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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第四章 TSヒロイン帰郷する
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TSヒロイン・大好きだった君へ……

2018/11/26・27に投稿した『余命』・『ちょっとだけ』を表現誤字を中心に再編集しました。

 皆さん、どうも……良です。

 えっと、何だろ?

 こうやって一人語りするのが数ヶ月ぶりな気がするとか、ちょっと不思議な感覚です。

 ……え?

 気のせいだ?

 そうですか、そうですよね。


 えっと、俺、どうやら大怪我してベッドで寝ていたみたい……

 あ、その経緯は朧気に覚えている。

 すげぇ気色悪い化け物に囲まれて、ボコボコにやられたってのは何となく記憶にある。

 厨二的発想とか言うな。

 ホントの話なんだから。

 ただ、全身どこも痛くない辺り治っているようだ……経緯は分からんけど。

 あとは……そうだね。この世界……名前は知らないけど、異世界転生して、エルフの女になった……って辺りまではしっかり覚えてるんですよ。


 ……だから厨二的発想とか言うなや。


 可哀想な人を蔑むみたいにプークスクス的な笑いするな!

 マジな話なんだから。

 ただ、問題はそのあと……


 えっと、何て言うか……


 ガチャリ。


 やべ!

 人来た! 寝たふりしないと!


「リョウ……」


 俺の手を握る感触。

 うぅ~。


「リョウ、お願いだ……早くキミの声を聞かせてくれ。キミが居ないと、ボクは……お願いだ、もう一度キミの笑い声を聞かせてくれ」


 ギュッと握られた手から伝わる温もり。

 ……うぅ、この少年がどう言うわけか知らないけど、俺の事を大切にしてくれてるのは分かるんだ。

 もっと言うと、だ……

 実は記憶がある。

 って言うか、これは何て言えば良いんだ?

 映画を見た感じと言うか、もっと言うと、他人の視点で見た記憶があると言えば良いのか……

 FPSなゲームをやってると言えば良いのか……

 しかも、だ……


『うん? 俺、これからアル君のモノになるんだと思うと、嬉しいやら怖いやらで、何とも言えない感じになってる』

『ヤンデレなアル君もサイコー!! ハァハァ……ア、アル君……ア、アル君……良い匂いだよ-』

『馴染みたいし、アル君とイチャイチャしたい。てか、むしろイチャイチャしたい。と言うか、今すぐメッチャイチャイチャ所望です! しょもうです!!』


 えっと、他人視点で自分の顔、あ、女になった俺の顔が、メッチャ誰かに甘えながら迫ってるんだ……

 さらに、だ……


『アル君、硬いよ……♥※注1』

『うん? えへへ、アル君、大好き♥※注2』

『はぁはぁ……アル君……俺を早く女の子にして……※注3』


 ※注1 十分にお察し下さい

 ※注2 八字打開(心を広く開けて全てを曝け出す事の意)。曝け出しすぎました……

 ※注3 禁欲はリョウには不可能だった


 ……うぉい!!

 これはどこの痴女だ!!

 こっちに来る前、父さんのパソコンで親に隠れて見たエロ動画みたいな、とんでもなくどエロい事やらかしてはるでー、この痴女(俺の顔)!!


 いやいや、これは夢幻ってやつですよ。


 あり得ぬ。

 あり得ぬのです!

 俺はほら、アレだ、全日本高校男子代表とも言えるような真っ直ぐにへし折れたダンスィのソウルを持つ男ですよ。

 そ、そんな俺ですよ?

 あのエロ同人やあんなエロ同人みたいな、メス堕ちヒロイン枠とは無縁の男ですよ。

 他人のオティンティ~ンに何かしようとするような、そんな事あるわきゃ無いのですよ。


 ええ勿論、だからこれは全部幻だ!


 と、とりあえず、この俺の手を握っているガキンチョが居なくなったら、速攻でどこかに逃亡しようと思っている。

 ……こんなに心配してくれてるのにちょっと悪い気もするけど、だけどすまん!

