19 女王蜂様 ボケは二回までと制限をつける
「はいはいはいはい。お待たせしてまーす。後半、行ってみようーっ」
大きく蜂の針を振り、ナレーションを再開する蜂野先生。
「日葵ちゃんが十歳、小学四年生になったある日、いつものとおり徳造さんは日葵ちゃんに声をかけます」
「日葵ちゃん。そろそろ『リティー』の時間だよ」
「あたし、『リティー』嫌い」
ここでディスプレイに大ショックを受ける徳造さんの顔のアップ!
♪ちゃらら~ ちゃららららんら~
BGMはJ・S・バッハ作曲「トッカータとフーガ ニ短調」
ご存じない方は、かの嘉門達夫先生の替え歌の傑作「鼻から牛乳」の元曲ですので、そっちを思い浮かべてください。
ディスプレイよく見ると、徳造さんの右の鼻の穴から白いものが出てるし。
こういうところ凝るんだよね、蜂野先生。
「だってさ~。クラスの子みんな言ってるよ~。『リティー』はちっちゃい子の見る番組だって。みんな、『のぼり坂 くだり坂 ま坂46』の方、見てるよ」
「あいにく、日葵ちゃんの言葉の続きは徳造さんの耳には全く入っていません。あ、何か言っているようです。聞いてみましょう」
「わが孫が リティー嫌いと 言ったけど わしは愛する メガ猫ね~さん 徳造心の短歌」
せんべいをかじりながら涙する「ジ・エンカーズ」の面々。
「徳造さんを襲った悲劇ってこれだったのねぇ~」
「徳造さんっ。かわいそう」
「うちも『こうちゃん』があたしと遊んでくれなくなっちゃってさぁ~」
「うんとかわいがってやったのに、孫なんて冷たいもんよねぇ~」
げっ、こっちに飛び火した。
◇◇◇
「真っ白に燃え尽きて灰になった徳造さんを尻目に、日葵ちゃんは別室のテレビで『のぼり坂 くだり坂 ま坂46』に夢中です。そんな徳造さんの前に『救世主』が現れます」
徳造さんの目の前に突如全面にすりガラスの入ったパーテーションが出現。
すりガラスの向こう側に黒い影って、あれ、蜂野先生じゃん。自分で自分を「救世主」って。
蜂野先生、徳造さんに向かって一言。
「あたしは蜂だ」
「きゅう、じゅう」
「あたしは蜂だ」
「渋谷駅前。う~わんわん」
「あたしは蜂だ。あ、ボケは二回までね」
「その蜂が、ハートブレイクなこのわしに何の用じゃあ~」
ナイスリアクションとばかりに、すりガラスの向こうの蜂野先生、右手の親指を立てる。
「あたしは蜂だ。ハートブレイクなおまえを救いに来た。但し、そのためには『ある仕事』をやってもらいたい」
「救い? 救いとは何じゃ?」
「おまえを『メガ猫ね~さん』にしてやろう」




