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ロストスペル  作者: 海老飛りいと(えびトースト)
第4章.機械都市
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121 女子の間にはさまる男子ってわけですか

文句の一つ二つ、浮かびさえすれば三十個くらい言いたい。永遠に。

出てくるだけ無限にだって言っちゃえるなら言っちゃいたい。

そう思いながらも他にあてのない私は、不思議な電子地図に従って機械都市内に設置された騎士団支部へとやってきていた。


電子地図(ネオマップ)とやらは到着したら電池が切れる仕組みになってたっぽくて、目的地につくなり画面が消えてしまった。

そんでもってその機械がそのまま証明書みたいな役割も持ってるらしく。

門番をしていた騎士に真っ暗になった画面を見せるとすぐに支部の中へ案内してくれた。


「なんていうか。ちょ~展開過ぎるし、しょーじき王国騎士団(バテンカイトス)って私あんまりいい印象ないんだけど……」


「むっぴゅ!」


「ほんと。むっぴゅ、だよね」


白地に金の装飾がついた軍服のような格好の騎士、金鷹(ギース)隊の隊員に案内されて部屋で廊下で待たされる私、プラス私に合わせまねっこしてケースの中で、ぶー。とむくれているメナちゃん。イコール不機嫌な私たち。


せめてね。せめて待たせるなら椅子くらい用意して欲しかったな。

機械都市の建物特有の無機質な壁にもたれ掛かって待ってるけど、保護するレディに対する仕打ちですかこれ。

リメロも手を回してくれるなら待遇をもうちょい良くしてくれたってよかったのに。


「どうぞ。こちらへ」


「はいはーい」


沸きまくりの文句を抑え、ついて歩いていってあげる。

暫くしてから通されたお部屋には、すでに私以外のお客さんが先にいて。

自動ドアをくぐったところでちょっと立ち止まった。


(あれ? えっと……? あの子たしか……)


部屋の中で一人、いまひとつくつろげていなさそうな先客には見覚えがある。

桃色の髪を腰まで伸ばした、お人形のように整った綺麗な外見の女の子。

ほっそりしていて少しだけ大人びていて、背は小さくて。おっぱいは私よりドッカンと大きい。

特徴的で一度見たら忘れられない彼女は、


「リュワレちゃん!」


「ど、どなたさまでしょうか……その……何処かでお会いしましたか?」


そう。リュワレだ。彼女は私を知らないけれど、私はこの子をしっている。

私とマグ先生は機械都市の入り口で彼女の映像に挨拶をされていた。例のあの女の子だった。

私が一方的に知っているだけなので当然の反応かも。ものすごく不審がられている気がする。

テレビ番組に出ている芸能人の控え室に潜入したファンのような気持ちで、つい彼女に握手を求めちゃった。

彼女は目をぱちくりさせて驚いて固まっている。


困惑していて私の手はとってくれなかった。

いかにもお嬢様といった感じの気品があるリュワレをまじまじと見てしまう。

頭のてっぺんから爪先まで。

座って存在しているだけでも育ちの良さが伝わってくるから、自分との差を感じて何だかくらくらしてしまいそう。


「なぁるほどねぇ」


「?」


これが洗練された異世界のご令嬢というものなのね。

まるで絵の中に描かれた架空の人物が想像のまま現れたみたい。

お友達になれたらいいなぁ。と、そんな状況じゃあない雰囲気なのは重々承知なのだけれどつい思ってしまう。

自分の前向きで良いところ。悪くいったら無神経かもだけど。


「いいえ。はじめまして、ですよ。私、ユーレカっていいます。リュワレちゃんのことは機械都市に入ってくるときにホログラムで見てたんです」


「そう……ですか。わたくしはリュワレ・オーミットと申します」


「うん。よろしくね」


にっこり笑って答える私に対してリュワレはかなり緊張しているんだけれど礼儀の正しさで上手く隠してる。

そんなに警戒しなくたっていいのに、私の笑顔がわざとらしかったのだろうか。

会えたのが嬉しくてにやにやしちゃってたから怪しいやつって印象与えちゃったのかも。


ホログラムで見たときから可愛いらしかったけれど、本物は奥行きをフル活用し、愛らしさを全方位の全角度でぬかりなく表している。

見れば見るほど美人さんでとにかくかわいい。

かわいいのだけれど、気分がどうにも浮かないご様子で表情がくもりっぱなしなのがやっぱり気になる。


「ところで、リュワレちゃんがなんでここにいるの?」


「…………。ええと、その……それはですね……」


「俺が連れてきちゃったんだよ」


戸惑っている顔もかわいいから見てて飽きないけど、ひとまずは話題づくり。

素朴な疑問から投げ掛けてみて曇った表情の理由を探っていこう。

聞いてみるとリュワレはますます困った顔をしてしまい、彼女の代わりに別の人が私に答えた。


「マグ先生!」


「元気そうでよかった。置いていってごめんな、ユーレカ」


これまた現れたのは見知った人物。

案内してくれた騎士と行き違いに自動ドアを開けて入ってきたのはマグ先生だった。

意気投合して一緒に機械都市に来たのに彼が私を置いてミラと去っていったのを思い出し、リュワレに出会ったお陰で下がっていた怒りのボルテージがギュルンと一気に上がってしまった。


「ごめんで済んだら警察(サツ)も騎士もいらないですよ! ゆるさないです! バーカ!」


「むっぴゅい!」


先攻とって謝ったって赦すもんですか。

私は歩き寄ってきたマグ先生に飛び付いて悪態をついた。言いたいことはたくさんあるけど、まずは体で表現してやる。タックルかましてやる。

そーら。メナちゃんも怒ってるぞ。毛を逆立ててびりびりでむっかむかだぞ。


「連れてきちゃったって、私を置いて美女と去っといてこんなかわいい()に何をしてたんです?」


「誤解だよ、ユーレカ。俺は弾みでつい……」


「はずみってなんですか? つい、なんです?」


ぐい。と、間を開けずに迫ると、マグ先生は肩をすくめて経緯(いきさつ)を話し始めた。

私とメナちゃんに放置プレイをかました言い分、しっかり聞いてやろうじゃあないの。


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