 全然知らないヤツに、しかも同性でさらに年下にしか見えないヤツに優しくされても正直困る。

 って言うか、意識が戻ってもうすでに半日。

 トイレにも行きたいし、飯も食いたい。

 さっさと逃げ出さないと、正直、十五にもなってやらかしたくないお漏らしとかって事態に陥りそうだ。


 ……TS野郎のお漏らしヒロインとか、そんなニッチなジャンルになる気は無い。

 と言うか、早く男に戻らないと……

 こんな夢を見ている時点で、色々と男の尊厳がマックスでピンチだ。


 と、そんな事を考えていると、


『アルフレッド、水を汲んで来てくれ!』


「はい、先生! すぐに行ってきます! ……リョウ、ごめん。また来るから」


 少年は先生という人に呼ばれて部屋から出て行った。

 ……夢の中で俺と同じ顔したヤツがアル君と呼んでいたけど、アルハンブラでアルフレッドってのが、アイツの本名だったよな、確か。

 って事は、やっぱり今のアイツの事だよな?

 何か俺が夢の中で見ていた(聞いていた?)アル君ってのは、今のアイツとは違うどこかすかした雰囲気の大人びた話し方をする少年だったけど、今の声音というか雰囲気は歳相応と言うかなんと言えば良いのか……

 まるで違うというか……

 しかも、俺の事を良ってちゃんと呼んでる辺り、俺を知っているみたいだし……

 やっぱ俺が一方的に忘れてるだけ?

 俺、ガリみたいに洗脳されてたとか?

 なら、『おれは しょうきに もどった!!』 とか言っちゃうべきなんだろうか?

 だからお前との関係は夢だ幻だ……

 

 何て、言えるような雰囲気じゃ無い、よな。


 ……よし、逃げよう!

 男は黙って勇気ある撤退も時には必要だ。

 そう覚悟を決めたのだが……


「さて……」


 ッ!

 それは突然だった。

 その声が誰かは分かる。

 さっき下からアルフレッド少年を呼んでいた男の声だ。

 問題はいつの間にか部屋に居た事。

 別に俺は武術の達人じゃ無いから気配を察知出来るはずもない。

 だけど、さ……

 異世界に来たのは理解しているし、エルフや化け物も居るんだから、魔術とか使えるヤツは当然居てもおかしくはない。

 ただこの人、纏う空気は明らかに尋常じゃ無い。

 殺気を放っているとかそう言うレベルの話じゃ無くて、根本的にまるで質の違う存在と言うか……

 一体、この人はここに何の用があって……


「今更目を開けるのはばつが悪かろう、そのまま寝たふりを続けよ。私のは独り言と思え」


 おいっ!

 それを口に出したら終わりだろ!!

 って突っ込みたいけど、何故か有無を言わせぬ迫力があった。


「どこまで記憶が整理出来ているかは分からぬが、お前はマインドイーターという怪物に襲われた」


 薄らとだが覚えている。

 ちょっとイカがトラウマになりそうな外見の化け物だった。

 イカ、メッチャ美味しいのにな!


「マインドイーターの忌むべき能力は記憶食いとソウルドレイン。お前のここ数ヶ月の記憶は化け物により食い散らかされ失われた。古き時代にこの地を去った神々の奇跡なら復活も有り得るかも知れないが、今となっては失われたその記憶が自然に戻る事は絶対に無い」


 まるっきり実感が湧かない言葉だった。

 でも、たぶん……あのアルフレッドっていう少年の雰囲気からすると、きっと俺は記憶を失っているんだろう。

 でも、だったら……俺が夢で見ていたこの記憶は一体?


「お前が今目を開けられないのはそこに自分の感情も無いのに、もう一つの記憶があるからだ」


 まさにその通りです。


「ただ、今は記憶を失っていようと、知っていて欲しい事がある」


 聞いて欲しい事?

 この半病人みたいな俺に?

