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ロストスペル  作者: 海老飛りいと(えびトースト)
第4章.機械都市
121/140

120 無口な防護服改め、リメロとわたし

***




「待って待って、待ってってば~~! 大体どうしてリメロさんがこんなところにっ、い、いるんですっ、かぁ~?!」


「それはこっちの台詞よ、ユーレカ! エルトは貴女が機械都市に居ることを知っているの?!」


「知らないと思います! 言ってないんで! ってゆーか私、エルトとは絶交したので!」


「ぴゃっぴょーん! んぴょぴ!」


「絶交? なんでまたそんな、面倒なことを……」


──超ド級爆裂にびっくりした。

まさか機械都市でリメロと再会するだなんて全然思ってなかったから。


あっ、私はユーレカ。正しくは早乙女百合花(さおとめゆりか)

漢字六文字の本名、ちょっと長いんでユーレカでって呼んどいてください。この世界ではそういうことにしてるので。

私にフォーカスが当たる度に自己紹介するのもあれなので、ここで覚えてもらえるとうれしいです……なんて誰に言ってるんだか。


今私の手をぐいぐい引っ張って何処かへ連れていこうとしている、猫耳お姉さんはリメロ・キャスパルさん。

お医者さんだけど銀髪に黄緑のインナーカラーを入れていて、肌も日サロに通ってるみたいに黒い。

なかなかセクシーな女医さんで、港街(ファレル)の郊外で産婦人科だか小児科をしているんだけど、訳あって私とは知り合い。


私とリメロの間で話題になっているエルトって人物は……ううむ、人物と呼んでいいのかどうか。

ちょっと判断に困るところではあるけれど、面倒だから今は人物でもいいかな。

簡単に言えば異世界に落ちてきた私を受け止めた人で、一番最初に出会った私の保護者的存在。


エルトは私のことを彼の大切な人と重ねて見ていて、最初は親切丁寧に扱ってくれていたのだけれど、そのうちとんでもなく過保護になってきて私の面倒を見たがったし、外出から何からすぐに制約をつけてきた。

お金にもご飯にも困らなくていつでも自由に着替えられるし、好きな時にシャワーも浴び放題だし、異世界初めましてにしては充分すぎるほど良い暮らしをさせてもらってはいたと思う。

けれど、私は彼と一緒にいることが次第に堪えられなくなってしまい、メナちゃんと一緒に逃げ出してきた。


それがついぞや数日前のお話である。


魔法学校の敷地に逃げ込んだところで出会ったマグ先生が幸い(?)なことに私と同じ日本からやってきて、見知らぬ人間の体を与えられて過ごしているという自分とそっくりな境遇で。

私たちはお互いを放っておけず、意気投合。

この世界やマグ先生の中にいる彼が誰なのかなんていう謎を解いて本来のお家に帰るため協力関係となった。


機械都市にやってきたのもマグ先生のことを知る活動の始めの一歩として、のはずだった。

それが現在、私は機械都市の研究者・ミラさんによって肝心のマグ先生と別行動にされてしまい、肝心なところで置いてきぼりを食らって。

だんまり防護服のシアンさんという方と二人で待機していたそんなとき。


「とにかく今は一緒に来て。万が一貴女に何かあったらエルトが舌噛んで死ぬわよ」


あいつベロたくさん生えてる気がしたから一本くらい噛んだって死にそうにないけどなあ。

と、あんまり思い出したくないエルトのどっかしらの造形を浮かべながらリメロに腕をぐいぐい引っ張られ、通ってきた道を戻っている私と、スーパーキャリーケースの中でわけもわからず揺れているメナちゃん。


ぶっちゃけちゃうと、展開的にわけがわからないのは私もなのだけれど。

とにかく、私と待機するように命じられていたシアンさんの正体は知り合いのリメロだったわけ。

で、今は彼女に急かされるまま廊下を走っているといった状況。


「どこ行くんですかリメロさん~~! マグ先生を残したまま私だけ離れるなんて出来ませんよ~!」


「安心なさい。その件ならもう連携してあるわ。今は貴女の安全確保が第一よ」


「安全って、別に危険なことなんて何も……」


「いいから黙ってついて来て」


有無を言わせずに引っ張る手を強めるリメロ。

その後、彼女が着ていた防護服を渡されとある小部屋の隅っこで私はそれに着替えさせられた。


見た目通りのスカートの上からでも全身を覆えるゆったりした真っ白ローブだ。

フードで顔を隠してきゅっと襟元を締め、手袋も靴も全部付けるとマシュマロのおばけになったみたいな気分。

掃除機みたいな機械背負って街を駆けまわる、懐かしの映画の最後に出てくるやつね。

内側に入れられるくらいの余裕があったのでメナちゃんケースも肩から提げたまま覆い隠せた。


「道程はこの端末に記録されてるわ。貴女はしばらく金鷹隊ギースのコーデュロイ隊長に匿ってもらってなさい。全部済んだら迎えに行ってあげるからおとなしくしていて頂戴ね」


「な、なにこれ? スマホ? 異世界にスマホ? あるの?」


「スマホってなに? これは電子地図(ネオマップ)よ。目的地に着いたら破棄して」


普段通りの白衣姿に戻ったリメロは長い黒猫尻尾を不機嫌に曲げ、そう言って板状の謎機械を私に預けた。

スマホとちょっと似ているけれど地図だけが大きく表示されている。

リメロの口振りからしてスマホとは呼んでいないらしい。







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