第11話 空は炎と歩く
セレスは、少年に手を引かれ、城の中を歩く。
少年の名は、サルファ・スフェラ・フローライト。
彼は、この国の第三王子だ。
金髪にふわふわとした髪に茶色の瞳は、兄で第一王子のカーネリアンに似ていた。まだ彼は幼いので、セレスより身長が低い。だが、兄に似て、将来的には身長が高くなるだろう。
「そうだ、新入りの侍女。お前、名は何と言うんだ?」
やや高圧的な話口調で、彼はセレスに声を掛ける。
彼はやはり、彼女を城に入ったばかりの新人侍女と勘違いしているようだ。
少しだけ緊張しながら、セレスは答える。
「私は……、セレス、です。セレスタイト・カル――」
「わかった、もう良い。セレスだな」
彼女はサルファに、姓まで名乗ろうとした。だが、彼に話を遮られてしまい、自身の姓を告げることは出来なかった。
「お前は、話すのが冗長だ。もっとはきはき話せないのか?」
そうサルファに言われたセレスの身体がびくりと震えた。
彼女は義理の母親にも、そのように毎日責め立てられていたからだ。
『お前はもっと、はきはき話せないの?』
呪いのように、ずっと負の言葉を投げ掛けられた。
そのことを想起して、セレスの顔色はみるみる青ざめていく。
サルファは、不審そうに彼女の様子を見た。
「どうした、セレスとやら?」
彼に問いかけられるが、セレスは目の前がぐるぐるしてしまい、なかなか返答することが出来ない。
「おい――」
義理の母親に責め立てられるセレスを、兄のアズライトがいつも庇ってくれていた。
『お兄様』
彼女は頭の中で、無意識に兄の名を呼んだ。
アズライトのことを思い出すと、少しだけ、セレスの心は軽くなっていく。
「お兄様……」
「お兄様?」
セレスは、サルファの前でも兄の事を口に出していたようだ。
「セレスには兄がいるのか? その者の名は、何と言うんだ?」
サルファはセレスに質問してくる。
彼の言葉を、今の彼女は冷静に受け止める事ができた。
「私の兄の名は――」
セレスがサルファに答えようとした時。
二人に、声が聴こえた――。




