかった。
兄は何かを知っていそうだったが、真面目な彼の事だ。他人の事に関して尋ねたとしても答えてはくれないだろう。
(スピネルの言う契約の内容も……。髪を掴まれてから前後の記憶が曖昧で、よく思い出せない)
昨晩の出来事だったが、セレスは夢を見ていたかのように記憶がおぼろげだった。
(スピネルに尋ねても、答えてはくれません)
彼の横顔を見る。
記憶は曖昧だが、ちゃんと作成に加担してくれているので、セレスの願いを聞き届けてくれたということだろう。
セレスは視線を兄アズライトに移した。
(スピネルが協力してくれたおかげd、お兄様の未来が変わってくれれば……)
彼女は切実にそう感じていた。
「先頭の部隊が、剣の守護者に到達したようです!!!」
運命が変わることを、セレスは祈った。