 一体、何を聞かされるんだ。


「マインドイーターに襲われたお前はソウルドレインによりその魂はすでに消滅寸前だった」


 ッ!?


「それをアルフレッドは、自らの寿命のほとんどを明け渡す事でお前を救った」


 え?

 寿命を明け渡す?

 ちょっ待てよっ!

 それって!!


「術の反動と副作用もある。アルフレッドの余命は……おそらく三年もあるまい」


 さんねん?

 三年って本当に、一年の三倍の事か? 聞き間違いじゃ無いのか? それか、この世界が俺の居た世界よりも一年が数十倍とかじゃ……


「だが、お前はそれを気にする必要は無い」


 気にするなって……無理だよ。どうして俺なんかのために。

 それにアイツ、どう見ても俺より年下じゃん……

 年下なのに俺より生きられなくて、しかも、それが俺のせいとか……


「お前の今見ている記憶は、アルフレッドがお前と共に生きた時間だろう。もし、あの不器用なバカ弟子の事をほんの少しでも思ってくれるなら、少しだけ記憶の深淵を覗くが良い。アイツのプライベートの記憶もあるだろうが、お前達の絆もそこには眠っているはずだ」


 俺と、あの少年の絆……


「まぁ、無理にとは言わん。ただ残り三年も生きられんガキを哀れむなら……そう思っただけだ……」


 ぐぬぬ……


 分かったよ!

 分かりましたよっ!!


 煽り耐性ゼロって言われそうだけど見るよ!

 怖いけど、そして人のプライベートな記憶って所はちょっとあれだけど、見るよ……


「ま、安心しろ。記憶は見えてもアルフレッドの感情まで見える訳じゃ無い」


 ぐぬぬっ!

 コイツ、絶対に俺が目を覚ましているの気が付いてやがる!

 しかも俺が何を考えていのるかまで的確に把握してる!!


 ……でも、こっちとら覚悟はとっくに決まっとんじゃい!!

 それが俺にとってどんな結末になったとしても見てやろうじゃねぇか!


 それが、【漢】と書いて【おとこ】と読む、この日野良の侠気じゃい!!


 ……

 …………

 ………………


 目を閉じるだけで、深い、深い夢の中に沈んでいく……


 やがて視界、いや、脳裏に広がっていくその世界は想像だにしないモノだった。


 この視点は間違いなくアルフレッドであり、アルハンブラと呼ばれた少年の視点だと言う事も、もう、十分すぎるほどに理解していた。

 って言うか、さ……

 この世界のファンタジー感も凄すぎるけどさ!


 この視点の俺、アルフレッドにメッチャ甘えすぎだろ-!!

 ※ 一章~三章までの言動を参照。十八歳以上は夏目おとなで検索。あくまで十八歳以上ですよ! 精神年齢とかじゃなく、戸籍的に十八歳以上!


 う~う~><


 記憶なんか欠片も無いのに『アル君』『アル君』甘え声で懐いて、俺がアルフレッドをメチャクチャ好きすぎるのが伝わってきて恥ずかしいんですけど!!

 レイティングX指定な愛情表現とか、目の中がハートになってる姿を客観視とかマジでキッツチィ! 当事者(ひがいしゃ)からの客観視とか、訳わからない視点で自分の奇行の数々を見せられるとか地獄でしか無いわ!

 元男がショタに痴女行為で迫るとか、これもう恥ずか死するレベルである!

