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吸血鬼さんのおもてなし ~ 旅と歴史とダンジョンと  作者: ミュスター観光騎士団
最大の古城グラープ城の隠しダンジョン
62/103

62. 岩のゴーレム

 5mほどの高さを持つゴーレムは地響きを立てながら、こちらに向かってきた。

 防具が何もない中で攻撃をまともに喰らえば即死する。


「散開しよう!」


 リーズ様の合図で、私たちは三方に分散した。

 ゴーレムは頭を振り、誰を狙うか吟味しているような動きを見せる。


「今です!」


 私はゴーレムの足元に潜り込み、杵を振るった。

 メキっと木が折れる音が響き、杵は柄から折れた。


「全然効いてない!」


 私は折れた杵を捨てると、すぐにゴーレムから離れた。

 ゴーレムは腕を伸ばして私を掴もうとする。


 私はすんでのところで蝙蝠へと変化。

 散り散りになって飛び、ゴーレムの拳を避けた。


「【LAGLUSSラグラス】!」


 ロシルの魔本から数多の氷柱が垂直に発射される。

 氷柱は次々にゴーレムの岩肌に当たり、そして砕けた。


 駄目だ。

 ゴーレムを倒すには(コア)を狙わなければ。


「リーズ様! 私がゴーレムを引きつけます! その間に奴の(コア)を破壊してください! ロシルさんも協力を!」


「しかし、武器はフルーレ一本しかない!」


 リーズ様が受け取ったフルーレには魔法が掛かっている。

 心を研ぎ澄ませば、それは岩をも貫く。はず。


「リーズ様、焦らないで! 隙を見て、攻撃してください!」


 (コア)はきっと背に近い部分にあるはずだ。

 なんとしても隙をつくらなければならない。


 私はゴーレムの前に立ち塞がった。


「さあ、こっちですよ! うすのろ!」


 ゴーレムは私のほうへと向き直り、腕を振り上げた。

 十分に引きつけ、動きを止める。


「【LOBKANDロブカンド】!」


 ロシルの魔本から放射された波動が私の身体を包み込む。

 腕が振り下ろされた瞬間、私の身体は鋼鉄のように硬化し、ゴーレムの拳を受け止めた。


 ゴーレムの豪腕によって私の足は地面にめり込んだが、しかし傷一つついていない。


「今だ!」


 ゴーレムの背に向かってリーズ様はフルーレを突き出した。

 その一撃はゴーレムの身体を砕き、一直線に(コア)へと達した。


 ゴーレムの目から光が消え、動きが止まる。

 そして、糸の切れた人形のように、ゴーレムを形作っていた岩は地面に落下して分離した。


「倒せた……」


 緊張が解けたのか、リーズ様は岩の傍で座り込み、ロシルは咳き込みながらしゃがみ込んだ。

 強敵を倒して、100年ぶりにレベルが上がったかも知れない。


「遺体の反応があったのは、この近くよ……」


 ロシルはゴーレムの脇に続く獣道を指差した。


「よし、行こう」


 警戒しながらも、私たちは獣道を進んだ。

 少し進んだところで、再び気配があった。


「まさか、誰かいるのか」


「死体を漁っているのかもね……」


「くそっ!」


「待ってください、リーズ様!」


 リーズ様は気配のするほうへと走った。

 私たちも後を追う。


 そこにあったのは確かに死体だった。

 しかし、エメットではない。


「エメット……?」


「皆さん……! 無事だったんですか」


 死体の傍らにいたのはトラベルライターのシオバラだった。


「あ、リーズさんにルビーさん。良かったー。こんな森の中でどうしようか迷ってたんですよ」


 さらに死体の影からエメットが顔を出す。

 相変わらず元気そうだった。


「死んだはずでは」


「生きてますよ。それより、この人、どうにかしてくださいよ」


 エメットが指差した死体はよれよれのジャケットの中年男。

 イセザキだった。

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