第13話 闇と星は談合する
「ねえ、私、あなたに出会えて本当に良かったわ」
金の瞳をした少女が、自分に向けて微笑みかけてくる。
「ずっと、私のことを護ってくれるの? 嬉しい」
風で、彼女の空色の髪が揺れる。
「私も――のことが――」
※※※
そこで夢は途切れた。
黒髪の少年は、ゆっくりと瞳を開く。紅い瞳は牢の中の天井を捉えた。
もうほとんど、本当にあったのかどうかも分からない記憶だ。
ぼんやりしていると、突然声が聞こえた。
「ちょうど良かった。弟というよりも、貴方に話があったんだ」
牢の外、水晶で張り巡らされた洞窟の奥から、一人の男が現れた。
ゆるやかな曲線を描く金の髪に、茶色の瞳の男。
自分が棲みついている身体の持ち主とは似てもにつかない見た目をしているが、腹違いの兄弟だ。
彼はこの国の第一王子カーネリアン・スフェラ・フローライト。
そして、この身体の主は、病弱で療養しているとされる第二王子スピネル・スフェラ・フローライト。
第二王子の口を借りて、カーネリアンに話しかける。
「話?」
「ああ。今度、竜を封印している神器持ちの国と戦になったんだけどね。貴方の力を借りれないかなぁって?」
にこにこしながら話すカーネリアンを見て、黒髪の少年は鼻で笑い返した。
「俺の力を借りたい? この身体の兄上様は頭が悪いと聞くが、どうやら本当のようだな。そもそも、このような弱小国が神器持ちの国と闘うなど、愚の骨頂」
そう吐き捨てるように言う彼に対して、金の髪の青年は笑って返す。
「まあ。事情があるんだよね。支援してくれている帝国がどうしても、神器が欲しんだってさ。戦わないなら、帝国から公国への支援は打ち切るそうなんだ。自分たちの手は汚さずに、恐ろしいよね……」
「相変わらず、醜いな。――そのようなことに、俺が力を貸すことはない」
スピネルの身体を借りた彼は、牢の前に立つカーネリアンから視線をそらした。
「本当にそうかな? 貴方は力を貸してくれると思うんだけど」
「つくづくおめでたいな。この国の人間に、俺が力を貸すと思うのか?」
「ああ、貸してくれると思っているよ、貴方なら」
断られてもなお笑顔を崩さないカーネリアンに、それ以上黒髪の少年は答えなかった。
しばしの間、沈黙が流れる。
ゆっくりと、カーネリアンが口を開いた。
「セレスタイト。昨日会っただろう? 金の瞳に水色の髪をしたあの子。彼女を戦地に連れて行く」
「――!」
そう言われた黒髪の少年は息を呑んだ。
微笑みながらカーネリアンは、話を続ける。
「貴方が協力してくれないなら、彼女、死ぬかもしれないね。私達の国は、ほとんど負けが確定しているようなものだから……」
カーネリアンは踵を返した。
「それじゃあ」
歩く彼の背に、少年の身体を借りた男は声をかけた。
「待て」
そして、カーネリアンは悠然とした笑みを浮かべ、彼の方へと振り返ったのだった。




