24 女王蜂様 「ツンデレ」ではないと断言される
「『大器』? 『大器晩成』の?」
「まさにその通り。変身ってのはね、その人が持っている器にこうなりたいという願望の水がいっぱいになった時、発動するの。北原さんの『器』にも願望の水は間違いなく入っているのはあたしにも分かる。だけど、『器』が大きくて、いつどういう形で発動するか、さっぱり見えないのね」
「はあ」
あまりにも突然の話に茫然とする紗季未。
そして、僕は別の意味で茫然としていた。
蜂野先生。真面目な話も出来たんだ……
◇◇◇
蜂野先生、にっこり微笑むと
「北原さん。明日からあたしと一緒にお昼食べよ。校長先生は『なゆたん』になって、出て行っちゃったんで、あたしが校長室使うから、お昼になったらおいで」
うわ、校長室乗っ取ったのか~。
「えっ、ええ。でも~」
紗季未はちらちら僕の方を見る。
それを見た蜂野先生。笑顔のままで、
「分かった。分かった。新川君も連れてきていいよ」
「はい。それなら……伺います」
ぺこりと頭を下げる紗季未。
「まあ、新川君は放っといても変身するから、面白くも何ともないし、ツッコミがうざいし、ねちっこいけど、心の広いあたしは許してあげよう」
「ひでぇ。なんつーディスりよう」
◇◇◇
「なによぉ。大体、新川君、恵まれ過ぎよぉ。ヘタレな男子高校生がハーレム状態じゃな~い」
「へ? ハーレム?」
「ええい、そのド近眼でよーく見なさいっ。まず、最初にぃ~、隣の家の幼馴染っ!」
蜂野先生。右手の人差し指で紗季未をビシリと指差す。
赤面する紗季未。
「そして、若くて可愛いお母さんっ!」
次に母さんを指差す。
母さん、両手の握りこぶしを口に持って行き「キャッ」。
やめて~。本気で可愛いから。
「そしてっ! クラスのナイスバディで極上美人の副担任っ!」
先生、胸を張って、仁王立ち。
むうっ、そっ、そうなのか? いやいやいや、騙されるなっ! 僕!
◇◇◇
「ふっ」
僕はあえて冷笑してみせた。
「先生。惜しかったですね。他の奴なら騙されたかもしれませんが、幾多のハーレム系ラノベを読み潰したこの僕には通用しません」
心なしか紗季未の視線が冷たいが、ここはもう後には引けない。
僕は蜂野先生と母さんを指差し、断言した。
「先生、そして、母さん。あなた方二人は断じて『ツンデレ』ではないっ!純粋な男子高校生の心を弄んでいるだけだっ!」
思わず顔を見合わせる蜂野先生と母さん。
「まあ、こうちゃん。すっかり大人になって、お母さん、嬉しいわ」
「ふっ、思ったよりやるわね。新川君、でも、この攻撃に耐えられるかしら?」
蜂野先生、蜂の針を一振り。




