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閑話 嘆きのコラーダ

活動報告より移動しました。それに伴い少し修正。

コラーダ視点です。

「凄いねぇ。皆、一撃で首はねられたんだよ、ねぇティソーン」


「そうだな、コラーダ。気付く前に殺られてるぞ。全く防御創がない。流石としか言いようがないな」


「君たちはフレッドみたいにならないでくれ。あんなのが何人もいたら大変なんだから」


「「ははははっ!」」



ゴロゴロ死体が転がっている中をグレイプニル様と反体制派の一同と城に入っていた僕達は、場にそぐわない位明るく笑っていると、信じられないと言った感じの目線を感じた。

あぁ、パルチザンとか言ったっけ。そんな目で見ないでよ。

て言うか、総隊長がこれで収めてくれたのを誉めてやって欲しいんだけど。あの人を宥めるのがどれだけ大変だったか…僕達親衛隊の苦労を全く知らないんだからさ。せめて、労いの言葉を一言位はかけてもらいたいもんだけどねぇ。


皮肉気に考えていると、ティソーンがピクリと反応した。

おや、どうやら前方に敵っぽいのがいるみたいだね。



「…コラーダ」


「うん、気付いてるよ。申し訳ありません、グレイプニル様、後ろにお下がり下さい」



弟と目で合図して、すぐにグレイプニル様を守るように周りを囲み、剣を鞘から抜いて構えた。どうやら殺気を放っているのは一人みたいだけど、その他にも非戦闘員らしいのが何人かいるみたいだ。


ティソーンと一緒に、息を潜めて気配を絶つ。



あと少し…



そう思っていると、勢いよく前から一閃が降ってきた。キィン!と澄んだ音が鳴り、僕の剣でそれを受け止めると、直後にティソーンがその脇を攻撃するべく自身の剣を突き出した。驚くべき事にそれにもすぐ対応した男は、ティソーンの剣を受け止めた後、後ろに距離をとって下がった。


おっとぉ…なかなかやるじゃん。

思いがけず、強敵と会えて、少しだけ気分が高揚して顔がニヤけてきた。やばいな、職業病かも。



「殿下!!」


「パルチザン?…って事は…」



後方にいたパルチザンが攻撃をしてきた男を知っているようだったので、一度グレイプニル様を仰ぎ見ると、手を振って下がれと命令されたので剣を鞘に収めてグレイプニル様の脇を固める。

目の前にいたのは、一人の若い男と後ろに二人の女性達。どうやら、この若い男が殿下と呼ばれた人らしい。

ん?殿下?



「やあ、シャリヴァー殿。君がここにいるって事は、アールマティ様もいらっしゃるのか?」


「貴方はまさか、グレイプニル殿!?何故ここに!」


「私は妹を迎えに来たうちの親衛隊総隊長を抑える為のお目付役みたいなものだ。それと、アビゲイルの決着を付けるには、君達だけだと駄目なんだよ。私もいないとね」



にこにこと。相変わらず、やる気があるんだかないんだかわからない方だ。少しだけ体の力が抜けるよね。

そしてそのシャリヴァー殿下の後ろを見ると、心なしか青ざめた皇太后と、ここのバカ王のご生母がいらっしゃる。あー、多分このゴロゴロ死んでる衛兵を見ちゃったんだねー。すみませんー、うちの総隊長が。文句は総隊長に言ってくださいね。

って、あれ?総隊長はどこなんだろう。ルビー様もいらっしゃらないし。そう思ったのはグレイプニル様もだったらしい。



「おや?私の妹は…」


「さっきフレデリックも来たわ。ルビーがいないとわかって、辺りを虱潰しに探したの。信じられないでしょうけど、いつの間にか隣の部屋にいなかったのよ。確かに隣の寝室で休ませていたのに…」


「彼が部屋を調べていた。そしたらまさかだが、隠し扉があったんだ。そしてそれが繋がっているのがどこなのかまだ…」


「アビゲイルの部屋に通じているとフレッドは言っておったが。まさか、あの部屋にあんなものがあろうなどとは…妾はおろか、アールマティすらも知らんかった。あそこは王妃の居室故、多分アールマティがいなくなってから作ったのであろうな…」



うわー。なんか面倒くさい事になっちゃったなー。多分、総隊長の機嫌は最高に悪いはず。だからかもしれないけど、総隊長を追いかけてこれから行こうとしてる謁見室に行くに従って、衛兵の殺し方が残虐になってるんだけど。



「コラーダ…これは相当総隊長、怒ってるぞ…」


「うん。嫌だねー…ティソーン」



謁見室に着いたものの、しっかりと鍵が掛かっているらしくビクともしない。話声が聞こえるから、この中に総隊長がいると思うんだけど…。



『はははははっ!!!!!』



…げっ!!!!



「「グ…グレイプニル様…今のはまさか…」」


「うん、フレッド。あー、楽しそうだ」



いや、楽しそうなのは貴方です!!なんでここでニコニコ笑うんですか!!うわー、ここ開けたくない!!本当に開けたくない!!怖すぎる!!

チラリと弟を見ると、あまり表情筋を使わないくせに、こういう時だけは盛大に顰めてるし!わかる、わかるよ。怖いのは僕も同じなんだよ。だけどね、どっちかノックしないと…僕は嫌だけどね!!



「コラーダ、ノックして」



えぇぇぇ!!!僕ぅぅぅ!!??

マジですか、グレイプニル様!!

いやだーーー!!!笑ってるしー!!


…はい、わかりましたよ。後始末するのは任せましたよ。だから、笑いながら睨まないで下さい…。おい、ティソーン。やったー、俺じゃなくて良かったーみたいな顔してんじゃないよ、全く。

仕方なく、親衛隊独特のノックで僕達が来た事を教えると、中から総隊長の声がした。どうやら、この分厚い扉をぶち破って入って来いとの命令らしい。


えーい、こうなりゃ八つ当たりだ!!


総隊長の鬼ぃぃぃぃ!!!!!!


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