134 つかのまご褒美
男たち二人に挟まれながらの雑談が、くだらない話に発展する程になって暫く。
手洗い戻りのついでにカウンター席から離れたテーブル席を通りがかると、ミレイとフィーブルが他の隊員たちに囲まれながらお喋りに花を咲かせているのが目にはいった。
(何というか、こうして見ると銀蜂隊って意外と華やかなんだよな……)
ジンガを筆頭に良くも悪くもかなりの個性派揃いなせいで見落としかけていたが、改めて隊員たち全体を見回してみると二十代前後の若者が多かった。
がさつで肉体派な隊長が率いているわりに女性の比率もそこそこ高い気がする。
最年少で今のところ一番新人だというミレイによれば、部隊の設立直後からジンガと付き合いのある最古参のカナンや和ませ役のフィーブルを含め、これだけ騎士の肩書きを持つ女性が多くいる隊は他にはないという。
大抵、騎士を志して騎士学校へ通うのは武力に自信のある男子だというし、そんな彼らも卒業後は金鷹隊へ新卒配属になる。
そう考えると若い女性隊員が多いというのはちょっと不思議だ。
銀蜂隊はそれほど彼女たちが信頼を置いておける良い環境ということなのだろうか。
口を開けば小学生並みの下ネタばかり言っているセクハラ気質な隊長殿と、部下を躊躇なく消し炭にする何を考えているかよくわからない顔の良い副隊長に、その秘訣が何なのか是非とも聞いてみたい。
魔法学校の生徒らに持ち帰れるようなマイルドな話になるといいのだけれど。
「おっ。あんたが噂の! うちの隊長を負かして、副隊長従わせて竜を消した? っていう? どんな物騒な人かと思ってたけど、案外普通なんだねぇ~」
「ホントね。隊長たちより背格好も全然小さいじゃない。かわいいわねぇ。こっちにいらっしゃいよ」
不意に掛かった声に振り向くと、二人の対照的な印象の女性隊員が俺を見てそれぞれで感想を述べてきた。
手招かれるままに彼女たちの側へ行くと、先に声を掛けてきた強気そうな方が俺の腕をぐいと掴んできて二人の間に座らせられる。
男同士で駄弁っていたときには何も感じなかったけれど、女性に両側から挟まれると正直緊張してしまう。
近付けられた顔から漂ってくる甘い香りはシャンプーの匂いだろうか。
それとも飲んでいるフルーツカクテルのものだろうか。
お酒が回っていて無防備になっているのか、もとから無遠慮な性格なのか、とにかく二人とも積極的でかなり距離が近い。
近すぎて腕に胸が当たっているし、俺が黙っているのをいいことに足まで絡めてくる始末だ。
(おいおい。ここはそういうお店じゃないぞ。そういうお店じゃないんだぞ……!)
理性的な俺の対応には俺も賛成してくれているよな。と、一人でわけがわからなくなりながら繰り返し自分に言い聞かせて生唾を飲み込む。
当たっている胸が柔らかくて温かい。
着崩し方が大胆すぎるせいで胸元のほくろまで見えてしまっているし、下着も角度によっては丸出しだ。
(頑張ったご褒美だと思えばまぁ、悪い気はしないけどさ……でも、な? 駄目だろ?!)
ちょっといい気分になりそうな自分に言い聞かせて顔を背ける。
しかし、待った、待っただ。