 ただ、同時にこの奇行の数々こそ、自分ならやりかねないと言う自覚もあったり無かったりというか、何というか……

 だから、たぶんこれは俺だろうなぁ……って言う、遠回しにだけどそんな残念な自覚はある。


 でもさ、女エルフにTS転生して、ゲロぶちまけるわ、公共交通機関の中でショタに痴女行為(本編とは一切関係ありません)で迫るとか……

 どこに需要あるねん、こんなどエロいTS変態……


 やだ……もう、お婿に行けない。


 そんな、さ……

 奇行の数々をやらかしている俺なのに、心までは読めないけど、不器用なアルフレッドが俺をどんなに大切に思ってくれていたのかとか、そんな思いが凄く伝わってきた。

 あと、そか……

 ソフィーティアがアルフレッドだったのか。

 昔、俺が子供の頃に勝手に女の子だと思い込んで失恋した相手……

 って言うか、ソフィーティアの記憶の中の俺、自分で言うのも何だけどやっぱりバカだなぁ。 そんなバカな俺が勝手に恋して勝手に失恋した子と、十年もの長い時間の後に再会して、なんか思ってたのとは全然違う形でその恋が成就とか……


 だけど、ルー……じゃなくてアルフレッド、お前本当に良いのかよ。こんな女もどきの俺なんかに寿命明け渡してさ……

 子供の頃に親に捨てられて、俺の居た世界であんな凄惨な地獄まで見せられて、辛い思いばかりしたのに、それなのに元男の俺を好きになって、残りの余命が三年以下になるとか……

 誰が見たって、お前の一生踏んだり蹴ったりじゃん。

 何でお前ばかりがそんなに辛い思いしなきゃダメなんだよ……

 神様がもし居るなら、お前は、お前だけは間違いなくそいつを恨んでぶん殴っても良いぐらいじゃん。


 俺なんか選んでさ、本当にそれで、お前は幸せになれるのかよ……




 アルフレッドの記憶を見ながら俺は泣いていた。

 それは、愛情……と言うよりも、同情、って言う気持ちの方が強かったと思う。

 もし、記憶を失う前の俺だったら……

 どんな風にこの記憶を受け止めたんだろうか?


 なぁ、日野良……

 お前だって、こんな見た事も無い世界で酷い目に遭わされて、それでも本当に幸せだったのか?


 ………………はは、とんだ愚問だな。

 乾いた笑いしか出てこない。

 幸せだったから、アルフレッドの記憶の中の俺はこんな風に笑っていたんだよな。


 向こうに居た時の俺は、こんな風に楽しそうに笑えていたんだろうか?


 向こうに居た時の幸せだった毎日に嘘は無い。

 バカなツレ達や、両親や姉貴、いつも優しかったじぃちゃんやばぁちゃん……みんな大好きで、幸せだった。

 でも、俺はアルフレッドと再会してそれとは違う幸せに出会った。


 確かに出会ったんだ。


 だから、さ……

 だから、アルフレッドと上手くいってない時の俺は、こんなにも辛そうで泣きそうな顔してんじゃん……


 ホント、自分でも発狂したくなるぐらい乙女みたいな顔しやがって。

 男になんか戻らなくても良いなんて言い出すとか、俺ってホント大好きだったんだなアルフレッドのこと。


 でも、ごめん。やっぱり何も思い出せない……


 アルフレッドの記憶の中に居るエルフは俺だとは思う。だけど、やっぱり他人の感情みたいに思ってしまう俺が居る……

 もし、俺に拒絶されたら、アルフレッドはどんな顔するんだ?

 ……バカだな、そんなの分かりきってるじゃん。

 あの上手く行ってない時の乙女バカ()の目に映っていたアルフレッドの顔、普段あんなに強気なくせに今にも泣きそうな顔してたじゃん。

 ほんと根っこの所は弱いくせに強がるとか、変なところでソックリだよな俺たち……


 初恋だったソフィーティア。

 忘れてしまった恋人のアルフレッド。


 それが突然イコールだって言われても、正直納得は難しい……

 だけど、自分のせいであんな傷付た顔には二度とさせたく無い。

 

 だからほんのちょっと、ほんのちょっとだけだぞ。

 昔、大好きだったお前(ソフィー)と、もう一度だけ、分かり合うために一緒に過ごしても良いと思ったり、何だったり……


 そんな事を心の奥底で思ったのは、ほんのちょっとだけ何だからな!

お読みいただいている読者様、本当にありがとうございます!


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