83 女王蜂様 御開帳する
仕切り直し!
魔法使いの田中さんが公園に向かって、「メラ」の魔法をかける。
蜂野先生が田中さんのおしりに向かって前のめりになるところを紗季未の視線が一閃。
慌てて蜂野先生、態勢を戻す。そうしてください。そうしないと今日一日が先生の「おさわり」で終わってしまいます。
◇◇◇
さて、魔法使いの田中さんの「メラ」は公園の方向に飛んでいく。見たところ普通の公園だけど……
「あっ」
思わず僕と紗季未は同時に声を出した。
田中さんの「メラ」が地面に刺さる直前に公園全体が白く光り、そこに4匹のスライムが見えたんだ。
続いて、勇者の伊藤と武闘家の鈴木が公園に乗り込んでいく。二人とも武器は「こん棒」だ。まだ、あんまりレベル高くない設定なんだな。でも……
二人とも大張り切りで、「こん棒」を振り上げる。そして、それが一撃を加える瞬間、また公園全体が白く光り、スライムが見えた。
魔法使いの田中さんと僧侶の中村さんが魔法で援護。僕も少しずつ見える時間が長くなってきている。
そして、次の攻撃で勝てると思ったその時、ふと、脇の紗季未を見た。
◇◇◇
「あっ」
紗季未も白く光っている。初めて見た訳じゃないけど、この戦闘に反応してるんだ。
「ああっ」
今度は紗季未が大きな声を出した。なんだよ。びっくりするじゃないか。
「だって、こうちゃん。自分の体を見て」
うわあ。何と僕の体も全体が白く光っている。光は紗季未のそれより強いくらいだ。
「ウオオオオーッ」
前方で雄たけびが上がる。どうやらパーティーがスライムとの戦闘に勝ったらしい。
「おい、新川、北原。見ていてくれたかって、うおっ」
勇者の伊藤の叫び声が上がる。
「伊藤君。これはあたしたちが変身した時の光だよ」
僧侶の中村さんが声をかける。
「そうだね。僕たちの戦闘を見て、刺激を受けたのかな?」
「新川君がまだ変身してなかった方が変なんだよ」
「そうそう。絶対、真っ先にゲームキャラになると誰だって思うよね」
「スマホがあれば、ゲームしてるか、新着ゲームの発売状況をチェックしてたもんな」
あっはっはと和やかに笑うパーティーメンバーたち。バカにされているような気もするが、むげに否定出来ないのもつらい。
「まあ、ゲームキャラに変身するのは決まりとして、何になるのかなあー?」
「美少女魔法使い」
「美少女聖女ちゃん」
「美少女錬金術師」
「美少女遊び人」
わあっはっはと笑うパーティーメンバーたちの中に何故か蜂野先生が自然な形で混ざってるし。
「まあまあ、ここはじっくり協議しましょう。ほいっと」
蜂野先生が蜂の針を一振りすると、傘のついたテーブルと椅子が登場。
「ささ。みんな、椅子にかけてかけて。新川く~ん。ぼうっとしてないで、みなさんにお茶出しして、全くもう、気が利かないわねー」
へ? と思ったけど、いつの間にか後ろに流し台があって、電気ポットとか湯飲みとかお茶ッ葉とか急須とかあるし。仕方ない、お茶入れしよう。
◇◇◇
「えーと。それで今まで出たのを整理すると『美少女魔法使い』『美少女聖女ちゃん』『美少女錬金術師』『美少女遊び人』と。『美少女勇者』とか『美少女戦士』とか『美少女武闘家』はないの?」
蜂野先生、メモを取りつつ質問。
パーティーメンバー大爆笑。
「ないない。ないです」
「ないです。ヘタレですから」
「ありえません」
「なるほど。ヘタレだから、前の4つと『その他』でいいか。じゃあ、新川君が何に変身するか当てる選手権。一口千円ね。変身すると思うものに張った、張った」
先生、それは賭博罪ですよお。




