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第三十七話 集団暴行(注意)

かなりエグ目の暴行シーン満載です。苦手な方、並びに許容できない方はこの回を飛ばしてください。

これから自分に起こるであろう事を目の前に晒されて、脅え震えているルビーを尻目に、反省室にいた側妃達面々は嬉々とした表情であれこれと拷問機具を物色していた。

何せこの反省室、マルスの趣味が万遍なく集まられたものばかりがあるために噂になっていたのだ。それを使われる事こそ恐怖を感じるものの、それを自分達が使うとなれば話は別。興味深々であれこれ眺めては歓声をあげて喜ぶ。



女は男より残虐になれる。

そう言ったのは誰だったか。まさにこの言葉どおりの光景が、カーン王国王城後宮内の一角にある反省室にあった。

真新しいばかりの家畜用の鞭を取ったのは側妃の一人であるイシュタルだった。


このイシュタル、実はアールマティに叱責された侍女の主で、アールマティが言った通り祖父が横領で投獄されていたのだが、アビゲイルの進言によって保釈ばかりでなく無罪を言い渡された。その見返りとしてマルスの側妃として後宮内に入る事になったのだが、そこは彼女が思っていたものとは全く違っていた。侍女からは恭しく敬われ、マルスからはアビゲイルの次に寵愛を得られた。

つまり、イシュタルにとっては祖父が投獄されてからの地獄から一転、後宮は天国とも言えるものだったのである。

それから彼女はアビゲイルに心酔し始める。アビゲイルのする事は常に正しい。そう思ったのはイシュタルにとっては呼吸するように当たり前で、それでいて絶対。

そんなイシュタルの自分への忠誠ぶりを知っているからこそ、アビゲイルはイシュタルを優遇したのである。そうすることによってアビゲイルがいない今、この反省室のいる側妃達の一番先頭に立ったのはイシュタルであった。



アビゲイルが置いて行った下男に腕を押さえつけられているために、逃げることも出来ないまま恐怖にうち固まったルビーを嘲笑うが如く、まず初めの一手を振り上げた。



「っ!!…あっ…ぁあぁっ…!!」


「あははっ、『ああ』ですって!!なんて可愛らしい声でしょう、いいえ、(さえず)りかしら?」



腕を鞭打たれたルビーはあまりの衝撃にじわりと涙が零れる。打たれた腕が燃えるように痛むためその腕を庇いたいが、それを下男は許さない。むしろ、今まで以上の力で押さえつけてくる。そんなルビーの光景を側妃達は姦しい声を上げて喜んでいる。

イシュタルはルビーのミミズ腫れとなった腕を見ながら、直一層楽しむように鞭を振り上げた。


その光景を笑いながら見ていた他の側妃達も、各々ルビーを甚振る為の道具を我先にと奪い合うかのように手に取り、そして歓声を上げながら被虐の手を加えて行く。



ある者は鉄製の定規で。


ある者は分厚い本の角で。


ある者は針で。


また、ある者は刃物で。



そうしてルビーを甚振り続けていると、鞭を振って軽い汗をかいたイシュタルがふと手を止めて眉を顰めた。

抵抗するルビーを押さえつけて置くために下男を拘束要員として付けていたが、今やその拘束も必要なくなり、ルビーは今にも気を失いそうになっている。そもそも彼女は風邪をこじらせていたのだが、そんな事を知る由もないイシュタルは、その余りのひ弱さを嘲笑った。



「本当にか弱くていらっしゃる。これじゃあ、一国の姫だと言うのにも関わらず、国のために役に立たなかったでしょうね。ああ、だからヴァシュヌを追い出されたのね?身体の弱い、何にも出来ない愚かな、醜い皇女なんて必要ないと」



イシュタルはそう言うと、倒れているルビーの顔をガッと踏みつけた。元々貴族であるとは言え、祖父が罪を犯したと言うので、イシュタルの生家と名声は地に落ちた。彼女の祖父が犯した罪を贖うための罰。それは自業自得とも言えるものだったのだが、イシュタルはそれまでチヤホヤとされ、蝶よ、華よ、と言われていたのが一瞬にして無くなった事に対して、激しいまでの怒りを抱いた。

その怒りは真っ直ぐに祖父を断罪し、生家をとり潰した王家への不満と怒りとなるのにそう時間はかからなかった。

だから、実家を…イシュタルを貶めたアールマティが国から追放されたと聞いた時は狂喜し、また、皇太后を追い出してくれたマルスに感謝し、果ては後宮に入れてくれたアビゲイルに対し、心酔しきっていた。


常に正しいと信じているアビゲイルが言う言葉は、絶対。

自分より尊い王家の人間でありながら、最も自分の事をわかってくれる至高の存在…それがアビゲイルなのである。


逆に、アビゲイル以外の王家に対する嫉妬と怒りは収まっておらず、だからこそこうしてルビーに対して自ら鞭を振るっている。

一振り一振り毎に、積もり積もった鬱憤を込めるように打たれたルビーの腕や脚、背中などのありとあらゆる場所は、今やミミズ腫れを通り越して、血が流れ出してその白い夜着を汚していた。とは言え、その夜着ももう辛うじて、布だったと判断出来るようなものと化しているのだが、誰もそんな事は気にしない。



