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吸血鬼さんのおもてなし ~ 旅と歴史とダンジョンと  作者: ミュスター観光騎士団
主教の丘ビショップベルク教会のダンジョン
100/103

100. 手掛かり

 ヨルゲンの日記には重大な事実がいくつも綴られている。

 その中で最大の衝撃は、伝説の魔王が私の館にあるダンジョンにいるということだ。


 君主(アークデーモン)の寿命と飢餓耐性は、他の魔族とは比べ物にならない。

 未だダンジョンの中で生きている可能性は十分にある。


「でも、どうすればいいんじゃろう?」


「そりゃ当然、探しに行きましょうよ。あたしたちが魔王の発見者になるんです! 歴史が変わりますよ!」


 エメットが好奇に満ちた眼差しを輝かせる。

 魔王を発見したとなれば、私たちは歴史の教科書を書き換えることになるだろう。


「だが、気が早すぎないか。ダンジョンが本当にあるのかも確認していないのに」


 それでもリーズ様はあくまでも冷静だった。

 確かに、順を追って少しずつ事実を確認するべきだろう。


 ヨルゲンが研究を引き継がせたという者も気になる。

 ノアクという名前の何者かが、ダンジョンを護っているというのだ。


 魔王のために造られた聖域。

 私たちの手に負えるものだろうか。


「仮に魔王を見つけたとして、どうするのじゃ? きっと、転生できると思っておるのではないか?」


「それなら、ノアクって方を見つけて聞き出せばいいんですよ。ミュスターに住んでるって書いてあるじゃないですか。ヨルゲンから研究を引き継いでから45年くらい経ってるんですから、転生の秘法だって完成してますよ」


 しかし、そこまで言ってエメットは気付いたようだった。

 転生の秘法が完成しているなら、私は今の状態で起きていない。


 つまり、ノアクは私が起き上がる日まで、転生の秘法を完成させられなかったのだ。

 だとすれば、ノアクはミュスターから去ったのかも知れない。


 いずれにしても、ノアクを探し、事実を確かめるのが良さそうだった。

 その時、リーズ様のスマホが鳴った。


「……イセザキとシオバラからだ。取材した時の記事がガイド本になったそうだ。ミュスターまで献本しに来ると言っている」


「皆の友人とあらば、わらわもその人間たちに会ってみたいのう」


「こんちゃんにも2人を紹介しましょう」


「それじゃ、ついでにイセザキさんとシオバラさんにも手伝ってもらって、ノアクを探しましょうよ。きっと、お二人も魔王について気になるはずです!」


 エメットの頭は既に魔王に支配されてしまっている。

 気になるのは分かるが、赤の他人まで捜索に駆り出すというのは如何なものだろう。


 とはいえ、彼らもトラベルライターなのだから、ダンジョンの存在に興味を示すだろうことは予想できる。

 利用するようで悪いが、誘ってみても良いだろう。


 かくして、私たちは新たな事実とともにミュスターに帰ることになったのだった。

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