47 女王蜂様 戦車でラーメン店に乗り込む
よく考えれば…… いや、よく考えなくてもそうなんだけど、何で母親と確執して、母親の旧姓を名乗るの?
父親との確執なら分かるんだけど……
なんてことを蜂野先生も、紗季未も考える訳もなく……
「まあいいわ。とにかくお店行きましょ。ポイントカードの件はそれからねん」
まあ、そうなりますよね。蜂野先生の場合。
◇◇◇
こちらは仮にもM1エイブラムス戦車できゅらきゅらと行くのだから、凄い注目を浴びてもいいところなんだけど、ラーメン店はそれ以上に凄かった。
テーブル席4とカウンター席6人かけだった筈の「乳乳亭」が料亭のようにでかくなっている。
門構えも立派になったけど、そこにどでかい立て看板が二つ。
一つは
「拉麺美食倶楽部」
もう一つは
「料理対決! 『至極』対『最高』 ラーメン編」
門の前には人だかりと言うか、正確にはドラゴンっぽい方とか、つけ耳ではない本物の猫耳やウサ耳が生えている方とかで大盛況。
今か今かと対決を待っている。あ、テレビクルーらしきのもいる。
我々がゆっくりと戦車で門に近づくと、門の真ん中で胸を……と言うか、巨乳を張って、ふんぞり返って、待つ人が一人、男物の和服を着ているが、あれは……
「あんらあ。ラーメン屋の店主の隆子さんじゃな~い。まあ~、建物ごと見事に変身しちゃって~」
しかし、店主の隆子さんは、蜂野先生の呼びかけをスルーし、こう言い放った。
「おのれっ、疲労子っ! 貧乳を、いや、馬脚を現しおったな。何だっ! このラーメンはっ?」
◇◇◇
ウオオオオオーッ
観客から歓声が上がる。
それを聞いた疲労子さん。タンクデサントしていたM1エイブラムス戦車からひらりと飛び降り、店主の隆子さんを指差すと……
「ふんっ! まだ、ラーメンを作っていないのにその言い草は笑わせる。隆山っ! 貴様こそ焦っているのではないかっ?」
ウオオオオオーッ
観客から歓声のボリュームが上がる。
すると、店主の隆子さん、更に巨乳を突き出し、
「何を言うかっ! 疲労子っ! この乳腹隆山っ! 貴様ごとき相手に逃げも隠れもせぬわっ!」
ウオオオオオーッ
観客のボルテージは最高潮。誰かが持ち込んで来た大太鼓を鳴らす。
ドーンドーンドドドンドーン
何なの? このお祭り騒ぎ?
◇◇◇
今までの展開を目を爛々と輝かせて見ていた蜂野先生。ついに飛び出し、店主の隆子さん、いやもとい、乳腹隆山に抱き着く。
「キャーッ! 隆子ちゃーんっ! おもしろ…… いや かぁっこいいっ! 素敵ーっ!」
それをがっちり受け止めた隆山先生。
「はあっはっはっ、めきみちゃん。隆子じゃなくて乳腹隆山。そうか、かっこいいか、わぁっはっは」