「こんなゴミに着せる服なんていらないわね。ねえ、脱がしちゃいなさいよ」


「ぃ…いゃ…っ…やめ…て…!!」



抵抗したいが、既に精神的にも肉体的にも限界だったルビーは、形ばかりの抵抗をしたものの、そのまま下男の手によってぼろきれと化した夜着を引きちぎるようにして剥ぎ取られた。そうしてそのまま床に転がされたルビーを、側妃達が取り囲み、上から見下ろすように立った。

顔は傷付けるなとアビゲイルに言われた通り、顔以外を被虐し続けられたルビーの身体は傷や痣、血が至るところから流れているが、それを見てまたしても側妃達は狂ったように笑い合うばかり。



「うふふふっ!!あ~あ、裸になっても全然そそられない、貧相な身体ですこと!!ねぇ、イシュタル様!!こんな汚らわしいゴミの分際で、あの方の…」


「そうですわ!!こんなゴミのくせにあの、ファルコン様に護られていただなんて!!」


「お前のせいでファルコン様と踊れなかったのを忘れてないわっ!!」



後宮に入るまで側妃達もカーンの一貴族令嬢として舞踏会などに招かれていたのだが、そこでヴァシュヌから来たフレデリックに心を奪われていた。

他国の王家親衛隊の正装である黒の隊員服を着た男は、文句無しに王城内の女どもを虜にし、そしてその隣に立つ子供に猛烈な嫉妬を抱かせた。恥を忍んで一曲どうだと誘ってみても、答えはいつも同じ。



「ルビー様の供をしている身ですので」



つれない態度と、その笑顔。女ならず男までも見惚れさせるその笑顔は、圧倒的なまでに完璧で。

そして、誰にも気付かせる事のなかった目の奥にある嘲笑。


全く完璧すぎたその男は、カーンの側妃達の心に大きなものを残していた。



「ねえ、もうこのゴミはヴァシュヌ王家親衛隊も付いてないのよね?」


「その通りですわ。何をしてもいいのですよ。だってここはカーンですもの。ヴァシュヌだなんて、あんな脆弱な国。ファルコン様がいなければ興味も何にもないですわ」


「ふふふっ!!いい事思い付いた!!」


「イシュタル様?如何なさいました?」



突然笑い出したイシュタルに、側妃達が訝しげに顔を見合わせた。



「その下男に純血を奪わせちゃえばいいのよ」



その言葉を発した後、室内は一瞬静寂に包まれた。目を見開いたルビーが息を飲むのを聞いた者はいない。



「……そ…それは…」


「さすがにそれは…」



言いよどんだ側妃達であったが、次の瞬間、誰しもが爆笑し始めた。



「おほほほっ!!それはいい考えですわ!!」


「ふふっ、さすがイシュタル様!!」


「純血じゃない皇女なんて、本当に単なるゴミでしかありませんものね!!」


「もし、純血じゃないのがバレたとしても、誰が私達を罰するのですか?誰もいないでしょう?この女が誘ったって言えばいいんですもの。ね、お前。やってくれるわよね?」



そう指名された下男、実は性的犯罪者で、何人もの女性と幼女に対しての暴行罪で死刑となるべく捕らえられていたのだが、またしてもアールマティの追放により、アビゲイルの手によって牢から出されていた。

にやりと笑った下男は、転がされているルビーをうつ伏せにしようと手をかけた。その瞬間、渾身の力を込めてルビーが男を突き飛ばしたのだが、その抵抗に興を削がれた男が手を振り上げて頬を殴った。



「っち、やっちまった」


「ああ、もう!顔は駄目って言ってたじゃない!」


「まあ、いいんじゃないですこと?どうせ」


「あ、ねえ!どうせだったら後ろの純血も奪っちゃいましょうよ!!」


「それはいい考えね!!」



一人の側妃が、マルスのコレクションの中から見るもおぞましい張り型を取り出した。それを見たルビーは、なんとかして逃げようとして這いつくばる様にして人影から逃れようとしたものの、いくらも行かないうちに足首を捕まれた。



「いっ…いやぁっ!!いやあぁぁぁっ!!!!!!!」


「煩いわね!大人しくやられちゃいなさいよ!!」


「いやっ!!だれ、か、誰かぁ!!たす、け…っ!!」


「誰もいないわよ、お馬鹿さん」



四つんばいにされたルビーが必死に逃げようとするものの、男に腰を掴まれ、側妃に拘束されたルビーは絶望のあまり、来ないとわかっているのに、彼の名前を呼ぶしかなかった。

自分を護ってくれるという約束を、あの時、国に置き換えてしまった。

だが、ずっと護って貰いたかったのだ。


誰あろう、彼に。



「フ、フレッドぉぉ!!助けて、フレッドぉぉぉぉ!!!!」



そう叫んだその刹那、ルビーの目の前は漆黒の闇に包まれた。


ごめんなさい。


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