第15話 空と海は夕陽を見る
セレスと兄アズライトは家に帰り、両親に挨拶をすませた。
彼女が戦争に向かうことに関して、国王からすでに二人の元へ連絡が入っていたらしい。
セレスにとって義母に当たる人物は、実の息子であるアズライトの心配をしていたが、特にセレスの心配はしていない様子だった。
父はセレスに何か言いたそうな雰囲気はあったが、正妻が怖かったのだろうか、あまり話し掛けてはこなかった。
二人で部屋を出た後、アズライトがセレスに声をかけてきた。
「大丈夫か? セレス。父さんは別にお前が嫌いなわけじゃないんだ。ただ、母さんに気を遣っているだけだよ」
彼は彼女にそう言った。
セレスは、父親とあまり話が出来ない状態に慣れている。とは言え、少女であるセレスが戦争に行くというおかしな状況になっているにも関わらず、何も言われないのはいつもよりも辛く感じた。
「お兄様、ありがとう……」
小さな声でセレスは返した。
そして、気を取り直した様子で、アズライトは彼女に声をかけた。
「セレス、少しまた兄さんと二人で、馬で遠出をしてみようか?」
セレスは、兄に対して大きく頷いた。
※※※
屋敷を離れ、裏手にある丘を馬で登った。
乗馬も出来るセレスだが、今は兄の愛馬に二人で跨っている。
アズライトは、わりと過保護なところがある人だとセレスは思っている。
丘について馬を降りて、沈む夕陽を二人で眺めた。
眩しい太陽の残光を見ると、どうしても兄が殺される夢を思い出してしまう。
今度セレス達のスフェラ公国が戦う相手は、神器の国オルビス・クラシオン王国である。
その神器を所持する一族のうちの一つ、剣の一族の者が紅い髪に碧の瞳を特徴として持っているらしい。
兄から聞いた情報だと、成人したばかりの剣の一族の青年が、父親から神器を継承したばかりらしい。
セレスが夢で見る、兄と対峙する紅い髪をした化け物も、ちょうど該当する年頃の青年のようだった。
だとすれば、夢の出来事が実際に起こる戦場というのは、今からセレスが向かう場所に違いない。
戦争に向かうの不安もあるが、殺されるかもしれない兄の未来を変える好機だと、セレスは内心では思っている。
セレスが夕陽を見ながらぼんやりと考え込んでいると、兄アズライトが声を掛けて来た。
「セレスの母親も、不思議な女性だったな……」
アズライトがしみじみと話し始めた。
今まであまり話題になったことのない彼女の母親についての話題だったため、セレスは驚いていた。
「私の母、ですか?」
「ああ、そうだ。セレスの母親だよ」
そう言って、アズライトは昔の話をはじめた。
「お前の母親は、お前によく似た女性だったな――」




