第10話 空は炎と出会う
翌朝、セレスは医務室で目覚めた後、新しいドレスに着替えて、城の外の散歩をしていた。
今日は、一応兄アズライトに許可を取っている。人目につくあたりを歩く分には問題がないと言われていたので、その通り、近くに騎士が視える範囲のみを対象にした。
今日は昨日の曇り空とは打って変わって、晴天だった。空の色を見ると、自分の髪の色と同じだと思い、少しだけ元気になれる。
ふと、黒髪紅瞳の少年の事を思い出した。
『君の髪、本で見た空の色と、同じ色をしている』
彼は元気にしているのだろうか――?
最後に見た時には、彼は、水晶で出来た洞窟の中にある牢屋の中にいた。
ずっとここにいると彼は言っていたが、本当にあの場所で過ごしているのかもしれない。
「空の色を知らないのが本当なら、そうなのかもしれない」
セレスは、考え事をしながら歩いていた。
「おい、そこの女」
背後から突然声がかかった。
まだ、幼さの残る、性別の区別がつかない声だった。
セレスは、声の方へと振り返った。
見れば、すぐ後ろに、金色のふわふわとした髪に、茶色の瞳をした少年が立っていた。年は、セレスよりもいくつか下だと思われる。身長が彼女よりも小さかった。
(この見た目は、もしや……)
「お前、あまり城では見ない顔だな? 新しい侍女か何かか?」
高圧的な態度で、少年は声を掛けて来る。
彼は、カーネリアン第一王子を小さくしたような見た目をしている。態度はだいぶ、第一王子よりも大きい気がするが。
「貴方は、サルファ……第三王子様ですか?」
セレスがそう尋ねると、幼い顔を歪めながら少年が口を開いた。
「その通りだ。僕が、このスフェラ公国の第三王子である、サルファ・スフェラ・フローライトだ。……お前、僕が分からないとは、本当に城の者か?」
そう問いかけられたセレスは、そのことについては否定しようとした。
「その……私は……」
「なんだ? おどおどした侍女が入ったようだな?」
そう言ってサルファ王子は、うつむき加減のセレスの顔をのぞきこむようにして近づいてきた。
そして、彼女の金の瞳を見た少年は、そのまま固まってしまう。
(なんでしょうか……?)
「竜の姫君……」
突然、サルファが不思議な呼び名を呟いた。
そしてなぜか、彼は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「こんなところにいるはずはないか。ま、まあ、お前が、新入りなら、僕の事を知らなくても仕方ない。ちょうど良いから、この城を案内してやろう」
サルファ王子は、セレスの手を握った。
そうして彼女の手を引いて歩き始める。
「あ、あの……」
「いいから、来い」
なぜかセレスは、第三王子に連れられて、城の中を散歩することになったのだった。
お読みくださり、ありがとうございます。
明日は作者都合により休載致します。
『癒し姫』の方は投稿するはずなので、どうぞよろしくお願いいたします。
また3/14にお会いできることを祈って。




